SamSuka
Jin(鬼頭ジン)
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悪魔の呪い

  1  俺、大門亜鬼羅は今、図書館に来ていた。  ここはうちの町内でも一回り大きい図書館で、話では昔の書物や魔術的なものもあるとの噂だった。 だからこそ、だ。俺がこの図書館にやってきたのは。 「……無駄だとは分かってるけど、探してみるか」  俺が何故ここへ来たかというと、それは復讐のためだ。  俺は、あいつが憎い。俺の同じクラスで友人の亜心真人が。  昔からあいつは何でもできた。俺よりも、誰よりも。  一応、友人という括りではあるが、あいつは俺のことなんてどうせ何も思ってないに違いない。そう思うと無性に腹が立つ。  いつからだろうか。俺があいつを意識しはじめたのは。  最初はただの友人だと思ってた。でも、あいつと一緒にいるにつれ、あいつにむかっ腹が立っていたんだ。  スポーツ万能な癖に勉強もそこそこにできる。俺はあいつに嫉妬しているのかも、いや、そうなのだ。  でも、あいつを見返す……いや、復讐しないと俺の怒りは収まらない。おかげで、ここ数ヶ月、あいつの事しか考えられない。  俺は友達がいるほうではあるが、あいつはもっといる。ここでも俺はあいつに負けている。友達と話してても、あいつが他の友達と仲良くしているのを見ると無性に腹が立つんだ。なんか、こう、心の中からどす黒い何かが燃え上がってくるような感覚。完全に嫉妬だった。  俺も友達といるはずなのに、なぜかあいつの事しか考えられなくて、辛かった。だからこそ、俺はあいつを消して、すっきりしたい。しかし、殺すとか傷つけるとか、後々面倒になる事はしたくない。だから魔術だとか悪魔だとか眉唾なものに頼ろうとしたのだろう。  まあ眉唾ものは眉唾もの。いくら噂だとはいえ、ほとんど期待はしていなかったのだが。  しかし、俺は、見つけた。  その、悪魔の本を。  まさか本当に見つかるとは思っていなかったし、何より実在する事にとても驚いた。ただ、見せかけだけで偽物なのかもしれないし、そういうジョークグッズの類であるかもしれない。  しかし、これでもしあいつに復讐できるのなら……そう考えると俺は馬鹿らしいことも本気でやってのけることができた。  そして、俺は悪魔召喚の呪文を唱えた。  すると―― 「私を呼んだのは、貴様か?」  本から黒い霧と共に悪魔が現れた。  まさか本物だったとは。あの本も、悪魔の噂も。 「ああ」 「久々に私を解放してくれた礼だ。何でも一つだけ願いを叶えてやろう。特別だぞ」 「……本当だな」 「ああ。悪魔は嘘をつかぬ」  俺は本当についている。これで俺は復讐ができる。  これで否が応でもあいつは俺を注目せざるを得なくなるだろう。それが何より嬉しかった。  そして俺は、悪魔に全てを話した。 「なるほど……復讐がしたい、か。  ……よかろう。しかと聞き受けた。ならばそいつは悪魔にしてしまおうか。  貴様もあいつが悪魔になれば、奴はさぞかし絶望するだろうよ。それで復讐になるだろう?  しかし、対価として貴様の魂を貰うぞ。よいな?」  悪魔は、すましながらそう言った。『魂を貰う』……またありきたりなフレーズだ。  まあ、友人に復讐なんてする時点で、俺にはもう魂なんてないも同然なんだけどな。 「分かった」 「クク……契約成立だ」  そして、俺は悪魔と共に真人の前へと現れた。  真人への復讐をするため。そして、あいつの人間としての最期を見届けるため。   2 「よう……真人」 「おっ、亜鬼羅。今日はど……うっ」  言葉を言い終わる前に、真人の体が跳ねた。  変化が、はじまった。 「ああっ、なんだ……身体が」  真人の身体が、なにやら音を立て始め、変わっていく。  