ぬめる感触が、首筋から忍び込み、服の内側を這っていく。 星野スイは、まるで宙に浮いたまま、粘膜質の空間に囚われていた。 (……また……これ……) 前にも感じたことのある感触が、今はあまりにもはっきりと、いやに滑らかに伝わってくる。 服の前合わせに滑り込んだ一本が、まるで人の手のような動きで器用にボタンを外していく。 腰回りの布地も、他の触手が押し上げるように持ち上げ、わずかにずらしてしまっていた。 “破く”のではなく、“丁寧に外す”――まるでこの儀式そのものを楽しむかのように。 「器用ね……妙なところばっかり」 口調は落ち着いていたが、その吐息にはわずかな動揺が混じる。 身体の各所を撫でる感触が、次第に一定のリズムを刻み始めていた。 肩を沿うように滑るもの、太腿を這い上がるもの、胸元を円を描くように動くもの。 何本もの触手が、それぞれの“役割”を心得ているように動いている。 「……ほんと、気持ち悪い……のに、慣れって怖いわ」 自嘲混じりの声に応えるように、一本の触手が顎をそっと持ち上げた。 彼女の顔の正面に現れた、ひときわ太い触手。 呼吸を読むように、口元にぬるりと近づいてくる。 頬を撫で、唇の隙間を優しく探り、やがて――ゆっくりと侵入を始めた。 「ん……っ」 抵抗する隙は与えられなかった。 腕も足も、思うように動かない。 口内に触れた粘液の先から、とろりと何かが流れ込む。 甘い。 その瞬間、思考がわずかに滑る感覚。 (……喉の奥が……重い……) 粘度のある液体が、まるで舌にまとわりつくように広がっていく。 ひとくち、またひとくち――それはゆっくりと、確実に、彼女の中へと染み込んでいく。 「……ふ……ぁ……っ」 微かな吐息とともに、スイの視界がかすんだ。 まだ意識はある。 だけど、その輪郭は確実に――滲み始めていた。 触手はまるで“眠るように”囁いている。 身体に、心に、そう仕向けるように。 そしてその中で、スイのまぶたが一度だけ震えた。 その奥で――何かが揺れていた。
初知(ういち)
2025-06-20 21:55:35 +0000 UTCしば
2025-06-20 18:53:47 +0000 UTC