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「起業参謀の戦略書」を読んだ

読書メモ

本質的に価値があるが、一見すると面倒臭いことを実直に向かい合ってやることが重要である。それを導くことが起業参謀の役割だ。


「競争を避けよ。競争は敗者のものである」


「あなたの事業にとって『Amazonの書籍』に該当するものは何だろう」。これは、常に私が初期の起業家に問いかける質問である。


「ムラ」を放置するスタートアップは、企画・開発・販売等の各要素が同期せずに歪な成長をする。結果、リソースが尽きてしまうのだ。単純な喩えを使うと、「うまいラーメンを作る前にラーメンを売ってしまうこと」である。うまいラーメンを作る前にラーメンを売ってしまうということは、良いプロダクトができていないのに、広告や営業でリソースをかけ、さらには中途半端なラーメンを顧客に提供することにより悪評が立つといったイメージである。


「どこで戦うかを決めること」が戦略。「どう勝つのかを検討すること」が戦術。


企業(特に経営者)が顧客を「ただ単なる数字」として捉えた瞬間から企業の衰退が始まる、と考えている。顧客のことを常に手触り感/臨場感のある1人の人物として捉えることが非常に重要だ。


「スケールしないことをしろ」とY Combinatorの創業者であるポール・グレアムも言っている。これは、PMF手前の初期段階においては、スケール時に計測するMRRのような指標を、最初に捉えてはいけないということだ。


実は、うまくいっている事業/スタートアップは最初にこうしたアーリーアダプターと言われるような初期ユーザーを見つけている。1%以下からスタートして、徐々に横展開や縦展開をして広げていく。


「リソースを集中投下せよ。局地戦であればスタートアップでも大企業と十分戦える。ただし、その市場が今後どれだけ広がっていくのかを見立てる必要がある」───川邊健太郎氏 Yahoo!LINEヤフー代表取締役会長


「一番最初に攻める市場とビジネスモデルは決まっていますか?」「その後、どのように展開していくのか、ロードマップはありますか?」「TAM、SAM、SOMの見立てはありますか?」「どういうタイミングで入っていくか想定していますか?」


そもそも本質的な課題にはユーザーすらも気づいていないことが少なくない。一見すると非常識に見えるアイデアが、根本的な課題解決につながっていることが往々にしてある。


イノベーションの種は「ユーザーが諦めていること」に存在する


「スタートアップのアイデアはthink-up(考え出す)ではなく、Notice(気づく)である」───ポール・グレアム YCombinator創業者


出会い方の演出を意識するためには「5つの不」を解消する必要がある考えている。

不認知:そのプロダクトについて認知していない

不信:そのプロダクトについて信頼がない

不適:そのプロダクトが自分に合っていない

不要:そのプロダクトが自分に必要ない

不急:そのプロダクトを今手に入れる理由がない


顧客の負担(時間/身体の労力/罪悪感/ブレインパワー/社会的承認/お金/日常性/安心・安全)について意識しているか?


世の中で売れているものは「役に立つ」か「意味がある」かどちらかが必ずあり、機能性に優れて価格も手頃な「役に立つ」商品の価値は、なくなり始めていると述べている。ユーザーはいちいち言葉にしないが、「このプロダクトやサービスを使うことは、理想の自分に近づいているかどうか」を意識しているのだ。


このプロダクトを使うこと(継続すること)によってユーザーの「こういう人になりたい」という自己実現欲求は満たされるか?


マーケティングの価値を一言で表現すると「顧客とプロダクトの最適な出会い方を演出すること」と考えている。


「スケールしないことをしろ」というポール・グレアムの言葉を「ユニットエコノミクスが健全化するまでスケールするな」と解釈している。逆に言えば、ユニットエコノミクスが健全化した後でスケールすれば、当然バケツに水(キャッシュ)が溜まっていくので、事業がうまいこといく確率は高まるということだ。


使用を重ねるな中で自分の「行動」がどんどん変容して、そのプロダクトが徐々に生活やオペレーションに入り込んでいった。結果「習慣」が変容し、最終的にプロダクトがないと生活が成り立たないレベルになった。この状態になると、自分の「価値観」に変容が起きたと言えるだろう。


「価値観」の変容までくると、プロダクトはもはや生活のインフラレベルになり、プロダクトに対して非常に高いエンゲージメントを持つことになる。ただ、そういう強いエンゲージメントに至るにはどのようなハードルがあり、そのハードルを払拭するソリューション/施策は何なのかを明確にする必要がある。


Amazonレビューでは、低い評価がつくとそのモノは売れなくなる可能性が高い。しかし、そうした赤裸々なレビューがあることで、ユーザーは妥当なモノの選択を行うことができる。すなわち、部分的に見ると「非合理」に見えるが、全体を通しては「合理性」のある戦略となっているのが、Amazonレビューなのである。


