SamSuka
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SS_伝説の体現者

いよいよ春本番、暖かくなってきました。

4月になっていろいろと環境の変わった人も少なくないかと思います。


さて、今回も支援者先行作品です。

今回は既にサービス終了してしまったソシャゲである

「モン娘☆は~れむ」のエリッシュというキャラです。


見た目は以下の3枚目をご覧ください。

担当されていた作者さんが

実際にゲームで使われていたイラストを上げてくれています。


SSはエリッシュの設定を知らなくても楽しんでもらえるように書きました。

(必要最低限の説明を書いています)

そのため、キャラを知らなくても楽しめるようになっていると思いますが、

見た目は事前に共有しておこうと思いました。


それでは本題。

モン娘☆は~れむより、ティアマト娘のエリッシュ。

伝説と噂される彼女の伝説らしい姿が見られます。

(約6,000字)


※無断転載禁止


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魔界。

様々なモンスター娘が存在している一方で

人間という種族がほとんど知られていない世界。


魔界はひとつではない。

自然豊かな魔界もあれば、現代都市に近い建物が建ち並ぶ魔界もある。

他にも、極寒の魔界や灼熱の魔界などなど。


そして、とある魔界には大魔王と呼ばれる者が居る。

かつてすべての魔界やモンスター娘の存亡の危機を救った存在。

今や大魔王の名は広く知れ渡り、各魔界の魔王と友好的な関係を築き上げている。


すっかり平和になった魔界であったが、

大魔王はすべての魔界を訪れたわけではない。

思い出したかのように、まだ見ぬ魔界探しを今日も行うのだった。



「よいしょっと……到着したわね。

 今回はどんなところかしら。」



とある世界に突然現れた青いロングヘアーの少女。

頭には1対のツノが生えており、尻尾も生えている。

そしてそれなりに肌面積がある服装。


今回の新魔界探索担当となったティアマト娘のエリッシュである。

仲間の協力を得て転移魔法で移動してきたのだ。


周囲を見渡す彼女。

緑や灰色が見える足元、そして周辺は水だらけ。

どうやら小さい島らしい。



「思ったより何もなさそう?

 というより、この感じ……」



ふと手をグーパーしてみたり、軽く足を上げて下ろしたり。

そして改めて周囲を見渡すと彼女は小さくため息をつく。



「やっぱり、ここは魔力がない世界みたいね……

 魔法を使わなければあまり問題はなさそうだけど、

 こんなところ誰も住めないわ?」



魔界と言われるほどである。

モンスター娘には魔力が不可欠だ。

特にエリッシュは物理攻撃より魔法攻撃を得意としているためなおさらである。


万が一ここで襲われるようなことがあれば危険だが

魔力がないこの世界では他のモンスター娘が存在している可能性がほぼ無い。



「この世界に来るときに何か不具合があったみたいね……

 こっちから連絡はできないし、向こうも気づいているはずだから

 大人しくしておきましょうか。」



腕を組みながらぼんやりと立っている彼女。


青い空に程よい風。

温暖な気候で居心地は悪くない。


とはいえさすがに退屈である。

せっかく探索に来たのに何もしないのはもったいない。



「せっかくだから、待っている間に周りを軽く調べておきましょうか。

 何か発見があるかもしれないし?」



思い立つと早速歩き始める彼女。


足を上げて前に出し、地面に下ろす。

それを左右交互に繰り返すだけであるが、こころなしか体が重い。



「魔力がない世界だからかしら……

 機敏に動きにくいし、踏み下ろした地面もやたら沈み込む気がするし……?」



地面を踏みつけるたびに重く低い音が響き渡り、

緑の地面には土色の靴跡がくっきりと刻まれている。


ふと、彼女は気づく。

緑の部分は植物であることは間違いないようだが、どうも芝生ではないようだ。

芝生なら踏みつけても土色にはならないはず。



「てっきり芝生と砂利だと思っていたけど、違いそう?

 じゃあ灰色の方は何かしら……?」



灰色の地面が広がっているところで屈むとそのまま顔を地面に近づける彼女。


顔を近づけてよく見てみると細長い石が無数に地面から生えている。

その大きさも生え方もバラバラで、石の側面は光が反射してキラキラしている。


どすぅぅぅぅんん……


もう少し近くで見ようと

両手を地面について四つん這いになってさらに顔を近づける。



「……あっ!