真人は、もうすぐ悪魔になる。これで、あいつへの復讐は終わる。  俺は、その友人が変わっていくさまを、ただ見ているだけだった。  真人の身体は、まず強靭な肉体へと変わっていった。  比較的細身だった真人の肉体は、筋肉が盛り上がり、一気に筋肉質になる。  そういえば、契約した悪魔もそんな肉体をしていた。悪魔は全員筋肉質なのだろうか? いや、あくまで男限定での話だが。  バキバキと、奇妙な音がして、真人の頭から角が生えていく。漆黒に光る悪魔の角が。  髪も急激なスピードで抜け落ち、あっという間に真人の頭の髪は、全てなくなってしまった。  皮膚の色は、肌色から段々と黒に近い紫に。纏っていた衣服は、全て黒い霧となり散っていった。  爪は獣のように鋭くなり、目は金色、虹彩は縦になり、犬歯は鋭く伸びたちまち牙へと変わる。  気がつけばそこには、全裸の、翼と尻尾のない悪魔の姿があった。  昨日契約した悪魔と、翼と尻尾がないことを除けば非常にそっくりだった。 「……本当に悪魔になった」  ほとんど半信半疑だった。しかしそれは全部現実のものとなった。  俺の友達……いや、復讐の相手、亜心真人は、あっという間に悪魔へと変貌を遂げていた。  実際、俺の目の前に悪魔がいる。それは現実であり、俺が一人の人間を悪魔へと変えたという事実でもあった。 「亜鬼羅! これはいったいなんなんだ! 俺のカラダが……」  真人は戸惑っている。  まあ、当然だろう。急に自分の身体が悪魔へと変貌してしまったのだから。  正直言って、これを望んだ俺でさえ、戸惑っているのだから。 「俺……こんなカラダ嫌だブルルルッアウルリュップルプルフルプルブルルルルゥ」  何故か、真人がセリフを言い終わる前に、奇声を発しはじめた。  どうやら様子がおかしい。  唇を震わせ、頭を色々な方向へ振り回している。  身体も小刻みに震え、手足をぶらぶらと振っていた。  まるで何かを拒否し、抗っているかのようだった。 「……ありがとう。私のカラダを提供してくれて」  真人は、暴れていた身体を急に大人しくさせると、恐ろしく低い声に変わり全く違う口調でそう言った。  そこには、俺と契約したはずの、”あの悪魔“がいた。  翼や尻尾こそないものの、顔と声と雰囲気は、あの悪魔そのものだった。   3 「実はな。この契約は私の肉体となる人間の生贄を提供するというものでもあったのだよ。つまりは、だ。貴様の友人は私自身に姿を変えられたということなのだ。  貴様も真人が『いなくなってほしい』と、そう願っていたはずであろう?」 「まさか。そんな事聞いてない」  真人が、悪魔に?  身体を乗っ取られる、という事なのか?  お、俺はあいつに復讐できればそれでよかったんだ。存在を消してほしいとまでは願ってない!  そんな事を考えていた俺を尻目に、悪魔は冷徹に言い放った。 「言っておらんかったのだから当然だろう。  この身体から翼と尾が生まれ、奴の睾丸の中の精子を全て抜けば完了だ。奴の精神も完全に消え、亜心真人は私になる。  次に私が出たら、奴の体に翼と尾が生まれ始めるだろう。その時射精し、その度に亜心真人の精神は精子と共に消えていく。  しかしまあ、この射精一発で常人の睾丸は空っぽになるほどに排出される。亜心真人を感傷に誘う時間すら与えんよ」  精子を抜く? ずっと射精させられるということなのか?  つまり、真人のキンタマが空っぽになる時が、あいつが消える時であり、悪魔の最終目的なのだ。  そこで俺はすべてを悟っていた。  俺は騙されていたんだ。あの悪魔に。  俺に、この世界での依り代を提供させるために、悪魔は俺を、真人を利用していたんだ。 「どうだ、絶望したろう? 亜心真人よ。