(アップホルスターアームチェアandオットマン)
先日colosoの講座にて、絵に必要な知識諸々の解説をしたのだけど、家具や室内に置く小物モチーフの知識については軽く説明する程度に終わってしまった。
代わりにオススメできるよくまとまった書籍でもあれば、と思ったのだけど、思えば絵描き・クリエイター向けの綺麗な図版の家具解説本はあまり見かけないことに気がついたので、自分で作ることにしました。適宜fanboxの記事で更新しつつ、家具パートが済んだら一度本にする予定。
今回はその1回目、一人がけの椅子、別名パーソナルチェアについて解説していきます。
家具屋で修行を積んだわけではないため、完全独学で間違っている部分もあるかと思いますが、検索に使えるワードも併記しておくので、ご興味を持たれた方は是非ご自身でも調べてみると家具の魅力をよりいっそう味わえるかと思います!
(ロッキングチェア)
椅子の名前と言っても、ひとつの椅子にひとつの明確な名前があるというより、家具屋が特徴から適当に命名していることが多い。例えば、私に家具屋が名前をつけるとしたら「東京人」「平成人間」「絵描きホモサピエンス」「でん」など、分類階級によって呼び名があるみたいなイメージ。
今回はなるべく分かりやすいように、
「おおまかな形の分類」
「つくりの分類」
「使う部屋の分類」
「個人(個椅子?)名や特殊な用途の椅子」
と、大きな分類から細分していく順で解説していきます。
🪑サイドチェア
肘掛けのない背もたれ付きのシンプルな椅子全般の呼び名。もともとはダイニングテーブルの側面(サイド)に置かれた椅子だったため、この名前がついた。
構造がシンプルで軽めに作られているので動かしやすく、ダイニングの他様々な場所で使われている。
検索ワード: Side chair、Armless Chair
🪑アームチェア
肘掛け(アームレスト)がついた椅子全般の呼び名。
サイドチェアがダイニングテーブルの両サイドに置かれたのに対して、お誕生日席には肘掛けのついた椅子が置かれた。今はダイニングはもちろん、その他書斎や応接間で使われることが多い。
検索ワード:Arm chair
🪑ラウンジチェア
アームチェアの一種で、より寛ぐ(lounge)ことに特化したものの呼び名。座面や背もたれを広く取り、クッションを使って座り心地を良く設計されている。書斎や寝室など、リラックスする場所で使われがち。
検索ワード:Lounge chair、Easy chair、安楽椅子、Club chair
🪑オットマン
カウチやラウンジチェアとセットで使われる、大きめの布張り足乗せ台。座面と脚のみのシンプルな構造。同じシンプルな構造の椅子にスツールがあるけど、椅子として使われるスツールと違い、オットマンは足を乗せるのが主な目的。
検索ワード: Ottoman、Footstool、Footrest
🪑ロッキングチェア
2本のそり(Rocker、Runnner)が底についた椅子。座って前後に体を揺らすことができる。書斎や寝室、特に暖炉の脇に置かれることの多い椅子。
画像は19世紀アメリカで大流行した、ボストンロッカーと呼ばれるロッキングチェア。
検索ワードRocking chair、揺り椅子
🪑スウィベルチェア
椅子の座面の下の部分に360°回転する機構のついた椅子。別名リボルビングチェア。
画像は特にキャプテンチェアと呼ばれるデザイン。船長室などで使われたのが起源と言われるけど、今は書斎などで使われることが多い。
検索ワード: Swivel chair、Revolving Chair、Captains chair
🪑フォールディングチェア
折り畳み式の椅子。軽くて持ち運びやすく、屋外などでオケージョナルチェア(補助用椅子)として使われる。現代ではスチールパイプの椅子が一般的だけど、古くから木製のフォールディングチェアは作られていた。
画像はキャンペインチェアという、軍隊で使われるフォールディングチェアをイメージ。
検索ワード: Folding chair、Campaign chair
🪑ローチェア
座面が低い椅子全般の呼び名。
リラックスするために低めに作られることもあるが、靴を履くため、子供の世話をするためなど個別の用途がある場合もある。
検索ワード: Low chair
🪑ハイバックチェア
背もたれの高い椅子全般の呼び名。首や頭まで支えられる高さがあり、その格式高い重厚感から教会家具として用いられることもある。
画像はペリウィッグチェアを意識したもの。笠木(背もたれ上部の横に渡る板)に細かい装飾が施され、貴族が被っていたかつらを華やかに見せる効果があった。
検索ワード: High back chair、Periwig Chair
🪑スツール
背もたれのない簡易的な椅子。ミルクスツール(搾乳用の低い椅子)やソーイングスツール(裁縫用の道具箱を兼ねたスツール)など、使用目的が限定された作業用のものも多い。