 これってもしかして、ビル!?」



思わず驚く彼女。

地面に建ち並んでいたのは自分よりもはるかに背の高いはずの建物だと気づいたのだ。


数ある魔界のひとつに、現代魔界と呼ばれるところがある。

そこはビルが建ち並んでおり、まさに現代の都会の1エリアを想起させる。


ちなみに、モンスター娘たちは慣例的にそこを現代魔界と呼んでいるようで

背景などは知らないらしい。



「でもビルがこんなに小さいはずないから……

 えっと……」



歩くだけでも体が重い。

足を踏み下ろすたびに重く低い音が広がり、大きな靴跡が刻まれる。

そしてあまりにも小さなビルと街並み。


彼女はひとつの結論にたどり着く。



「つまり、この世界に来るときに私がとっても大きくなったってことね……

 もう、今回はとんだ災難だわ。」



ゆっくり立ち上がると再び小さくため息をつく彼女。


どうやら転移時にトラブルがあったため、

本来想定していなかったこの世界に転移したこと。

想定外の世界に転移されたことで連絡がとれないこと。

そして転移時に何故か大きさが変わってしまい、彼女が巨大化していること。


今回はさまざまなトラブルに見舞われた彼女。

頭を抱えてしまうのも無理はない。



「……まあ、落ち込んでいても仕方ないわよね。

 とりあえず状況が分かっただけよかったということにしましょうか。」



しばらくして落ち着いた様子。

改めて状況を整理し始める彼女。


ここは魔力のない世界だから他に誰も居ない世界のはず。

そして仮に安定してこの世界に来ることができるようになっても

ここには魔力がないからあまり意味がない。


一方で、たくさんのビルや建物があったということは

昔は多くの何かが住んでいたらしい。

とても大きな文明だったようだ。

そんな文明よりもはるかに大きなモンスター娘となって今ここに居る。



「……こういう場所を襲ったら、

 伝説級のモンスター娘としてふさわしいかしら?」



伝説。

それは彼女に対する周囲からの評価を一言で表したものであり、

同時に彼女を縛る言葉でもある。


ティアマト娘の彼女は魔術書を扱い海の魔物を呼び出して戦うことができる。

海の女神といわれる彼女の伝説は噂されるほどにさまざまなオマケがついてしまい、

今ではとんでもない状態になって広まっている。


たしかに彼女はそれなりの力を持っている。

しかし実際には、普通という言葉がとても似合う娘なのだ。


そのため、広まっている噂に対して彼女はとても困っているが、

根が真面目な彼女は少しでもそれに恥じない伝説の存在になろうと

頑張って振舞っているのである。


そして今、彼女はとてつもなく巨大な存在になっている。

山をも軽く跨ぐその大きさは、なんと15,000メートルほどである。


ふと、ゆっくりと右足をあげる彼女。

その足の影は都市の一部を覆っている。



「魔力のないこの世界を開拓してもどうしようもないし、

 ちょうど誰にも使われなくなった建物がたくさんあるから……

 私の伝説のために、使ってあげる!」



ずどぉぉぉぉんん!!


力強く右足を踏み下ろす彼女。

長さ2キロ超、幅700メートル超の範囲にあるものすべてが

一瞬にして踏みつぶされてしまった。

高層ビルは崩れるよりも早く右足の靴で地面に押し付けられ、

より小さな建物や縦横無尽に広がる道路もまるでそこに何もなかったかのように

粉々になって踏み固められてしまった。


さらにはあまりの衝撃に踏みつけた足の周辺はクレーターとなってしまった。



「たったこれだけで、たくさんの建物をめちゃくちゃにしちゃった……

 でもこれなら、私は噂どおりの伝説になれるかも……!」



ずしぃぃぃぃんん!!

どしぃぃぃぃんん!!


力強く踏み下ろされる足によって

彼女の足元にある海沿いの都市がどんどん踏みつぶされていく。


30階建てのビルでさえ彼女の足首にも届かないようなちっぽけなものである。

栄えているエリアで電車の駅間が短いため、

彼女のひと踏みが2つの駅を同時に踏みつぶすことだってできてしまう。



「せっかくなら、踏みつけるのを肌で直接感じてみたいわね。

 靴を脱いじゃいましょうか。」



どすぅぅぅぅんん……


座り込むと靴を脱いでいき、何の気なしに適当なところに靴を置く彼女。

丁寧に揃えて置かれた靴はそれ自体でも周辺の山より大きく、

この世界の建造物よりはるかに大きなそれは伝説という存在をさらに引き立てる。



「これだけ建物が小さいから

 砂利を踏んだみたいにチクチクしないといいんだけど……

 えいっ!」



ずがぁぁぁぁんん!!


