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Jin(鬼頭ジン)
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Trick And Treat

chapter:0 南瓜 「ん?」  20半ばのフリーター、金雀武範が目にしたそれは、顔がくり抜かれた南瓜だった。  街の繁華街を抜けて出たところにある民家のすぐ近くに、ひっそりと地面に置いてあった南瓜を見て武範はそう思った。  ふと携帯を見る。今日の日付は10月29日。 「そうか……もうすぐハロウィンだったな」  どうやらハロウィンの準備に用意されたものらしい。  武範はそろそろそんな時期か。と思った。  しかし何やらその民家に違和感を覚えた。  近くに南瓜はある。のに、その家は人が住んでいるような家には見えなかったのだ。  夜なのに灯りもついておらず表札もない。声すら聞こえてこない。  さらにその家は、昨日まで使われていたような形跡が見当たらないほど寂れている。  しかし、もしかしたら今は出かけていないのかもしれないし、この南瓜自体が最近作られたものでないかもしれない。  そう思った武範は深く考えず、そのままその場を後にしようとした。  その時だった。 「……えっ?」  武範の眼前に、現実とは到底思えないような事が起きていた。  南瓜が突然何かに反応するかのように光り出したのだ。  そのままその南瓜は、何者かに動かされているかのように動き出した。 それはオーラをまといながら空中に浮き、一気に武範の顔めがけて突進してくる。  当の武範は何もできぬまま、その頭部を、顔状にくり抜かれたハロウィン用の南瓜に被せられてしまった。 「うあっ! なんだこれ!? やめろ!」  急に南瓜を頭に被さられた武範は、それを外そうと必死にもがく。  が、それは上から引っ張っても拳で殴ってもうんともすんとも言わなかった。 「うあっ……あああっ!」  首から上を完全に南瓜頭にされてしまった武範は、突然その身を悶えさせ始めた。  身体中の力が抜け、別のなにかが自分の中に侵入してくるような。そんな感覚に武範は苛まれた。  身体の中になにかが入ってきて、それが自分の身体の隅々を通り抜け、前にあった自分自身の何かを追い出してしまうような、そんな感覚が訪れ、その感覚が頂点を超え絶頂に達したその時、武範が身につけていた服に変化が起こった。 「あう……あっ、あん!」  身体中の服が緑色の花びらと化し、自分の身体から離れていったのだ。それはまるで、新しい感覚の着替えのようにも感じられた。  靴、ズボンと全ての衣服が花びらに変わり果て、夜の空にひらひらと舞う。  自分が身につけていた服との別れを惜しむ暇もなく、上半身を覆っていたシャツ部分も全て花びらになり、身体から消え去った。 「んんんっ……! んっ、あああああ!」  そのままトランクスも同じように消滅し、武範はあっという間に生まれたての姿にされてしまった。  羞恥のあまり股間を両手の手のひらで覆い隠し悶える武範。その見た目は南瓜の仮面を被った全裸の男という、異様なものだった。  その男の下半身に桃色の花びらが覆い始める。  それは武範の体に次々と張り付き、体積を増やしながら新たな衣服へと姿を変えていく。  花弁が散ると、武範の下半身には、金と銀のストライプ柄をしたかぼちゃパンツが装着されていた。  まるでファンタジー世界の中の王族が着ているかのような、現実離れした異様なデザインのパンツに、武範は恥ずかしさを覚えた。 「ああ……何だこれ……」  それの感触を下半身いっぱいに感じた武範は、つい股間のモノを勃たせてしまう。  その衝動を抑えようと、膨らむ股間に手を当てる。 「あ、う、あ、あああ。あああーっ!」  が、それに反応したモノは、耐えきれずに白い精子を吐き出した。  快感のあまり、武範はかぼちゃパンツの中で射精したのだ。 「あぁぁ……い、いやだ! 出る!  俺の精子が…………俺の“年齢”があっ! うあっ!」  股間から精を放出した武範は、その姿のまま、快感のあまり嬌声をあげていた。  膝をつき、股間を押さえながら数秒射精の快感によりその顔を天を向けながら。  すると、その武範の身体に変化が訪れた。  成熟していた肉体が、やや幼くなっていったのだ。  大人だけあって発達していたその筋肉は緩みはじめ、背丈も少しずつ縮んでいく。  175cmあった武範の身長は、変化が落ち着く頃には158cm程度に縮んでいた。  武範の身体はすでに大人の肉体ではなくなっていた。  中学生、またはかろうじて高校生かという体つきに変貌を遂げていた。 「うんっ……ああっ!」  あげていた声も、先程よりも高さを増していた。声も若い頃のものに戻ってしまっているようだった。  そんな武範の上半身に新しい花弁が包み、あっという間に新たな服へと姿を変えた。  それは貴族が着ていたような服で、橙色と藤色に銀色のアクセントが目立つ色合いだった。  金銀のかぼちゃパンツと組み合わせるとまるで絵本の中の王子のようだった。 「な、なんだこの……うあ!」  その快感に負け、武範は範囲にゆとりの出来たかぼちゃパンツの中に、再び精をぶちまけてしまった。  すると武範は再び若返りはじめた。  まるで精子の中に自分の齢が閉じ込められていたかのように、射精するたび武範の身体は若返っていく。  そして落ち着いた頃には武範の身長は132cmまで縮んでいた。  