杏の入院している病院では結構な騒ぎになった。 慎重に外出許可を出して、外出した難病の患者が 病院に帰ってきた翌日の検査で、腫瘍が8割がた消失していたのだ。 もちろん、計器の故障が疑われ、関連病院に場所を変え、 担当医を変えて再検査が行われたが、結果は変わらなかった。 外出して何があったのか、担当の女医が聞いてきたが、 巫女に口止めをされていたこともあるけど、 異形の神に乳房を吸われ、キスして唾液を交換し、精液を飲んだら こうなりましたなどとは勿論言えない。 何度かの検査をした結果、 命の危険は去り、大手術は必要がないということになった。 この奇跡に両親は涙を流して喜び、杏にはそれがなによりも嬉しい。 あの神社の奥の院の暗がりで、異形に弄ばれたこと。 あの痴態による両親へのほのかな後ろ暗さが癒えるのを感じた。 まだ入院生活は続いている。 杏は再び、外出許可を申請し、前回よりもずいぶん簡単に それは許された。 もう、入院を続けていれば命に危険がないとは言われているが 現代の医学では完治できないとも言われている。 完全に治してくれるのはあの神、スイナメ様だけだろう。 神社で巫女、紙垂に迎えられ、奥の院へ向かう。 あの日と同じように目隠しをして、パンツ以外の服を脱ぐ。 「くれぐれも目隠しはとらないでくださいね。」 これもあの日と同じように、紙垂はそう念を押してきた。 「あの…取ったらどうなるんですか?」 「スイナメ様と見合ってしまったら、日常に戻れなくなります 杏さんはことに、スイナメ様のお気に召されておりますので」 あの日と同じ黴臭い暗い畳の部屋、後ろで重い扉が閉まる音がして 紙垂の気配が去る。 杏は畳に腰を下ろし、仰向けに寝る。 病を癒してくれる、好色な神が来るのを待つ。 やがて、ずるりずるりと気配がしてきた。 (来た…) 生臭い匂い、ずはーずはーという、断続的な呼吸音、 明らかに人間でない気配。 しかし、あの日と違ってもう恐怖は感じない。 顔が紅潮し、胸がドキドキと脈打っている。 乳房にイボイボの手が延ばされ、揉まれる。 「あっ、あん…」 甘い声が漏れ、杏はわずかに身体をよじった。 その乳房を揉みながら異形の顔の気配が近づき、 生臭い息をまとった舌が唇を舐める。 杏は自らの舌を伸ばし、スイナメ様の舌に絡めた。 口内に侵入した舌を口を窄めて吸い、舌を絡め合う。 愛する人を愛おしむようにスイナメ様の顔を撫でた。 ちゅっちゅぱっちゅっ れろっ ちゅっ 口腔と口腔の粘膜が触れあい、互いの唾液を交換する淫靡な音が 薄暗い奥の院に篭り、響く。 (あ、おちんちん大きくなってる…) 互いに求めあうように濃厚にキスを交わしながら、 杏は腹にあたっている男性器を優しく撫でた。 もう一回、今日ここで、スイナメ様の体液を貰えば 病気が完治するという確信がある。 それは打算。 自分の病気を治してくれた、両親を喜ばせてくれた この神様にお礼をしたい、 それは建前。 その打算と建前の奥の奥で、ほの暗く蠱惑的な欲情の火種が疼いていた。