改めて力強く足を踏み下ろす彼女。

素足でも充分すぎる威力の踏みつけは先ほどまでと同様に

足裏が触れたものをひとつ残らずつぶしていく。

違いがあるとすれば、そこに残る者が靴跡ではなく足跡ということ。


そして、もうひとつ。

彼女の反応である。



「……あはっ、あははっ!

 とっても気分がいいわ!」



どしぃぃぃぃんん!!

ずどぉぉぉぉんん!!


笑みを浮かべながらひたすら踏み荒らしていく彼女。


文明を踏みつぶした足裏から感じる心地よさ。

いくつもの高層建築物を踏みつぶせる大きさ。

誰にも邪魔されない解放感。

そして伝説級になることができるほどの力。


彼女が秘めていたあらゆる感情を

大都市は容赦なくぶつけられていく。


数々の電車の駅、港や工業地区、

高さ300メートルに届きそうな超高層ビル、

その他無数に建ち並ぶ高層ビル、などなど。


大都市を構成していたすべてのものに襲い掛かる彼女。

笑い声と足音を何度も響かせながら、

何十回も足を踏み下ろし、時折蹴散らしていく。


伝説級の怪物が本気で街を襲撃したことで、

大都市が壊滅するまでに5分もかからなかった。



「このあたりは大体終わっちゃったわね。

 こんなにも楽しいなんて思いもしなかったわ?」



仁王立ちで地上を見下ろす彼女。

海沿いの大都市は彼女の足でほとんど踏みつぶされてしまっていた。


無数に刻まれた足跡やクレーターはもちろんのこと、

あちこちで土煙があがっていたり火事になっていたり、

さらには地割れが無数に広がっていたりで大惨事である。


運よく踏みつぶされなかったところも

人が住めるような状態ではないほどの被害を受けている。

この大都市で彼女の襲撃を免れたところは

残念ながら無いと言ってもよい。



「うーん、まだ連絡は来ないし……

 この調子て川の向こうにある隣のもっと大きな都市を襲ってあげるわ?」



ずしぃぃぃぃんん……

どしぃぃぃぃんん……


彼女は満足するどころか、別の都市へと向かい始める。

もはや暴走するモンスターそのものだ。


彼女が向かったのは15キロほど離れたところにある大都市である。

先ほど彼女が滅ぼした大都市よりもさらに大きな都市だ。


とはいえ15キロとは今の彼女の身長ほどしかない。

人間が歩いて移動しようと思えない距離ではあるものの、

彼女は4歩で移動を終わらせてしまった。



「本当に広いわね……現代魔界よりも広そう?

 でも、私は伝説のモンスター娘だからこんなの楽勝よ!」



ずどぉぉぉぉんん!!

どごぉぉぉぉんん!!


早速踏み入れて蹴散らしていく彼女。

都市が変わったところで建物の頑丈さが変わるはずもなく、

やはり簡単に踏みつぶされていく。



「さっきのところよりも踏み応えがあって楽しいかも……

 なかなかいいじゃない!」



大きな建物が多く密集しているためか、

彼女にとってはさらに心地よいものとなっている様子。


ところで彼女は気づいていないようだが、彼女の襲撃は地上だけに留まらない。

この大都市は地下も充実しているのだ。

複雑に絡む地下鉄はもちろん、大型駅の周辺は地下街も栄えている。


しかし彼女が伝説級の大きさであるがゆえに

彼女が意識していなくても地下まで簡単に踏み抜かれてしまっているのだ。


上空から彼女の足がおろされるのが見えないのは幸せかもしれないし、

突然すべてつぶされてしまって何が起きたか分からないのは恐怖かもしれない。



「……あら?