もはや、小学生としか呼べない体つきに変わっていた。  そして追い打ちをかけるかのように、武範の手に純白の手袋、足にメタリックパープルのラメが入った先の尖っている派手な靴が覆う。 「あ、あっ、あっ、あっ。あうっ」  喉仏も引っ込み、すっかり幼い声になった武範は、いつの間にか皮被りになった小さなペニスから最後の精子を吐き出した。  身体は最後の仕上げと言わんばかりに、以前までの射精の時よりも更に急激なスピードで若返っていく。 「ああっ! あっ……あぁーーっ!」  武範の身長は105cmまで縮んでいた。  もはや小学生の身体ですらなかった。  南瓜の頭、奇妙な格好、幼児同然の身体まで退化したその姿は、まるでカボチャのモンスターのようだった。 「あ……い、イヤ、ダ……ヤ…………」  そして武範は快感に負け、自らの記憶と共に意識を手放した。  そして、夜は過ぎて行った―― 「ン……」  気絶していた武範は、意識のみを取り戻し、顔を上げた。  そして自身の肉体をまじまじと確かめると―― 「トリック・オア・トリート!」  そう叫び、で空へと飛び立った。  背中からオレンジ色のマントをたなびかせると、夜空を超スピードで飛び回る。 「キャハハハハ! もうすぐハロウィン! そうなったら僕ハ自由に遊ぶんダ!!」  こうして武範はカボチャ怪人として生まれ変わった。  人間だった頃の記憶は全て意識とともに抑えられ、姿形も、心も完全に乗っ取られてしまっていた。  もう誰も、元は人間の金雀武範であったことを証明できる者はいないだろう  金雀武範改め、カボチャ怪人「パンプキン・ジャック」は、来たる日のために、自分が今から過ごす街の下見をはじめたのだった。 chapter:Ⅰ ハロウィン  10月31日、ハロウィン当日。  街は1年に1度のイベントに、否応無しに盛り上がりを見せていた。  仮装する者、お菓子を貰いに行く子供、お菓子を用意して待っている大人など十人十色の人々の姿が見られた。  そしてその光景を一人夜空の上で見下ろしている者がいた。 「ふーん。どうやらここハ“ジャパン”というところのようだネ。  さて、せっかく復活したンだから思いっきり遊びたいナ!」  その者こそ、カボチャの怪人、パンプキン・ジャックといった。  秋頃にしか現れない謎の怪人で、ハロウィンに出没してはただの人間に”悪戯“をしては一人愉しくせせら笑うという、そんな怪人なのだ。  活動のためには、ただの南瓜に擬態し普通の人間に取り憑き、身体を乗っ取る必要がある。その際その人間の肉体は彼のいいように操作され怪人好みに作り変えられる。  実際、今回取り憑かれた青年は年齢と身長を奪われ子供のような姿の怪人に変えられてしまった。既にその意識は王子のような派手なパンツの中に手放してしまったが。 「ヤハリ、ココモ僕ノ仲間ガ一杯イルネ。人間ハ僕達ヲ呼ビ寄セナイタメニ異形ノ姿ヲ模シテイルヨウダケド、逆ニ僕達ノ世界ニ近クシテイルダケナノニ……  キャハハハ、ダカラ僕ハコノ日ガ楽シミナンダ。唯一僕ガ違ウ世界ニイラレルコノ日ガ。  サテ……扮シテイル人間ニハサスガニ悪戯デキナイケド、シテナイ人間ニハ……ヒヒ」  ジャックはマントをはためかせると、夜空へと飛び立って行った。  彼が思う極上の”お菓子“を貰うために。 chapter:Ⅱ 浦戸寅吉 「ねえ、俺も行ってきていいでしょ」 「ダメだ、まだ勉強終わってないだろ。それにお菓子なんかもらってどうすんだ。ランタン作ってやったんだからそれでガマンしろ」 「……」  中学生、浦戸寅吉は折角のハロウィンに、どこにも行けず、イベントの類にも参加できず、歯痒い思いをしていた。  浦戸家は、父子家庭のうえ家が裕福なところでもなく、その類のイベントや行事など、参加したことはほとんどなかった。  他のクラスメイトはクリスマスや正月やハロウィンを楽しく過ごしているというのに、自分は我慢して勉学に勤しまなければならない。  父親も厳しいうえ『勉強は将来必ず役に立つこと』と、毎日脅迫じみた強要をされる。当然拒むと後が恐ろしいので逆らえるはずがなかった。  ランタン自体は渋々作ってくれていたものの、それは小さなを南瓜を切って穴を空けそれにロウソクをいれただけのもので、とてもランタンとは言えないみすぼらしい代物であったことにも寅吉は不満をあらわにしていた。  そのうえ小学生の頃に女子にこっぴどく酷い目に合わされ、それから異性を意識することもなくなっていた。いや、異性が苦手になっていた。  そのせいで女友達もいない、男友達でさえ、何もない家のせいで友達の話題にもついていけず、半ば孤立状態であった。  そんな自分に嫌気が刺していたし、早く大人になって自由になりたい。そう思っていた。 「はあ……なんでオレだけ……  オレも昔の浦戸家に生まれたかった……」  寅吉は祖父から聞かされていたのだが、昔の浦戸家。いや先祖はとある国の上流家庭だったという。その先祖の子孫が日本に移住し名前を変え、今の浦戸家になったというのだ。  半ば信じ難い話だったが、それが真実ならばどれだけ良いだろう。そう思った。  そして、自分もそうだったらさぞ良い暮らし。いや、恵まれた暮らしができていたのだろう。そう思った。  そして寅吉はその暮らしに憧れを持っていた。  寅吉の中には、早く大人になりたい。金持ちになりたい。自由になりたい。そんな願いが渦巻いていた。 「はあ……」 「トリック・オア・トリート!」  