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9.【アマリンちゃん】デビュー

初めて着ぐるみを着て潜った日から何度も海女漁の練習をし、着ぐるみ【アマリンちゃん】のデビューの日を迎えた。 しかし、今の時代どこの自治体にもゆるキャラは存在し、話題性が低く注目されていない事は報道陣の数からも顕著だった。 【アマリンちゃん】のために集まった報道陣は地方の新聞社のたったの2社だけだった。 観光客もたまたまその日に居合わせた5人ほど。 スタッフや協力してくれた海女さんたちの家族の方が多いくらいだった。 そこで急遽、着ぐるみで海女漁をする事となった。 大急ぎで【アマリンちゃん】に海女さんの衣装からウエットスーツに着替えさせられると、サポートの海女さんにも協力してもらい海へ行くこととなった。 地方新聞社の人たちもやる気ない様子を顕にしていたのだが、着ぐるみが海に潜って海女漁をすると聞くと面白半分だと思うがやる気が見えたような気がした。 そしていよいよ、地方新聞社と数人の観光客の前で海へ入ると海女漁を開始した。 私は練習の成果を存分に発揮し、サザエやウニを手に海面へと浮上すると歓声が上がった。 地方新聞社もこれには目を丸くして驚いていた。 海から上がると何度も写真をお願いされ、それに応じた。 海女漁をしている間に観光客も増え、観光客とともに写真を撮った。 新聞記者は海女漁ができる着ぐるみについて、スタッフにいろいろ話を聞いていたが、私は取り敢えず引き上げる事となった。 【アマリンちゃん】のデビューはしょっぱいものとなりそうだったが、なんとか持ち直した。 そんなデビューの翌日の事。 観光客とテレビ局が詰め掛けてきた。 観光客は昨日、海女漁をする着ぐるみをSNSで拡散してくれた人がいた事、地方新聞社から大手の新聞社を経て、テレビ局へ情報が回ったのだろう。 昨日とは打って変わって、村には多くの人が詰め掛けた。 もちろん、求められるのは着ぐるみ【アマリンちゃん】の海女漁。 という事で今日は初めからウエットスーツに着替えて観光客と報道陣の前へ登場する事となった。 それも港近くに集まった人たちのところへ、私はウエットスーツを着た【アマリンちゃん】として登場し、そのまま海女漁を披露した。 サザエやウニを手に海面へ浮上すると大歓声で迎えられて心地良かった。 海女漁を終えても私の仕事は続く。 テレビカメラの前で可愛いポーズを取ったりしながら、【アマリンちゃん】をアピールした。 スタッフは海女漁をする着ぐるみ【アマリンちゃん】についてのインタビューを受けた。 そんなテレビ局の取材の後は、観光客との記念撮影。 本来、午前と午後の2回海女漁を披露する予定がテレビインタビューと観光客対応となり、私は朝から昼食抜きのぶっ通しで対応に終われた。 それはもちろん、私だけでなくスタッフも同じだった。 私が【アマリンちゃん】を脱いだ時は夕方だった。 しかも、海に潜ってからかなりの時間が経っていたので、【アマリンちゃん】の大きなウエットスーツには塩が吹いていた。 【アマリンちゃん】の着ぐるみから引っ張り出されたが、リアル【アマリンちゃん】を脱ぐ元気は私はもちろん美羽にも美波ちゃんにも残されていなかった。 私はしばらく動けずに、美羽と美波ちゃんの3人でいつもの会議室で過ごすこととなった。 幸い明日は平日なので、【アマリンちゃん】の出勤予定はない。 “ゆっくり休もう” そう思い、私は目を閉じた。 翌週末から今日よりも多くの人たちと接することになるとは、まだ想像もできていなかった。 そして、人が増えるとトラブルや良からぬことを考える人間が増えることも私はまだこの時は考えも及んでいなかった。 翌週末の土曜日からは、さらにテレビ局と観光客が増えた。 流石に先週の事を考慮し事前準備していたので、円滑に海女漁も2回と休憩もしっかりと取れたのだが、観光客の質は明らかに下がった。 抱きついたり押し倒したり、中には着ぐるみを脱がせて中身を確認しようとする輩が現れたのだ。 もう美羽と美波ちゃんだけでは手に負えず、男性スタッフも入ってもらった。 日に日にエスカレートしていくため、取った方法は海女漁の後は漁船に乗った【アマリンちゃん】との記念撮影となった。 そして、私はそのまま漁船で別の港へと移動し、そこで休憩待機し出動する時は車で運んでもらう形を取ることになった。 流石に離れた港まで追ってくる人もおらず、ある程度【アマリンちゃん】の出動スタイルが確立していったのだった。 日が経つに連れて改善を繰り返しながら、少しずつ形を変えて【アマリンちゃん】の出退勤スタイルが確立していくことになる。 始めのうちこそ、【アマリンちゃん】を漁船に引き上げていたのだが、だんだんと着ぐるみが水を含みやすくなり、かなりの重さとなってしまった。 とても人力で引き上げられる重さでなくなったため網を投げ入れ、まるで投網漁でもするようにクレーンを使って回収するようになった。 不評かと思いきや意外にもシュールだとか、面白いという意見もあり、【アマリンちゃん】は海女漁が終わると網で捕獲され、クレーンで引き上げられて水を滴らせながら引き上げていくのが名物となった。 【アマリンちゃん】として操演にもすっかり慣れ、観光客やテレビ局の対応も板についてきた。 そして、【アマリンちゃん】の海女漁が終わると網で回収され別の港へと運ばれるという、このパターンも定着し始めた時、事件が起こった。 つづく

9.【アマリンちゃん】デビュー

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