いつものように私は漁船の網で捕獲されたような姿のまま、別の漁港で降ろされた。 降ろされる頃にはかなり脱水されているので自力で歩けるまでになっている。 とてもじゃないが海女漁の後、漁船に上がることはもちろん立つこともできない。 だから、こうして網で捕獲されたまま運ばれると水が抜けるので動けるようになるのだ。 水揚げされた【アマリンちゃん】から網が取り除かれると休憩まであと少し。 張り詰めていた緊張感も緩む。 美羽と美波ちゃんに【アマリンちゃん】の水中メガネや腰に巻いたウエイトを外してもらうとより動きやすくなった。 それでも足がおぼつかないので男性スタッフに支えられながら集会所横に設置された【アマリンちゃん】用の特設のテントへと入っていく。 流石にビチャビチャのまま、建物に入るわけにはいかないので特設テントが設置されることになったのだ。 美羽と美波ちゃん加え男性スタッフにも手伝ってもらいながら【アマリンちゃん】のウエットスーツを脱ぐ。 もちろん、グローブとブーツも脱いで。 それらを特設テントのすぐ横にある浴槽へ塩抜きため運んでいく。 塩抜きしないとウエットスーツが硬化したり、ヒビ割れたりするので必要なのだ。 水色の光沢のあるワンピースの水着姿になった時点で男性スタッフはテントを出ていく。 着ぐるみでも水着を脱ぐ姿を見てしまうのは申し訳ないと思うのだろうか? その辺りはよく分からないが男性スタッフが出ていくと、【アマリンちゃん】は水着まで脱がされて全裸になる。 私は決まって恥ずかしそうに胸と股を隠すと、美羽にツッコまれる。 「着ぐるみなんだから恥ずかしくないでしょ!ほら、凛早く出てきて!」 そう言うと【アマリンちゃん】の口を大きく開いて防水ファスナーを開くのだった。 私は美羽に急かされながら、【アマリンちゃん】の大きく開いた口から出ていく。 水を含んだ着ぐるみを着ていたので重量はかなりのものだったが、今はリアル【アマリンちゃん】でウエットスーツを着ているだけだから体がもの凄く軽い。 確かめるように体を動かしていると美羽が言う。 「凛、しっかり体休めておいてよ、午後の部があるんだから」 キツめの美羽とは対照的に美波ちゃんも声を掛けてくる。 「天野先輩、お疲れさまです、午後も頑張って下さい!」 そう言うと2人はテントから出て行ってしまった。 今から2人は【アマリンちゃん】の着ぐるみを簡単に塩抜きした後、ドライヤーや扇風機を使って乾燥してくれるのだ。 そうしないと、過去に一度、午後の部で海に入る前に陸上で動けなくなってしまった事があったから。 そんな事があってからは【アマリンちゃん】の着ぐるみを乾かすのは徹底するようになった。 もちろん、【アマリンちゃん】のお陰で村には観光客が増え、潤い始めていたのでスペアの【アマリンちゃん】を製作中だが、なにぶん水中に潜れる着ぐるみという事、さらに海水を含んで重くならないように製作するには時間が掛かるという事だった。 1人で特設テントで待機する私はいつもリアル【アマリンちゃん】のままで待機している。 リアル【アマリンちゃん】を脱ぐのが面倒であったのと、この可愛いリアル【アマリンちゃん】の姿でいたいという事もあった。 それに【アマリンちゃん】の着ぐるみと違い、普段と変わらずに動けるので不自由もなかった。 でも、流石に可愛い顔を両面スキンのフードでほぼほぼ隠れたままなのは不本意なので脱ぐことにしている。 少してこずりながらもフードを脱いだ時だった。 「突然すみません、取材いいですか?」 私しかいないはずの特設テントの中で男性の声がして驚いて振り返った。 私も驚いたのだが、男性も私を見て目を白黒させて驚いていた。 私は咄嗟に大声を上げた。 「キャャアー!」 その声に驚き男性は慌ててテントから出て行った。 私の大きな悲鳴を聞いた集会所から、男性スタッフが飛び出してきて男性を追いかける。 美羽と美波ちゃんも出てきて、私の側にいてくれた。 「大丈夫?」 美羽が心配して声を掛けてくれた。 「ウン、ダイジョウブ、トツゼンノトコデビックリシタダケダカラ」 そう答えたのだが、心配してくれた美羽は私をギュッと抱きしめてくれた。 私も美羽を抱きしめた。 「なにもされなかった?」 そう聞く美羽に私は答える。 「ダイジョウブ、ワタシのコエニオドロイテニゲテイッチャッタカラ」 美羽は怖い思いをしたと思っているらしく、私の頭を優しく撫でながら抱きしめてくれた。 少しすると男性スタッフが戻ってきた。 「ごめん、取り逃した、凛ちゃん顔見てない?」 そう男性に聞かれて首を横に振ったが、私は男性の顔をしっかりと見ていた。 それにその男性のことはよく知っていたが、皆には黙っておいた。 今回のような良からぬ訪問者が【アマリンちゃん】の中身を見ようとするからリアル【アマリンちゃん】でいた方がいいのだと改めて実感した。 私は一人納得し、午後からの【アマリンちゃん】の海女漁に備えて、リアル【アマリンちゃん】のウエットスーツを脱いで水色の光沢のあるビキニ姿になって体を休める。 今はテントの外を男性スタッフが警戒に当たってくれ、中は美羽と美波ちゃんがいてくれるのでゆっくり休めそうだ。 そして、家に帰ったら久しぶりに会いに行こうと思う、突然の訪問者さんに。 つづく