そんな寅吉の”隣“に、何やら声がした。  そう、二階の、誰もいない寅吉の部屋にいる、誰かの。 「え?」  そこにはカボチャの頭をした子供がいた。  絵本の中の王子様のような派手な格好をした子供が開いた窓の縁に座り込んでいる。それはまだまだ子供の寅吉の目から見ても異常な光景だった。 「キ、キミは?」 「僕? 僕ハパンプキン・ジャック。マアソンナ事ハドウデモイインダヨ。  今日ハハロウィンデショウ? オ菓子チョウダイ?」  急に現れた謎の子供にお菓子を要求された寅吉だったが、しかし、寅吉の家にはそんなものはなかった。  貧困なうえ厳しい父親がお菓子を禁止していたからだ。  この平成の東京でそんな珍しい家庭があるのかと驚くかもしれないが、寅吉の家庭ではそれが常識なのであった。なんとも不憫な話である。 「ごめん……家、貧乏だからお菓子置いてないんだ」 「ヘー珍シイ。デモソレナラ悪戯サセテモラウヨ? ドウヤラ君ハタダノ人間ノヨウダ。仮装モシテイナイミタイダネ」 「仮装って……だってそんなお金ないし……っていうか悪戯ってなんだよ! やめろよ!」 「ダーメ。ソレジャア、君ハ僕ノ友達ニナッテネ。人ナラザル者ハ、今ノトコロ僕ダケナンダ。  ダカラ、君モ僕ト同ジ存在ニナルンダ。ソレガ僕ノ悪戯」  部屋に土足で踏み込んできた子供がオレンジ色の瞳を光らせ寅吉に詰め寄る。 「うわっ!」  驚いた寅吉は思わずジャックを突き飛ばす。しかし、その瞬間カボチャ頭の子供は姿を消し、寅吉が気がついたその時には―― 「抵抗ナンテ意味ナイヨ。今日カラ君ハ、トモダチ♡」  気がつかぬうちに背後に忍び寄り肩に抱きついていた。それに気づいたのは、既にジャックが悪戯を終えた後だった。 「あうっ」  ドクン――  寅吉の心臓が脈打つ。  身体中の血液が、寅吉の身体中を異常なほどに回り始めていた。  心臓が人間ではありえないほどに動き、体の血の巡りを促進させる。  気がつけば寅吉の股間に存在するちんちんは、子供が見れば恐怖で泣き出すのではないか、というほどに大きく膨れ上がっていた。  大の大人でも到達できないのではないだろうかというぐらいにまで巨大化した寅吉のちんちんは、まさに人間の全てをこの中に集めたかのようにも思えるものであった。 「あ、ああ……俺のちんちん……なんだこりゃあ……!」 「楽シイヨ? チンチン触ルノ。  ホラ、僕ガ気持チヨクシテアゲルヨ。僕達ハモウ、トモダチナンダカラ」  ジャックの小さな手が寅吉の大きなちんちんを刺激する。  子供とは言えぬそのテクニックは、未だに性の味を知らない子供には刺激的すぎるものだった。  一分も耐えられぬまま寅吉は射精を迎えた。 「あ、うあ……」  ドクン! ドクン。 ドクン…… トク……  一度出す旅に身体から心臓の鼓動が、体温が消えて行くのを感じた。  まるで、射精するたびに死を迎える時間が早まっているかのように。 「あ……」  巨大化した寅吉のちんちんが精を吐き出しながら段々と縮んでいく。  逆に肉体そのものは縮んでいくちんちんの代わりに成長しているのかとも思えるように大きくなっていった。  着ていた衣服は成長が進む身体に合わせ大きくなっていき、段々自分の姿に似合うような形に変わり、色も段々と黒くなっていた。じわじわと、素肌が見えていた足にも色がつき始め、まるで何かを着けているかのように形をつけはじめていった。  長い快感に喘ぐ寅吉の肌の色が人間特有の薄橙色から人ならざる青い肌へと変貌していた。まるでもう死人になってしまったかのようだった。  しかしまだ浦戸寅吉は生きている。  ちんちくりんの坊主頭だった寅吉の髪は伸び、いつのまにか針のように逆立っていた。 「……私……私は……?」  そこには中学生の子供ではない、大人の男がいた。  170cm後半ぐらいだと思われる背にピッタリ合う漆黒のタキシードを見に纏い、背中には貴族のようなマントをしている。屋内にも関わらず足に同じく黒のパンプスを履いていた。  肌は青く耳は尖り、口元には牙がちらついている。  その見た目はまさに吸血鬼の男だった。  寅吉は吸血鬼に姿を変えられていたのだった。 「ヴラド。今日からキミハ僕のトモダチダからネ」 「私……何故このような体に……これが悪戯なのか……?」  その口ぶりから意識自体は未だに変化前の中学生のままのようだが、口調はその容姿に見合う仰々しいものへと変化していた。  彼の悪戯がどんなものなのかは分からないが、ただの中学生が人ならざる存在へと変わってしまったことは紛れもない事実だった。 「君はヴァンパイアのヴラド。君ハ今カラ僕のトモダチとイウこトニナッタンダ。サア、僕と一緒ニ他の人間ノトコロへ行こウ」  カボチャ頭の子供が手を差し伸べる。  ヴラドはそれの手を取るか、一瞬迷った。が、すぐに微笑み手を取った。  既に寅吉の心は人ならざる者のものであり、人間のものではなかったからだ。  そしてこれは彼が心の中にあった二つの願いを叶えるものであり、彼が望んでいたことなのだから。  こうして少年は人間の家庭から姿を消したのだった。 chapter:Ⅲ 上或歩 「はあ、今日も仕事終わりっと。やっと友達と……」  見るからに疲れた顔で仕事から帰る青年がいた。浦戸と同じくハロウィンとは無縁のサラリーマンだ。  名前を上或歩といった。  歩は学生時代昔些細な事でいじめを受けそれ以来不登校となりそのせいで人間を信じらなくなってしまっていた。  唯一信じられるのは、犬だけだった。  