2サイデッドマーケットプレイスでは、「両者の利益を最適化する」ことが重要であるため、Airbnbは初期段階においては、供給数が少なかったため、自分たちで宿泊場所を調達していた。また、Uberも一般的なドライバーではなく、自分たちで契約したドライバーを活用していた。こうして初期段階における供給量の担保を図っていた。


Amazonは、最初自らダイレクトに商品を消費者に販売していたが、その後マーケットプレイスとして、出店者から手数料を取るモデルを展開した。ポイントとしては、まずは、自ら取引を継続的に行い需要者側をどんどん惹きつける。需要者の数がティッピングポイントに達したら、サードバーティーに開放していくといった戦略だ。「ニワトリとタマゴのジレンマ」でいうと、ニワトリ側を演じるという戦略だ。


Airbnbも初期の頃は、自分たちのアパートを掲載して、それを旅行者に提供していた。創業メンバー自らがオペレーションを行いゲートキーパー(品質保証)をすることで、ノウハウを蓄積していった。


これらの事例のポイントは、最初から2サイデッドマーケットプレイスを狙うのではなく、水が一方から一方へ流れるようなパイブライン型で攻めていったということである。

この戦略を用いてうまくいった事例に、ブロガーのプラットフォームを展開するMediumがある。最初にプロのライターを雇って高品質なブログを投稿して読者の注目を浴びた。そうして記事のレベルが高いというイメージを確立して、読者や執筆者を呼び込んだのだ。ユーザーがコンテンツを書いてくれるタイプのプラットフォームだが、最初はプロのライターを集めて書いてもらったのである。まさにハードサイド(集めるのが難しいユーザー)を集めた例だ。特に影響力がある方々を集めたこともポイントだ。


最初からターゲットを絞らずに全方位的に始めてしまうと、どうしても「ニワトリとタマゴのジレンマ」に陥りがちである。そのため、できるだけユーザーが抱えている痛みを具体化して、そこから攻めていくことが重要である。


Uberはアトミックネットワークを劇的に絞った。最初の段階は「午後5時の通勤電車のカルトレインの5番ストリートでタクシーに乗りたい人」と絞り込んでいた。この時間帯は、帰宅する人が利用するためにいつもかなり混雑していた。駅前でタクシーに乗りたい人がいれば、オペレーション担当が登録ドライバーにメッセージを送るといったサービスだった。


Stripe共同創業者のパトリックとジョン・コリソンはユーザー一人ひとりに対し、丁寧に仕事を行なった。電話をかけてStripeを試してみることを了承した潜在ユーザーがいたら、リンクを含んだメールを送るのではなく、その顧客の場に出向きStripeをインストールしてあげたのだ。このテクニックは「コリソン・インストール」と呼ばれている。


スタートアップの初期の頃は、「失うものは何もない」状態だ。新規事業のスタート時も同様だろう。事業会社の場合は、法務のコンプライアンスを遵守するといった意識が必要になるが、新たな事業の場合、そこまでのリスクはない。そのため、実際に顧客検証する際には、さっさと顧客にぶつけてみるのが一番早い。その前提に立ったとき、「作る前に売る」という発想が出てくる。アイデアがあれば、実際に求められているかを検証すべく、作る前に売ってみる。売ってみるということは、値段をつけてリアクションを見るだけではなく、営業資料やパンフレットを用いて顧客にそれを提示して反応を見るなども含まれる。その反応から得たフィードバックをベースにして、どんどんブラッシュアップをしていくのだ。重要なポイントは、きちんと顧客に聞くということ。間接的に聞いたり、聞いた気になったりしていては、インサイトは得られない。


「MVPを世に出した時に”恥ずかしい”と感じないなら、行動するスピードが遅いということだ」────リード・ホフマン LinkedIn創業者


彼らはスピードを重視して、事業の検証を行なった。この事業において一番の検証要素は、「顧客がいるかどうか」である。なんと、ランディングページをローンチした翌日に最初の注文が入り、自らの手で顧客の元に配送したのだ。彼らは車もなく、最初は徒歩で運んだと回想している。創業者自ら顧客と話し、そこから一次情報/インサイトを獲得し、高速でサービスを改善していったのだ。


所感

サービスを立ち上げる際の戦略や考え方については、とても学びのある内容だった。特に考えることよりも気づくことが重要であるとか、スケールしないことをするだとか、ポール・グレアムの言葉を実際の企業事例と共に噛み砕いて説明していたため、自分が行動する際の参考にもなった。


この2020年代はスタートアップにとって、自身の課題感と顧客の反応からスタートするだけでなく市場選択から大きなスケールで考えることが求められているのだろうと感じているが、そういった市場についての考え方も触れられており、網羅性があるように感じた。プロダクトに関する本だと、そこにまで言及しているものは多くない印象なので。

「起業参謀の戦略書」を読んだ

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