検索ワード: Stool、Tabouret
🪑ハイスツール
座面が高いスツール。地面に足が届きにくい高さの椅子なので、足を置くためのフットレストが付いていることが多い。主にバーカウンターなどで使われる。
検索ワード: High stool、Bar stool
🪑張りぐるみ(アップホルスター)椅子
木枠を隠すようにクッションなどの詰め物をして、布や革で覆った作りの椅子。
画像は背もたれの両脇に翼のように覆いがある、ウィングチェア(ウィングバックチェア)。
この背もたれのように、布張り部分にボタンで凹凸模様を作る意匠をタフティング、背もたれの端の部分を金の小さなボタンを並べて留める意匠を鋲打ちと呼び、鋲打ちとタフティングが施された革張りの椅子を、チェスターフィールドチェアと呼ぶ。
検索ワード: Upholstered chair、Wing chair、Wingback chair、Chesterfield chair
🪑フレーム露出タイプの椅子
全面を布張りせずに、肘木や木枠が部分的に露出した意匠。華やかなカーヴィング(彫刻)が施されていることが多く、優雅な印象。(正式名称がわからない…)
画像はタブチェアと呼ばれる椅子。バスタブのように、広く丸い背もたれがそのまま回り込み肘掛けとなるデザイン。
検索ワード: Tub chair、Exposed Frame Chair
🪑フレームチェア
フレームが完全に露出している椅子。座面や背もたれ部分に付属するクッションを置いて使う。
画像はモリスチェアという名前で、あの有名なウィリアム・モリスのメーカーが製作した椅子。背もたれの角度を変えることのできるリクライニングチェアでもある。
検索ワード: Exposed Frame Chair、Morris chair、Reclining chair
🪑メタルチェア
金属製のフレームの椅子。現代的、インダストリアルな意匠のものが多い。
アンティークの椅子でも金色のフレームを持つものは見られるけど、それは大抵金箔か金の塗装でできていて、真鍮で作られていることは稀。
画像は折り畳み式(フォールディング)のパイプ椅子(スチールチェア)。
検索ワード: Metal chair、Steel chair、Industrial chair、Tubular Chair
🪑ベントウッドチェア
木材を蒸して曲げる曲木細工で作られた椅子。ミヒャエル・トーネットの作ったベントウッドチェアは、軽くて丈夫、美しくて安いため量産され世界中で使われる椅子になった。
パーツごとに分解が可能で輸送コストを抑えられる上、デザインは何千種類とあるもののトーネットの椅子であれば部分的に交換が可能だったため、汎用性が効くと言う意味でもとても便利な椅子。いまでもカフェなどでよく目にするので、探してみると楽しい。
画像はダブルループタイプで、6つのパーツに分解可能。
検索ワード: Bentwood chair、Thonet chair
🪑ウィンザーチェア
木製の分厚い座面に、挽物細工(ろくろで木材を回転させて加工する意匠)などの脚やスティック、背棒が直接差し込まれた椅子の総称。カントリーチェア(民藝椅子)の一種。初期のものでは肘掛けがついているアームチェア型のものもあるけど、基本的にはサイドチェア型。リーズナブルで丈夫だったため、ベントウッドチェアと併せてパイプ椅子が普及するまで重宝された。
背もたれの意匠が非常に多岐に渡るので、ここでは描ききれない……。
大まかに分けると、背もたれのフレームが弧を描くボウバック(弓形)と、笠木と背棒が櫛のような形を成すコムバック(櫛形)に分けられる。
背板の意匠などでも名前が分かれており、ヴァイオリンのような形のフィドルバック、車輪を模したホイールバックなど、さまざまな種類がある。
背もたれが低いローバックチェアではスモーカーズボウが有名。名前の通り、パブやコーヒーハウスでタバコを吸いながらくつろぐための椅子。
検索ワード: Windsor chair、Country chair、Bow back chair、Comb back chair、Fiddle back chair、Wheel back chair、Spindle back chair、Fan back chair、Scroll back chair、Rudder back chair、Smorkers bow、Ercol chair等……
🪑ダイニングチェア
食卓で使われる椅子の総称。基本的にはサイドチェアだけど、中には肘掛け付きのアームチェアも。
サロンチェア、ラウンジチェアとの主な違いとして、取り回しの良さと座り心地のどちらを優先しているかという点がある。サロンチェアでは背もたれは後ろに傾いて、もたれやすく設計されていることが多いけど、ダイニングチェアの場合はすっと背筋の伸びる角度に設計されていることが多い。
画像のような壺を模した形の背もたれは、アーンバックチェアと呼ばれる。
検索ワード: Dining chair、Urn back chair