歩は学生時代に犬を飼っており、学校に行かず友達もいない、そんな歩の心を癒していたのはその犬なのだった。  中学時代は何もしていなかった歩だったが、このままではいけない、と、親や友達の姿を見て決心し、その後通信制の高校に通い卒業。何度も面接に失敗しようやく就職にこぎつけたのだった。  しかしそれでも人間と関わりあいを持つのは今でもできず、結局友達は現在飼っている5匹の犬だけだった。  当然仕事に忙しくハロウィンにかまけている暇なんてないし、犬のための用品や食品を買うため娯楽に手を出す暇すら歩にはなかったのだ。  何より友達のためなら自分は何もなくても頑張れる。そう思っていたからだ。 「ただいま。ふう……  ん? あれ、いないのかー、ご飯の時間だぞ」  家へと帰った歩は怪訝に思った。  友達の犬たちが見当たらないのだ。  どうやら出かけたきり帰っていないらしい。自分がいない時間は寂しくないよう外で遊ばせているからだ。  それでも9時前には帰ってくるはずだし未だに帰ってきていないのはおかしい。何かあったのではないだろうか。歩はそう思った。  心配している歩の肌にひんやりと冷たい風が通った。  窓でも開いていたのかな。そう思ったその瞬間だった。 「トリック・オア・トリート」 「何かよくわからないのだが、今私はこうするべきなのだ。今日はハロウィンであろう? 菓子をくれ」  歩の前に現れたのは、王子服を着たカボチャ頭の子供と黒いタキシードに身を包んだ吸血鬼の男だった。 「な、なんだお前ら! なんで家に……」 「イや、玄関ニランタンが飾っテあっタカラ、誰カ楽しンデルノかナーっテ思ッテ」  そういえば、今日はハロウィンだった。  ランタン自体に灯りは灯っていないものの、職場でハロウィンにはまっている上司が持ってきた南瓜のランタンを、半ば強制的に貰ってなんとなしに玄関に置いていたのを思い出した。  だから来たのか、と歩は思った。でもいつ来たのだろう、と疑問もあったのだが、子供の些細な悪戯心だろう。と、大目にすることにしたのだった。 「ってそうか、今日はハロウィンか。随分と凝った仮装だな。親子なんですか?」  気を取り直した歩がそう言うと、子供のほうが首を振った。 「ウウン。トモダチだよ」 「ああそうだ。それとこれは仮装ではない」 「友達……? にしては歳が離れてるな。というか冗談が上手いんですね」 「冗談ではない……まあいい。菓子をくれ。今日はハロウィン。ルールは守るべきだ」  吸血鬼がそういうと手を差し出す。  二人分か。歩はそう思ったが同時にしまった。とも思った。  この家にはお菓子がないのだ。  犬のための食用品が家の消費の主なもので、自分への消費は最低限のものしかなかったからだ。当然お菓子もない。  しかし犬用のおやつ自体はあった。渡さないのも忍びないと思った歩はそれを渡す事にした。 「ごめん……家犬用のしかないんだ。これでもいいかな」 「……一応、犬のものではあるが、お菓子としては間違ってはいないな」 「ソウだネ……でもチョットルール違反カナ。悪いケド悪戯はシナクチャナラナイ。ツマリ、君もトモダチさ」  同じようにジャックが歩の背後に音もなく移動し抱きついてくる。  目の前には吸血鬼が居り、歩のスーツを脱がそうとしていた。 「は……? な、何する気なんだ! やめろ!」  素早い動きで瞬く間にスーツが剥がされていく。それに驚く暇もなく歩はカボチャの子供に息を吹きかけられ、一瞬意識を失った――ように感じたがすぐに意識を取り戻していた。  意識が消えたような感覚に陥る寸前、歩の鼻に煮詰めたカボチャの甘ったるい匂いが充満した気がした。 「君もトモダチだ。ヨウこソ」  ジャックの声ではっ、と我に返り自分の周りを見返すと、自分の服は全てヴラドにひん剥かれており―― 「ああ……何だこりゃ……」  歩は自分の肉体のある一点を見たとき、驚愕にも似た感情がよぎった。  それよりも一番歩の中に渦巻いた感情。それはありえない、という感情だった。 「俺のチンコが……」  歩のペニスが、自分の見慣れたものではなくなっていたのだ。  そう、それはまるで自分の友達が持っているものにそっくりな―― 「気持ちイイヨ。”コレ“は前のモノよリずットね……イってミル?」  歩のペニスは、赤くて長い――皮もズル剥けてツルツルとした表面が特徴の獣のペニスと化していた。  人の肉体にぴん、と長く大きく直立しているいかにもアンバランスなペニス。それを見た歩は狼狽した。  そんな歩を尻目に、カボチャ頭の少年がその小さな手で刺激していく。何やら根元に大きく膨らんでいる瘤のようなものがあるらしく、少年は右手でそこを何度も執拗に摩っていた。 「や、やめろ! い……イッちまう!」  びん、と獣のペニスがさらに怒張すると、ビューッ……と勢いよく精子が放出された。人間のペニスとは出る量も勢いも大きく違っていた。  しかしその精子は真っ白でいつものようにほんのりスルメのような臭いがする普通の精子だった。ただし出る量はいつもの数倍の量だったが。  まるで獣のペニスが老廃物を排出するかのような勢いで放出されている”いつもの“自分の精子を見て、歩は謎の恐怖感に陥った。 「まだマダ興奮しテイるネ……ホラ、身体もソロソロ獣を求メテイルよウダ」 「が……!」  ドクン――  そんな音が身体の芯からして歩の肉体が変化をはじめた。  まず足の形が変わっていく。土踏まず以外、地面の全体をつけていた足だったがそれが縦に伸び、骨が軋み骨格が変わり爪先のみが地面につくようになっていく。