日曜の俺の予定というのはウルトラマンショーを観に行くこと。 俺にはいろいろなフェチがあり、百合子にも明かしていないのが着ぐるみフェチである。 アミューズメントパークでは不定期に開催されるウルトラマンショーの後、握手会ではなくウルトラマンと怪獣がパーク内を練り歩き、子供たちを中心に触れ合う事ができるのだ。 着ぐるみフェチの俺は中でも怪獣の着ぐるみに強くフェチを感じる。 何故かというと、怪獣には女性が入っている事が多いから。 ウルトラマンの着ぐるみは体のラインが出る上、身長を誤魔化すことが難しいので高確率で男性が演じているのだが怪獣は体のラインも分からなくなる上、装飾が多く身長が低くても誤魔化しがきく。 それにアクションになると蹴られたり殴られたりしても分厚い着ぐるみに体が守られ、投げられるのも体重の重い男性より、体重の軽い女性の方が投げやすく派手さが出るという事でも理に適っているのだろう。 女性が怪獣に入っているか見分ける方法としては、腕の位置や足の長さで俺は判断している。 怪獣の着ぐるみ自体は大きいのだが、そんな独自の時点で怪獣を見ていると、司会の女性よりも小さいだろうと思う女性も少なくない。 そんな女性が入った怪獣がウルトラマンの飛び蹴りを喰らうと、勢いよく吹っ飛ばされている。 それを見ると心配になったりする反面、俺は凄く興奮しながらそれを見ている自分もいる。 今日のウルトラマンショーでも見ている限り、怪獣レッドキング、エレキング、それにガルベロスの全部に女性が入っている事は俺には分かっている。 その中でも動きなどからガルベロスには確実に女性が入っていると睨んでいる。 ショーのオープンニングでもウルトラマンの飛び蹴りを喰らいかなり吹っ飛ばされていたし、ウルトラマンに軽々と投げ飛ばされていたので間違いないだろう。 ショーの後、ウルトラマンたちも怪獣たちも少し休憩でも取っているのだろう。 ショーが終わりしばらくするとパーク内を練り歩きながら、ウルトラマンたちとの触れ合いが始まった。 子供たちはカッコいいヒーローのウルトラマンの周りに殺到する。 その後ろを怪獣たちがついていくのだが、メジャーなウルトラ怪獣であるレッドキングやエレキングは人気はあるが、ガルベロスだけはイマイチだった。 俺はそんなガルベロスの後ろをついていく。 “子供たちがガルベロスを攻撃して、倒されたりしたら助けて中の女性の声を聞けたらいいのに” そんな事を考えながら俺はガルベロスの後をついて歩いていた。 ガルベロスを見ていると中の人の足よりも遥かに大きな足で5歩歩いては少し休みを繰り返していた。 それが次第に3歩になり、大きく肩を揺らして呼吸を始めた。 そんなガルベロスを見ていると膝は曲がって中腰になり、膝の関節位置からも中の人は踵を上げて歩いているようだった。 俺はガルベロスの背中ばかりを見ていて気づいていなかったのだが、気づけばウルトラマンたちもレッドキング、エレキング、それにアテンドスタッフもかなり先を歩いていた。 そんな他のウルトラマンたちについて行こうと頑張っていたガルベロスだったが、ついに足が止まった。 膝に凶悪な長い爪の付いた手を置いて、体を大きく揺らしながら呼吸をしている。 取り残されているのは俺とガルベロスだけになっていた。 それでも少し休憩すると歩き出したガルベロスだが足下を見てみると、足を引き摺るようにして歩いていた。 ショーのオープンニングで蹴り飛ばされた際、捻挫でもしたのだろうか。 いくら分厚い怪獣の着ぐるみを着ていても足を捻挫する事はあるだろう。 そう考え思い返すと、確かにウルトラマンとの戦闘シーンでもガルベロスだけは動きが悪かったし、投げ飛ばされた後立ち上がるのに時間が掛かっていたように思えてきた。 そんな事を考えている俺の目の前のガルベロスの歩みが完全に止まってしまった。 俺は思わず声を掛けた。 「大丈夫ですか?足を怪我してるんじゃないですか?」 ガルベロスからの返答はすぐにはなかったが、しばらくすると小さくかなりくぐもった声で返答があった。 「足を捻挫したみたいで」 その声は小声でくぐもっていたが、紛れもなく女性の声だった。 