🪑サロンチェア
サロン(応接間)や客間に置かれた椅子。基本的には肘掛けのないサイドチェアのことを指す。
ダイニングチェアと比べると座面の広さや背もたれの形がよりくつろげるように作られていて、装飾も華やか。
ちなみに、画像のように上部が円形を描く背もたれの椅子は、バルーンバックチェアと呼ばれる。
検索ワード: Salon chair
🪑ホールチェア
玄関ホールなどで使われる椅子の総称。靴を履く際に座るなど、実用的な用途もあるものの、基本的には装飾用に置かれた。長時間座ることがないため、基本クッションなどのない木製のつくりで、背もたれには豪華なカーヴィング(彫刻)が施される。
検索ワード: Hall chair
🪑レディースチェア
低く大きな座面を持ち、肘掛けのない椅子。ふわっと広がる女性のドレスを美しく見せるためにアームを省いた。ジェンツチェアと対になることが多く、同じ意匠を施されつつも一回り小さく作られる。
19世紀あたり、ヴィクトリア朝の家具に多い。優雅なカプリオールレッグ(猫脚)装飾がよく見られる。
同じ形の椅子にナーシングチェアがあり、こっちは赤ちゃんを抱えて座る椅子のこと。厳密な違いはなく、使うシーンで名前が変わるっぽい。
また、ショフーズという似た形状の椅子も存在して、こちらは炉端に置く背の低い椅子のこと。
検索ワード:Ladies Chair、Nursing Chair、Chauffeuse
🪑ジェンツチェア
レディースチェアとセットで応接間や寝室に置かれた、男性向けの安楽椅子。
レディースチェアと比較すると一回り大きく、肘掛けがついているのが特徴。
検索ワード:Gents Chair、Gentleman‘s Chair
🪑リーディングチェア
書斎、図書室に置かれた椅子全般。張りぐるみか、一部木枠の露出するタイプの安楽椅子が多い。
画像は書見台が肘掛けに添えつけられているタイプで、灯りを確保するための燭台なども取り付けられていることもある。
少し古い時代(18世紀ごろに多い)のものだと、このように背もたれの上部に書見台が設置されているものも見られる。座席に後ろ向きに跨って座る、男性向けの椅子。
余談。18世紀の椅子には同じように跨って座れるヴォワユーズ(voyeuse)という椅子もあり、上の図の書見台の部分がクッションのついた肘置きになっている。後ろに立っている人がそこに肘を置いてカードゲームをのぞき見ることが出来たため、「のぞき見人」という意味の名前がついた。
検索ワード:Reading Chair、Reading chair with book holder、Antique reading chair with bookstand、Library chair
🪑デスクチェア
デスクやビューローに向かって作業するための椅子の総称。
肘掛け付きのスウィベルチェア(回転椅子)で、高さ調整の機能がついたものが多く見られる。
現在はオフィスチェアとほぼ同義で使われることもある。その中でも特に重厚で洗練されたデザインのものはエグゼクティブチェア(社長椅子)と呼ばれることも。
検索ワード: Desk chair、Office chair、Executive chair
🪑ヴァニティチェア
ドレッサー、化粧台にあわせて使う小ぶりで華奢な椅子。
背もたれが低いものが多く、背もたれのないスツールタイプも見られる。女性の部屋に置かれる事が多いからか、線が細く優雅な曲線を描くカプリオールレッグ(猫脚)のものが多い。
検索ワード: Vanity chair、Vanity stool、Dressing chair、Boudoir Chair
🪑フォトゥーユ
フランス語で肘掛け椅子を意味する言葉で、フレンチスタイル、特にロココ調、18世紀フランス風の軽やかな肘掛け椅子を指す。
全体的に曲線的で、ファブリック部分にはしばしば刺繍の施されたゴブラン織が用いられる。肘掛けの部分にもクッションを張られ、背もたれと座面が連結せずに独立しているデザインが多い。
検索ワード: Fauteuil、French Armchair、Rococo Armchair
🪑ベルジェール
アップホルスター(布張り)の肘掛け椅子。フォトゥーユと同じくフレンチスタイルを代表する椅子だけど、ベルジェールはフォトゥーユと違って座面から肘掛けまでの間が布張りされていて、よりリラックスして座れるデザインになっている。
フレームは露出していて、繊細な彫刻が施される事が多い。
検索ワード: Bergère、French Armchair、Rococo Armchair
🪑ポーターチェア
ポーター(門番)が待機するための椅子。玄関ホールやエントランスなどに置かれたため、寒さを凌げるように幅の広い背が上から覆い被さるように風防の屋根を形作っている。別名キャノピーチェア。
検索ワード: Porter‘s chair、Porter chair、Canopy Chair