爪は形自体が変わり、細く鋭くなりフローリングの床を傷つけてしまう。歩は一瞬床の修理費のことを考えたが、すぐに頭の片隅のどこかへ消えていった。 「あぅひっ!」  耳がピンと犬のもののように変化すると頭のあたりに蠢きながら移動する。耳が芋虫のようにウネウネと頭に這い寄るような感覚に、思わず歩は腰を抜かし跪いてしまった。  しばらくして歩はゾワゾワと毛が全身を撫ぜるような感触をその身に感じた。髪や髭。陰毛や眉毛に至るまで全ての毛が抜け落ちているのだ。  全ての毛が床に落ちると一秒もたたずに再び毛が生えはじめた。それは人間の時よりも淡く濃い黒の毛だった。  それは体毛というより獣毛であり、しかも瞬く間に全身へ植え付けられていく。  毛深くなっていく歩の肉体だったが瘤付きの天高く勃ちあがったペニスは変化がなかった。 「や……て……トメ……テ…………」  手の甲が長く、指が短く変化していく。形が変わるたびにグキリゴキリゴキャッと耳をつんざく不快な音がし激痛が走る。  しかしその激痛は何故か快感に変わっていった。その度に獣のペニスが果てそうになるが、このまま精子を出すと俺が俺でなくなってしまう――その思いが彼の自身を抑制させていた。 「あぎ」  歩が苦しそうに唸る。  口は涎が垂れ流しになっており、全ての歯が獣の牙へと変化する途中だった。口も一応まだ人間の口の体裁は保っているものの既に3分の1がマズルと化していて、上或歩は、すでに人より獣の比率の方が高くなってしまっていた。  歩の、少し膨らみのある腰と臀部の間ぐらいの部分――尾てい骨のあたりだろうか。その部分がぐきり、と盛り上がり、そこだけ長くふさふさな毛が重点的に生えはじめる。  その纏まった毛は、黒々とした立派な尻尾になり、動作確認と言わんばかりに先をブンブンと振り回していた。 「……おれ、だめ……いく」  獣と化しかけている人間が低く唸るようにそう呟いた瞬間、亀頭球が大きく膨らみピュー、ビューッと何発も白い”歩の“精子を噴き出していた。  精子を出す度に肉体の変化の進行度が高くなり激痛も快感もその分大きくなる。そして、恐怖すら床に撒き散らされる白い精子に溶けていくようだった。  その証拠に、歩の顔が恐怖と快感が混じったものから、とろんとした表情で快感を受け入れている。そんな顔になっていたのだから 「ワオ。ナカナカ凄いネ、これハ」 「……」  ジャックが感心しながら歩を見ている。ヴラドは何やら申し訳なさそうな顔で歩を見ていた。彼もトモダチにされた人間なのだ。同情のような感情が残っていたとしても何らおかしくはない。 「あ、う! ……いく、いく! ウガアアッ! ガアッ! ガァッ! ウウー……グガアッ!!」  ビュッ、ブシュッ、ビューッ、ブシューーーー……  音にするならこのような感じだろうか。それ程までに勢いよく精子を出していたのだ。この男のペニスは。  この勢いは、まるでホースが何かだろう。  白、白、白!  白の濁流がこれは必要ないと言わんばかりに執拗なほどに歩の睾丸から取り除かれていった。  そして―― 「……ガ。いく ビューー……ッ!  歩の言葉を遮るように透明の液体が自らの逸物から噴射される。しかも何度も何度も。まるでペニスから潮を噴いているようなその感覚は、歩の心を困惑と歓喜に苛んでいた。  それを出し切った暫くは動きを止めていたペニスは――タガが外れたかのように何発も何発も連続して噴射された。  今度の精液は白ではなかった。黄色がかかった濃厚な精液で、しかもそれが何発にもかけて大量に彼のペニスから出ているのだ。  しかもフローリング床の暖房が簡単に機能しなるくらい余裕なほどに、だ。  その射精が衰える事なく約三十分は続くと漸くそれが止まった。  その何度も襲ってきた快感に喘ぎ、一瞬ぶるぶると小刻みに震えると、歩は俯いていた顔をゆっくりとあげた。  その目はギラギラとした獣の目。縦に光彩の入った金色の瞳。あれだけありったけあるだけ射精したにも関わらず、まだやりたりない、とまでに爛々とした目で二人を見据えていた。  上或歩は、人間の姿をベースにしているにも関わらず、基本の外見は完全に狼と化していた。  そう、歩は人狼、または狼男と呼ばれている生物へと変貌したのだ。その世界では実在しないであろう異形の生物に。 「こ、これが……俺……まだ足りねえぜ……グルルル……」  そこには低い声で唸り、その筋骨隆々と表すに相応しい肉体へと進化したその身体を弄りながら新たな変化を受け入れている歩の姿があった。いやもう―― 「今日から君もトモダチだね。ねえウェアル」 「俺がこんなんになっちまうとはな……でも悪い気はまったくしねえぜ……俺の友達と一緒だからか……?」  狼男は、浦戸寅吉の心が残っているヴラドとは違いこの異形を受け入れてしまっていた。  あまりに強すぎる、鉄を焼くほどに熱された快感の熱が、歩の心を捻じ曲げてしまったのだろう。  今の彼は人間ではなく、まさに狼男といえるほどに狼男らしく構えていた。 「さあ行こうぜ、お菓子を貰いにいくんだろう?」 「うん、君は今からウェアウルフのウェアルだ。僕達ずっとトモダチだからね?」 「ああ、分かっているさ」  その後も異形に姿を変えられた三人の元人間は、ハロウィンのルールに則り、お菓子をただ貰うためだけに、夜の東京を徘徊していた。 chapter:Ⅳ トリート 「さて……だいぶ貰えたね」 「そうだな」 「結局トモダチは俺たちしか増えなかったがな」 「仕方ないよ。