星野スイの心は、静かに崩れ落ちていた。 異空間に連れ去られた彼女は、紫色に染まる空と星が瞬く世界で、呆然と立ち尽くしていた。 「もう……何も信じられない……」 仲間に裏切られ、弄ばれた身体は、なおも熱と痺れを残したまま。守るべきだった人間たちは、彼女を嘲り、欲望のはけ口とした。 その事実が、何よりもスイの心を深く蝕んでいた。 「ほひひ……地球人は、ひどいことをするねぇ❤」 背後から絡みつく腕。その動きは、まるで恋人を慰めるように優しかった。 その主こそが、彼女をこの異空間へと連れ去ったテレポート怪人だった。 「だから、君は僕の妻になるべきだって。」 囁きは甘く、耳にまとわりつく毒。スイはかすかに首を横に振るが、心の奥底では、その言葉に縋りたい自分が確かに息づいていた。 「私は……まだ……地球を……」 「フフ……まだ気づいていないのか?」 怪人の手が、そっと彼女の腹へと触れる。そこは、不自然な温もりと、確かな脈動を宿していた。 「これは……?」 「君の身体は、もう完全に僕のもの。そこには——僕との新しい命がいる」 衝撃が、スイの全身を貫いた。言葉を失いかけた彼女の前で、怪人はゆっくりと能力を解く。 隠されていた真実が——露わになる。 スイの腹は、大きく膨れ上がっていた。 「うそ……そんな……」 「これまで隠していたけど、もうその必要はない。君は僕の花嫁として、あるがままに輝くべきだよ。」 絶望が、スイの胸を冷たく締め付ける。 仲間に裏切られ、人間に失望し、そして——敵であるはずの怪人の子を宿してしまった自分。 帰る場所など、どこにもない。 「……あ……ぁ……」 「さあ、花婿からのリングの贈呈だよ❤」 怪人の手が、彼女の右手に静かにリングをはめる。奪われた、変身の証——ラスティ・コメットのリング。 その瞬間、彼女の身体は光に包まれ、コメットの姿へと変貌する。 しかし——膨れ上がった腹部だけは、そのままだった。 「……すばらしい……美しい……君は、完璧な花嫁だ。」 ラスティ・コメットの瞳から、静かに光が消えていく。 その身体は、もう抗う意思を持たず——怪人の腕に包まれ、異空間の闇へと沈んでいった——。
初知(ういち)
2025-04-11 21:24:44 +0000 UTCしば
2025-04-11 16:28:20 +0000 UTC