🪑メタモルフィックステップチェア
普段は普通の椅子として使われているけど、座面や背もたれを動かす事で踏み台(ステップラダー)に変形する仕組みの椅子。変形の仕組みはさまざまで、図のように椅子上部全体をひっくり返す仕組みから、座面を分割して引き出す仕組みまで多種多様。
高い本棚の本を取るために使われる事が多く、そのため書斎や図書室に置かれる事が多かった。
検索ワード: Metamorphic Step Chair、Library Ladder Chair、Step Stool Chair
🪑モンクスチェア
モンク(修道士)たちが使った椅子。背もたれの背面が机の天板を兼用したつくりになっていて、背もたれを倒すと机としても使用できる。戒律で簡素な生活を定められていた修道士ならではの家具。
検索ワード: Monk‘s chair、Monks chair
🪑カウンターチェア
カウンターで使われる高さのある椅子。基本的にはバースツールと同義だけど、背もたれや肘掛けのついているものはスツールと呼びにくいので、このように区別する事がある。
検索ワード: Counter chair、Bar chair
🪑ピアノスツール
名前の通り、ピアノに向かって置かれる椅子。座部の下にスクリューピボットがついていて、回す事で座面を上げ下げできる。
基本的には1枚目の丸い回転式スツールが主流だけど、たまにベンチ型で収納付きのスツールも見られる。こちらは留め具で高さ調整ができるタイプ。
検索ワード: Piano stool、Piano bench
🪑クルーレスツール
X字型の脚を持つスツール。フォールディング(折りたたみ)できるものが多い。
古代ローマの高官が権威の象徴として使っていたのが由来。この系譜のスツールにサヴォナローラチェアやダンテスカなどがあり、どちらも歴史上の人物に由来した名前がつけられている。
検索ワード: Curule stool、Curule chair、X-frame stool
🪑コーナーチェア
部屋のコーナー(角)に斜めに置かれる椅子。
椅子の角を部屋の角とあわせて斜めに座るため、背もたれがL字状に作られている。
座ったまま向きを変えやすいので、ラウンドアバウトチェアとも呼ばれる。
検索ワード: Corner chair、Roundabout chair
🪑バレルチェア
布張りで半円形の形を持つ、背もたれと肘掛けで包み込むような椅子。樽(バレル)を斜めに切って作った椅子が元になっている。タブチェアとほとんど同義。
検索ワード: Barrel chair
🪑ホイールチェア(車椅子)
大きなホイール(車輪)が左右についた、可動式の椅子。後ろから人に押してもらうタイプもあれば、車輪の横のハンドリムで自力で動かすことができるタイプもある。
介助の必要な人が長時間座るからか、背もたれ部分が通気性の良いラタン(籐編み)製になっているものも見られる。
また、折りたたみの天蓋付きで、前に一つ車輪を足した三輪型のバスチェアというものもあり、こちらが車椅子の起源となっている。
検索ワード: Wheelchair、Bath chair
……長々解説してきたけど、基本的には上の画像を保存して検索するなり本で調べたりするなりで充分だと思う。ここまで全文読んだ方が居たとしたら、お疲れ様でした。。参考文献は前回の特集記事の「家具やモチーフ」に載せている本ですので、気になった方はぜひ。

私が背景を楽しんで描いているのは、多分資料が大好きという性質によるところが大きい。 絵が上手い人はほぼみんな口を揃えて「資料を見ろ!」というので、私に限った話ではなく、上手い絵を描こうと思ったら資料の存在は絶対に欠かせないものだと思います。 そんなよく聞かれるおすすめの資料を40冊ほど厳選(?)し、 ・...
今回の図版は資料としてぜひご活用いただければと思うのだけど、私の絵をそのまま真似するのではなく、自分で何枚か写真資料を集めてから描くことをお勧めします。
真似されるのが嫌というわけではなく、「絵を見ながら絵を描く」と、一度他人のフィルターを通したものを自分のフィルターに映すということで、結果的に描き手の意図が濁ってしまい上達の意味では悪手だと思うので……
(ウィングチェア型のチェスターフィールドチェア)
次回は6月か8月に二人がけのソファ、セティ、ベンチ類について解説する予定です。夏はなぜか毎年繁忙期がちなので、気長にお待ちいただければ……
次回⬇️

(カウチ) 絵描きや3Dモデラーのためのビジュアル的な家具辞典があまりない事に気がついたので自分で作っていく特集記事。 前回の1人がけの椅子に引き続き、今回は長椅子(2~人がけの椅子)編になります。 ☝️前回の記事はこちら 長椅子は大まかな形でいくつかに分類できる。今回は、 ・ソファ ・カウチ ・セティ ・ベンチ ...
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