本来悪戯なんてしたくないからね。僕達はハロウィンを楽しむだけに生まれたんだから」 「ああ……そろそろ日付も変わる頃か」  23時5分。  パンプキン・ジャック、ヴラド、ウェアルの三人は手に菓子の入った袋を掲げながら既に皆が眠った深夜の都会を徘徊していた。未だに灯りがつきぽつりと人間が歩いているのはさすがだったが。 「にしてもこれはひどいね。ゴミだらけじゃないか」 「まさに後の祭りってか」 「まあいい。そろそろハロウィンも終わる」  ゴミや塵紙が舞う都会の床を踏みしめながら2115年10月31日最後の夜を迎えるのを待つ三人。  が、その時ヴラドがあるひとつの事に気がついた。 「……待て、それだと私たちはどうなるのだ。私とウェアルは元々この世界の住人だぞ」 「僕も元人間だよ? 元人間の身体を借りた、と言った方が正しいかな?」 「もしかしてこれ終わったら人間に戻っちまうのか?」 「ふふ……それはないよ」  ジャックはヴラドとウェアルの言葉を否定した。  そしてその言葉は、彼らがもう人間には戻れないことを意味していた。 「では私たちはこのままということか。このままここで過ごせと」 「それも違う。僕達はもうこの世界の者じゃない。だから人間のいる世界にはいられない。そして本来の僕は異界の住民。  あとはわかるんじゃない?」 「……俺達も異界へ帰ることになるのか。そうなんだな」  ――こくり。と無言でジャックは頷いた。  その通りだった。  身体が変質した時点でこの三人は異界の者である。しかし特殊な変化をしたジャックはその魂だけが異界のものであるのだが。そしてジャックは次に自分のことを説明した。 「僕は人間に憑依しただけの魂だから取り憑かれた人間は元に戻るね。君たちは身体自体を異界のものにしたから戻れないけど」 「それじゃあ不公平じゃねえ? この身体持って行こうぜ」 「ヤダよ。そしたら他の身体に取り憑くことができないじゃない。  僕は人の身体を借りて遊ぶのが趣味なんだ。僕でもそれはやめられないね。それがハロウィンの日にできる唯一の楽しみなんだ」 「……まあ考えればこいつは存在が既に異界の者だ。魂が本体と思えば不公平ではないだろう」 「いやその理屈はおかしいだろ……まあこっちの身体のほうがいいからいいけどよ……あ、俺の友達連れていっていいか?」 「無理だね。まあこれは僕の責任だから辻褄は合わせておくよ。君の友達には他の飼い主がいたことにしとく。  そしてヴラドのお父さんだった人も子供なんていなかったことにしとくから未練なんて感じなくていいよ。あっちで楽しもう!」  ジャックはそういうと両手に二つの火の玉を出現させ空に放つ。  ヴラドとウェアルはその光が飛んでいく方角を確認し、それが自分の家だったところに飛んでいくのだと分かった。 「さて、それじゃ最後のお楽しみをしようか。貰ったお菓子はあっちで食べることにしよう。あっちにいる僕のトモダチにもあげたいしね」 「あっちにもお前のトモダチがいんのか。ってか……お楽しみ?」 「そう、お楽しみ……最高の“おもてなし”だよ」  パンプキン・ジャックは、その派手な服を全て脱いでいた。  その股間には皮を被った子供のちんちんがぶら下がっていた。 「さ、しようか。あっちじゃ僕達は来年のこの時まで概念みたいなものになるからもう性欲は発散できないよ。だから思う存分この時間に発散するんだ」  ヴラドもタキシードを全て脱ぎ、射精するよりは縮んだがそれでも巨根といえるほどの大きさのペニスをぶら下げていた。  ウェアルは既に全裸であり、未だにペニスがビンビンに勃ちあがっていた。まだまだヤりたりない様子だった。 「ってお前の子供チンポでできんのか?」 「うん。勃起すればそれなりに大きいから。包茎のままだけど」 「まあいい。あっちではできないのだろう? なら今するぞ。それに私はさっきやったあれが忘れられんのだ。はじめてだったからな」 「お前オナニー如きはじめてってヤベェだろ……よし、俺が男の味教えてやるよ!」  急にヴラドの肉体が引っ張られた。  ウェアルの力で無理やり引き寄せられたのだ。  ヴラドを引き寄せたウェアルはその勃起したままのペニスをヴラドの尻に向かって思いっきり突き出した! 「うっ」  その時ヴラドは自分の身体の中に何か大きくてあたたかいモノが侵入するのを感じた。  それはズシズシ身体の奥を突いて抜いて刺激していく。 「おおあ! はじめてのくせにすんなり入んじゃねえか! 生まれながらのスケベ野郎だなテメーはよぉ! ガルルル!」  ウェアルは思わず獣の唸りをあげる。その腰はヴラドのアナルに向かって動いていた。  その腰の動きは力強く、野生の力を感じさせるそんなファックだった。 「あ、とても、凄い! これが獣のエネルギーなのか……っ!」 「まだイクんじゃねえぞ。俺がたっぷり種付けするまではな! ……あ゛?」  調子に乗ってヴラドのアナルを犯していたウェアルのアナルにも、なにやら力強い快感が襲った。  ふと後ろに目をやると、ジャックの小さな身体がしがみついており、自分の尻を包茎子供ペニスで犯していた。  しかし自分の中に感じる感覚はとても大きなものであり、ジャックが持っているモノも、そこまで舐められたものではないのだろう、とウェアルは感じた。  それよりも深刻だったのは、ジャックの攻めである。  ――三回。  たった三回で的確に彼は自分の一番気持ちいい場所を突いたのだ。  ウェアルは人間の頃その場所のことをネットで調べたことがあった。