 ここにも変わった塔があるわね。

 そこの塔より目立たないから見落とすところだったわ?」



彼女が見つけたのは高層ビルが建ち並ぶなかにそびえ立つ赤色の塔。

そびえ立つといっても、周辺の高層ビルよりは少し背が高い程度である。

少し離れたところにある白銀の塔の半分ほどしかない。


それでも赤色のため遠くからでも分かりやすい。



「あれは普通に踏むとさすがにチクッとしそうね。

 それならこうやって……えいっ。」



足の親指を塔を横から押し付ける彼女。


塔とはいえ高層建造物である。

それなりには頑丈につくられているものではあったが、

いくらなんでも横から大きな力で押されることは想定していなかった様子。


塔の上部に押し付けられた足指によって上半分がねじ曲がり、

さらには根元付近からちぎれてしまった。


がしゃぁぁぁぁんん!!


そのまま塔は足指にはりついて少しの間だけ宙に浮いてしまい、

直後に付近の建物を巻き込みながら地面に叩きつけられてしまったのだった。


ずどぉぉぉぉんん!!


それだけにとどまらず、

なんと彼女は右足で丁寧に踏みつけて

追い打ちをかけてしまった。



「あははっ、何の塔か分からないけど相手にならなかったわ?

 せっかくだし、そこの塔も始末してあげましょうか。」



ずしぃぃぃぃんん……

どすぅぅぅぅんん……


1歩、2歩と移動すれば白銀の塔の隣にまで移動してしまった彼女。

今までの建物よりも大きく、600メートルは超えている。

それでも彼女の足首に届くことはないが、

土踏まずにギリギリ入りきらないほどの高さはあるようだ。



「これだけ大きな塔を踏みつぶしたら、伝説級の逸話になるわね。

 それじゃあ早速……」



ずずぅぅぅぅんん……


白銀の塔から少し離れたところに左足のかかとを下ろす彼女。

そのまま足が塔へと傾いていく。


ミシミシギシギシ……


丁寧に押し付けられた足裏によってだんだんと傾いていく銀色の塔。

根元付近が折れ始めていく。


がしゃぁぁぁぁんん……

どすぅぅぅぅんん……


そのまま容赦なく傾けさせられた銀色の塔は耐えられずに簡単に倒されてしまった。

それとほぼ同時に塔を倒そうとしていた足が塔を踏みつぶしてしまったのだった。



「ふふっ、ひとつ伝説を刻んじゃったわね?

 あとは……この大都市もめちゃくちゃにしてあげないとね?」



改めて大都市を見下ろす彼女。


ここも踏み荒らしてしまえば簡単に滅ぼせるのは間違いない。

ただ、

せっかくならもっと派手にやることでさらなる伝説を刻むのもいいかもしれない。


普段どおり魔術書で海の怪物を操れば

この程度の広さは一気にめちゃくちゃにできる。

しかしここは魔力がない世界。

下手に魔力を使うと後々危険なことになるかもしれない。



「……そうだ。

 いい方法を思いついたわ?」



ずずぅぅぅぅんん……


ゆっくりと座り込む彼女。

そしてそのままあおむけに寝転がってしまった。


長さ約15キロ、高さ約2キロの巨大な山脈が現れたかのようだった。



「ごろん、ごろん……」



ずどぉぉぉぉんん!!

どごぉぉぉぉんん!!


なんと彼女は寝返りを打ち始めたのだ。


全身を使って大都市を横断していく彼女。

頭や胸、お腹やお尻、腕や脚、そして尻尾。

彼女の前面、側面、背面すべてが大都市をまとめてつぶしていく。


大都市の上から下まで届く体が

ひとつ残らず襲い掛かっていった。



「はぁ……寝返りを打つだけで都市がめちゃくちゃ……

 こんな伝説を実現できるなんて……」



数回転したところで体を起こし座り込む彼女。

大都市があったところは全てが瓦礫まみれの土地と化してしまっていた。


右足裏に赤色の塔だったものを、左足に銀色の塔だったものを、

そして全身に瓦礫をへばりつけながら余韻に浸る彼女。

あまりの興奮に震えが止まらないようだ。


と、そのとき。



「……あっ、ようやく連絡してくれたのね。

 よかったー……」



彼女の仲間から連絡が入った。

無事に見つけてもらえたらしい。


夢見心地で暴走気味の彼女だったが

すぐに我に返ってホッと胸をなでおろした。


そしてそのまま無事に元の世界に帰る彼女であった。


なお、

魔力のない世界にも知的生命体が多数住んでいる世界があることを彼女が知ったのは

帰って少し経ってからのことである。


------


おしまい。



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