当然、怪獣なので大ぴらには話せない。 だが、このガルベロスは凶悪なキバの付いた口が突き出たのが特徴的な怪獣で、その口の中に覗き穴があると俺は睨んでいた。 そこでガルベロスの口の中を覗き込んで、俺も小声で話し掛ける。 「少し休憩した方が良くないですか?あまり無理すると歩けなくなりますよ!」 俺が覗き込んで話し掛けてきたのに驚いたのか、ガルベロスの動きが完全に固まってしまった。 やはり、覗き穴は口の中だと確信した。 ショーでも凶悪なキバの付いた口から見える範囲の攻撃に合わせて倒れたりしていたが、見えない範囲、特に後ろや横からの攻撃に対しては受け身も取れずに倒されていたから。 俺が無理をしないようにアドバイスしたのが効いたのか、周りを見渡したガルベロスは凶悪な長い爪の付いた腕である方向を指し示した。 そこには上手くカモフラジュされたパーク内にあるスタッフ用の退避小屋があった。 ガルベロスに肩を貸しながら移動した。 入口にはダイヤル式南京錠があり、番号はガルベロスに教えてもらって開ける事ができた。 中は広いとはいえないが、着ぐるみとスタッフ1人が収まるだけには十分なスペースはあった。 その小屋の中へとガルベロスを先に入れてから俺も小屋へ入った。 小屋の中には椅子があり、そこへガルベロスを座らせた。 「足の痛みがマシになるまでここで休んでもらっている間に俺、スタッフ呼んできますから」 そう言って小屋を出ようとすると、ガルベロスは突然俺に抱きついてきた。 「もう少し一緒にいて下さい」 小声だったが心細そうに女性にそう言われては突き放す事はできない。 むしろ、ガルベロスと一緒にいたいと思うのが俺の本音だった. ショーで見ていた時は凶暴で怖いイメージすらあったガルベロスが今は小さく可愛くすら見えてくる。 現に俺よりもかなり小さかった。 ただ、狭い小屋でガルベロスと2人でじっとしているのにも間がもたなくなってきたので、俺はショーでの事を尋ねることにした。 「もし良かったらでいいですが教えて下さい、このガルベロスの着ぐるみって操演難しいですか?」 すぐに答えは返って来なかったが、ワンテンポズレて答えが返ってきた。 「視界がこの口の中からになるので、周りが見えづらいので大変です、着ぐるみ自体は大きくないので動きやすいのですが… 」 ガルベロスの中の女性は話していい事とダメな事を選びながら話しているようだった。 そして、話が上手ではない俺はそれだけですぐに詰まってしまい沈黙してしまった。 妙な間が空気を重くする。 俺は思い切ってお願いしてみた。 「あのー、着ぐるみ触ってもいいですか?」 「あっ、はい、着ぐるみは分厚いので遠慮なくどこを触ってもらって大丈夫です」 少しだけではあるがガルベロスの中の女性が俺との距離を詰めてくれたのか、話してくれるようになっていた。 言葉通り遠慮なく触らせてもらいながら尋ねる。 「この腕の部分はどこまで手が入っているんですか?」 俺がそう聞くと、凶暴な爪の根元辺りをもう片方の爪で指し示して話す。 「ここまでです、ここからは私の手」 そこに触れてみると確かに着ぐるみ越しであるが彼女のいう部分から先は硬く、彼女の手の部分は柔らかかった。 触った際、彼女が俺の手を握ろうとしているような気がした。 次にガルベロスの脚を触っていると彼女がまた説明をしてくれた。 「この着ぐるみって足が伸ばせないんですよ、いつも少し腰を落としたような体勢でキツいんです、それにつま先立ちになるので捻挫しやすくて」 そう言って凶悪な長い爪で頭を掻くような仕草をした。 「へぇ、大変ですね、ところで着ぐるみの中は暑くないですか?」 俺は遠回しにしていた本題に触れた。 上手くいけば中の女性の顔が拝めるかも知れないと思っていたのだが、彼女の反応は俺の期待したものではなかった。 「大丈夫です、冬場は比較的暑くならないので、それに休憩したので全然大丈夫ですよ!」 まあ、そんなに上手くいくとは思っていない。 むしろ会話ができてガルベロスの中の人が女性だと分かっただけでもヨシとするべきなのだが、もう先にも後にもこんな機会はないと思うと何としても中の女性の顔を見てみたくなった。 つづく