確か、グレフェンベルグ・スポットという名前だったはずだ。偶然男同士が性行為をしている小説を見てしまった際そこに書いてあり、気になって調べた時に知った言葉だった。  今や自分達が男同士の性行為をすることになるとは、そしてそれがとてもよいものだと思うようになるとは――と、ウェアルはひとり密かに自嘲した。 「あっ! やべ、やべえ! キャウゥン!」  快感のあまり、狼なのに、狼男なのに甘えた犬のような声を出してしまったことにウェアルはただただ驚いた。  しかも一度突いたあとはガンガンと何度もそのグレフェンベルグ・スポットを突いてくるのだ。  やばい。気持ちいい。イク。  ウェアルの脳みその中にはその言葉しか存在しなかった。 「ウオオオオオ!」  快感に刺激され、肉体がさらに動き出す。ヴラドのアナルをさらに突いて突いて突きまくる。ヴラドはそのボーリングじみたピストンに息が止まるほどの快感を感じていた。  膝がガクガクと震え、腰がガクガクと揺れ出す。  それを見たジャックはあることを思いついたのか、ニヤリとその表情のないはずのカボチャ顔を動かした。  ジャックは快感に善がるヴラドのアナルを突くウェアルを快感に善がらせたそのペニスを思い切りずん、と突くとそのまま勢いよく引っこ抜き、すかさずヴラドの前へと移動した。  自分の身体を後ろに向けた状態で。 「僕も気持ちよくさせてもらうよ」 「ちょっ、急に抜くんじゃねえ! 挿れろ、挿れろよ! 俺は気持ちよくなりてえんだよおおおぉ!  あ、でもヤベェこっちもヤベェ! ヴラドのアナル今になって締め付けてきやがった!!」 「ジャック……何私のペニスに……うあっ、締まる! 何て快感だ!」  ヴラド、ウェアル、ジャックと数珠繋ぎになっていたアナルファック合戦は、ジャックの気まぐれでジャックのアナルを突くヴラドのアナルを突くウェアルという構図に変わっていた。 「そうそうこれだよ! このアナルが、僕の中が刺激される感覚! 僕これだーい好きなんだ! あう!」 「あぁ、あ……締まる、[[rb:挿入 > はい]]る! い、い、イク!」 「ケツが疼きやがる! 早く挿れてくれ! あ、瘤が引っかかって抜けねえ! ってことはもうイッちまう! イク!」  ヴラドとウェアルはもう射精の寸前だった。そしてまず最初に果てたのは―― 「イク!」  アナルとペニスを同時に一番刺激されていたヴラドがまずはじめに果てた。  しかし精子は出ることはなくヴラドはただイク感覚だけを味わった。 「うおあっ!」  次にウェアルが果てる。  まず透明な体液が何発もヴラドのアナルの中に注ぎ込まれると、間髪入れず濃厚な狼男の精子が何発も放出された。  それは尻から一滴もこぼれ落ちることはなかった。それを全て受け入れるはめになったヴラドのすっきりした腹部は、風船のように膨らんでいった。 「グガァーッ……!」 「うう……うぶっ」  膨らむ腹に押し出されヴラドのペニスがジャックの穴からポンと抜けてしまう。ヴラドは最終的に妊婦や肥満した人間も驚愕するほどの太鼓腹になってしまっていた。 「あー……よかったぜ……ってやっちまった。スマン」 「う……」  その精子は瞬間的に吸収され、ヴラドの腹はあっという間に元の平らなものへと戻っていった。  吸血鬼のエナジードレインの力が働いたのだ。  吸血鬼は血を吸う際人間のエネルギーも同時に吸い取り力にする。  精子も精力の産物。生物のエネルギーであることには変わりない。なのでエナジードレインの範囲内として吸収されたのだろう。 「おお……さっきイったはずなのにまだ力が漲っている……今なら枯れた精子も出そうだ! 私は吸血鬼なのに! 吸血鬼が射精できるだと……素晴らしい!」 「お、おお! 動きが良くなったね! 凄いよヴラド! 君もよくやったよウェアル!」  溢れる力に歓喜しペニスを突くスピードを早めるヴラドにそれに喜び善がるジャック。  しかしウェアルは既に快感に負け倒れこんでいた。暫く復帰は無理だろう。 「ウェアル、あんなにヤりたがってたのにもうダウン? まあいいやっ! はやく僕をイかせてよ!」 「言われなくてもそうする! ああっ……イク! イクぞ!!」  ヴラドが牙を何の億面もなく剥き出しにし大声で吼えるように叫ぶ。  瞬間、ヴラドのペニスから洪水のようにザーメンが噴き出した。  エナジードレインの効果で吸収した精力がそのまま精子に変換された、ということなのだろうか。それが真実だとしても違うとしても、吸血鬼が射精するということは前代未聞の出来事であった。 「ああー……」 「身体は冷たいのに、精子はすごく熱いんだね……あっ、僕そろそろ……イク……」  ジャックが小さく喘いだ瞬間、ジャックの小さなおちんちんからピューッと水鉄砲のように放物線を描いて精液が飛び出した。  それは5分ほど続き、それが止まった瞬間、時計の針が0時を指した。  日付が――――変わった。 chapter:Ⅴ 悪戯の果てに  快感に善がり倒れていたヴラドとウェアルの身体が黒の霧に変わり夜の空に溶けはじめた。  足から頭へと身体は霧に変わりいつしかその場から二人の姿は消えていた。しかし地面にぶちまけられた精子はそのままだった。  パンプキン・ジャックは膝をついて呆然と上を向いていた。  カボチャ頭の、くり抜かれた”口“の部分から何やら青い火の玉のようなものが飛び出していた。  その火の玉も黒い霧と化すと同じく空へ溶けていった。  その瞬間、ジャックのぬけがらがビクン、と震える。  