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力丸一太 縮小銃使用報告書

「ああぁ……け……警察の御方……どうか……御慈悲を……」


どこかの会社の重役だろうか、タキシードを着た恰幅の良いの男性。

彼は19歳の力丸よりもはるかに年上で、

社会的な地位も金も手に入れた『成功者』としての人生を謳歌していた。

ほんの一分前までは……



「この通りでございます!なんでも致します!

 どうか、どうかっ……お見逃しを……警官様ぁあ」


それが今、

力丸の撃った縮小銃『ビストル』によってわずか15.5cmの身長に縮められ、

足元で泣き叫びながら土下座をして、

力丸のまだ真新しい革靴を舐めて許しを乞うている。

その哀れな姿は、今までの人生で見てきたどんな素晴らしい景色よりも、

力丸青年のまだ未熟な精神に絶大な影響を与えた。

人生観やモノの見方がまるきり覆るような――計り知れない衝撃だった。



「…………なんだ……コイツの………ゾクゾクする………」


力丸は自分でも全くの無意識のうちに、

警服の上から股間をさすり始めていた。

力丸は勃起していたのだ――

見下ろす縮小犯の、あまりに無力で、惨めで、哀れな姿に。

そして、この街の犯罪者たちを自らの思うがままに縮小させ、

有無を言わさず従わせることの出来る、

絶対的な権力を手にしているという事実に。



「オレの靴を、お前の汚い唾で汚すな……」


力丸は、靴を舐めつづけていた縮小犯を左手で掴み、顔の前まで持ち上げた。

軽く掴んだつもりだったが、

それでも縮小犯にとっては万力に挟まれたような衝撃。

ぎゃあああ!と大きな叫び声を上げて苦痛に顔を歪めていた。


「ひいいぃいっっ!!も、申し訳ございません……!

 そうだ、おっ……お金なら!いくらでも差し上げますぅ……

 ですから、どうか……どうか!」


巨大な力丸の顔に見下され、恐怖と涙で青ざめた縮小犯の顔。

青臭いほど純粋だった力丸の心に、邪悪な色が差していく。


「黙れ……このドブネズミめ……そのブクブクと太った体に、

 これから思い知らせてやる……お前の『身の程』を……」


「そ……そんな……」


犯罪者を縮め、所有し、支配する、神にも等しい権力――

純真な19歳の青年は『現行犯縮小』という快楽に、魅了され始めていた。



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「縮小銃使用報告書」


日付:20XX年6月5日

時刻:午後10時53分

場所:東亰都豊烏区西苔袋1丁目35-3付近アビス通り路上

氏名:村田義行

年齢:49歳

職業:会社役員



パトロール巡回中、

居酒屋「種子島」の店先にて泥酔し立ち小便をしている男を発見。

声を掛けると慌てた様子で逃亡を図った為、縮小銃を使用。

「結婚式の帰りだった。娘が嫁ぐ寂しさで飲めない酒を飲んでしまった」

と供述。

反省しており情状酌量の余地はあるものの、

確保の際に器物破損に相当する余罪が認められた。

よって身柄拾得人を力丸一太とし、縮小体にて交番内に拘留。

当面の間、飼育観察処分とする。


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「ま、そんな感じで、適当に書いとけ」


先輩の嶺武志(みね・たけし)が、

報告書を書いている力丸の肩に腕を回して覗き込む。


「器物破損って、靴を舐められただけですけど……

 本当にこんな無茶な理由で拘留して良いんですかね……」


「いーんだよ!もしも理由が無けりゃ『殴られた』とか適当書きゃいい。

 どうせ真実は闇の中だ。この『ムシ』を開放しない限り……な」


嶺先輩は嫌らしく笑いかけると、

机の上で全裸で正座させられていた縮小犯の小さな頭を指でつまんで持ち上げた。

縮小犯は、悲鳴をあげて手足をばたばたと動かしている。

必死でもがく姿を見て、力丸は思った。

本物の『虫』みたいだ……と。


力丸は右手を伸ばして、その小さな体を握ってみた。

手の中で震えながら、すがるような目で力丸を見上げている縮小犯。


こいつの……このムシの人生は、オレが握ってるんだ……

どんな罰を与えるのも、どんな命令を下すのも、オレの意のまま……

もちろん、いつ元の姿に戻すのも……いや。

死ぬまで小さなムシのままで、オレの命令に従わせたっていいんだ……


「へへっ、口元がニヤけてるぜ、力丸。

 ……な?ようやく理解ったろ?これが俺らの権力だ。

 外を見てみろよ。ほら、あそこで信号待ちしてる良い女だって、

 あの偉そうな車に乗ってるどっかの社長だって、

 その気になりゃ、今すぐお前の言いなりに出来るんだぜ……」


嶺先輩の言葉を聞きながら、腹の下に熱が溜まってくるのを感じる。


力丸は、ビストルを手に取った。


グリップを握ると瞬時に生体認証が行われ、ロックが外れる電子音がした。


これは……オレだけが使える銃。


この銃の前に、無力な市民たちは、ひれ伏すしかない。


……そうだ、ひれ伏すしかないんだ。



この銃を持つ、オレの前に……。 (終)




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サイズフェチ・オムニバス "HIERARCHY"

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【hierarchy】(ヒエラルキー)  階層[ピラミッド]型社会、階層[階級]制。  支配層、管理層。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ①「劣矮種購入記念」 この世界の人間は 『光の日』をきっかけに、 二種類に分けられるようになった。 偉雄種(いゆうしゅ)と、 劣矮種(...


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