そのまま床に置いていた彼の衣装が桃色の花びらと化すと一斉に空に舞い上がっていった。  全裸のカボチャ頭の少年は膝をついたまま暫く動かなかったが、いつしかグキグキと音がして身体が急成長をはじめていた。  身長が175cmまで成長した辺りで肉体の成長は止まり、皮被りの小さなおちんちんもムクムクと膨らみ、皮が剥け黒ずんだ大人のチンポと化すと、仕上げと言わんばかりにチンポから一発精子を噴き出して身体の変化が終わった。  魂が抜けた途端、抑制されていた元人間の精子が睾丸へ作られて行ったのだ。  パンプキン・ジャックは憑依した人間の肉体の年齢を精子に封印しそれを強制的に射精させることで肉体を自分好みの時間まで戻す。が、これは不可逆ではない。睾丸の精子が再び作られればまた肉体は成長をはじめる。  しかし彼はこれを抑え込むことができるうえ、自らの精子を自らの意志で作ることもできる。故に彼の精子を抑えつつパンプキン・ジャックとしての精子を作ることで変化を抑制していたのだ。  しかしその魂ももういない。つまりあとは戻るだけなのだ。  仕上げに緑色の花びらが全身に覆うと、憑かれる以前に武範が着ていた衣服に姿を変えた。  そして最後に顔に覆われていた南瓜が塵と化すと、カボチャの怪人の乗っ取りは終わった。  そのまま憑依されていた人間、金雀武範は夜の街に突っ伏して眠りについた。  彼が発見されたのは、明日の5時のことだった――  闇。  ただの闇。  周り360°全てが闇の世界に、ジャック・オー・ランタン、ヴァンパイア、ウェアウルフはいた。  ここは異形の世界。  そして人間の思考と概念の世界でもある。  人間と異形は決して交わらない。  しかし収穫祭――人間が幽霊に取り憑かれないよう扮装するハロウィンと呼ばれる日。人間が異形の存在から守るために異形のふりをしたが故に、人間と異形の境が曖昧になったこの日のみ、異形はこの世界に姿を”表す“ことができる。  そしてそれは、稀にその世界の人間を巻き込み融かしてしまうことがある。  この世界の人間で、それを知る者はいない。  それを知るものは全員異形であり人間ではなくなってしまったのだから。 『……まさか世界から別れることになるとは思わなかった』 『まあ俺は人間にも社会にもうんざりしてたからこっちの方が気楽でいいぜ』 『私もだ。もうあのような親に縛られる生活も不自由な生活もごめんだ』 『君達、そろそろ着くよ。僕のトモダチも待ってるよ。きっと二人を歓迎してくれるさ』 『ああ……』 『行こうぜ』 『ヴラド、ウェアル。来年のハロウィン、また行きたかったら言ってね。今度は僕とは別々だろうけど』 『ハロウィン終われば一緒になれんだから構わねえよ』 『ああ』  三人は世界に別れを告げ概念となる。  人間だった二人も、今やただの異形であり、それ以上でもそれ以下でも、それ以外でもなかった。 『みんな、ただいま。僕のトモダチ――』 chapter:Ⅵ エピローグ  まるで夢を見ているようだった。  俺はハロウィンの数日前に南瓜に犯された。  服を奪われ裸になって――その後も何も抗えずにあんな恥ずかしい服を着せられた。  それなのに俺は気持ち良くて、耐えきれなくてイっちまった。  するとどうだろう。  身体が縮んでいくのだ。  頭の中に『射精した精子の中に君の年齢が入っているんだよ』という台詞が植え付けられたような気がした。  抗おうとしても気持ち良くて駄目だった。どんどん年齢が出ていって、高校生、中学生、小学生、幼稚園児とどんどん俺は幼くなっていって、いつのまにか赤子同様にまで年齢は引き下げられていた。  それよりも怖かったのはチンポが射精するたびに小さくなって小ちゃくなって、段々子どものおちんちんになっていくことだった。  気持ちよくイクたびにチンポがグリグリムリムリと埋れてどんどん小さくなっていく感覚。小さい子どもちんちんが気持ちよくてさらに射精しちまうんだ。あんな奇妙な感覚もう味わいたくない。  体はガキの王子様なのに心は大人のままだ。しかも自慢のイチモツもあんな情けないおちんちんにされたんだ。俺の心は完全にズタズタされたよ。  そのまま無邪気な何かが入ってきて抗おうにも抗う気も起きずそのままフッと意識が消えて――気がついたら南瓜に襲われる前の状態でゴミだらけの道路に寝ていた。  このまま身体を返してくれなかったらどうなっていたのだろうか。考えただけでも恐ろしい。  そして今日は――  2116年の10月だ。  そう、もうすぐ次のハロウィンなのだ。  今度はもうあの南瓜は見ることはなかった。  次は別のところに行ったのだろうか。  それとももう来ないのだろうか。  もし前者なのだとしたら――  俺のように南瓜に犯されてカボチャの王子様にされちまうやつが、出るのだろう。 chapter:Ⅶ ――――  ――  ……。  ……来た。  ふうん。  次はこの人間か。  ヴラドはルーマニア。ウェアルはアメリカに行くんだって。  ってことはまたバラバラなんだね。今日のトモダチは6人、ってところかな。  あ、僕はジャックね。  へー、なんか小説をずっと見てる。 そこまで多い内容じゃなさそうだけど。  さて。  じゃあ次はこの小説を読んでいる人間。君の身体を借りさせてもらおうかな―― Happy Halooween!!


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