貴様の目の前にいる貴様の親友、大門亜鬼羅が貴様をこんなカラダに変えた犯人だブララリリリルルルルレレレレレロロロロロロ」  長話を終えると、悪魔は再び身体を震わせる。  するとその顔が、俺のよく知っている真人のものになった。  金色の瞳と鋭く伸びた牙はそのままだったが、真人の雰囲気は残っていた。 「亜鬼羅……何で俺を、ウアアアアアァ!」  と、その瞬間、真人の身体に悪魔の翼と悪魔の尻尾が誕生した。  その反動で、大きく長く、恐ろしいほどに勃起した紫色の男根からは、勢いよく精子が飛び出た。  いい感じに濁った真っ白の精子が。 「……ふむ、白か。まだ睾丸の中の精子は人間のモノのままのようだな。  悪魔の精子は紫色をしている。まだヒトの精子は抜けきってはいないということンオルルルゥブプルルリュルリュリュリュルルルッ」  また悪魔の身体は小刻みに震えて変な声を漏らす。  悪魔の翼と尻尾は引っ込み、人格もまた真人のものに戻っていた。  どうやら真人は悪魔の支配に抗っているらしく、悪魔と真人の人格が行ったり来たりしている。  その度に声や身体が震え、暴れている。  その姿に俺は、何故か興奮していた。 「教えてくれよ! 亜鬼羅はどうして、俺を悪魔にしたんだ!  なにかあったんなら俺が相談プルルルンッあ、いやだ! あくま! おれのなかからでていブルッブルッやめブルルルルいやだブリュッおれはプルルあくまになりたくブルルルララルルブリュッリュッルルルルゥ」  人格と人格がせめぎ合い、悪魔の形をした真人の身体は弄ばれる。  真人は悪魔の人格ジャックに抵抗していたものの、人格は乗っ取られ、再び翼と尻尾が誕生した。  また、同じように悪魔の力で、人間の限界以上にグロテスクに巨大化した自身の男根から白濁液が勢いよく噴射される。  真人の顔は、身体を乗っ取られるかもしれない恐怖に怯える顔と、悪魔の力で無理やり感じさせられている快楽に善がる笑顔の、ふたつの感情が入り混じった、奇妙な表情と化していた。 「くっ、まだ睾丸の中の精子が枯れんとは、意外に粘るな。思ったよりも亜心真人の精神が強いようだ。身体を繋いで解った事だが、彼が絶倫なのも、理由の一つのようだなブリュルルゥ亜鬼羅っ、俺はお前をブルルルッブリュッブリュッしぶといな……そろそろ諦めたらどブルルルルルリャァッゥごめんなっ、おまえのきもちもわかってやんなくてっフルルルええい! まだ消えんのかブルルリュルやめろっ、おれは、まだ、あきらに、うっ、でるっ、せいしがでるっ、ウッ……くっ、このままでは埒が明かんブルルルゥ」  悪魔と真人は、入れ替わりを繰り返していた。  心が入れ替わるたびに身体が震え、翼と尻尾が出し入れされ、そして何度も何度も射精した。  その人格交代に悶える二人の姿を見ていると、興奮がさらに上乗せされてイく。頭がボーっとして、淫乱な気分になってゆく。  俺のズボンは、無意識にテントを広げていた。 「ブリュルルルルルルルゥァッ!…………仕方ない。貴様は最期に大門亜鬼羅と話す機会をやろう。精々最期の戯言を垂れ流すがよい。  私は身この体を使って全ての精子を抜く事にするブルルルッルゥ」  悪魔はそう言うと、また体を震えさせ、人格を交代した。  顔だけはアイツのものに戻り、翼と尻尾も再び引っ込んだ。  しかし、バットサイズに勃起したペニスだけは変わらず、精子と、今でも流れ続けている透明でサラサラとした大量の我慢汁で、その先っぽを滑らせていた。  その姿は一種のエロティシズムすら感じさせている。  俺は無意識に、パンツの上からチンポを扱いていた。 「あぁ……悪魔が……悪魔が俺のチンポを扱いてる……」  真人は、うわ言でそう言った。  顔からは大量の涙と鼻水と涎を流し、顔をぐちゃぐちゃに汚している。顔は快楽により薄ら笑いを浮かべていたが。  ふと真人の下半身を見ると、大きな両手で、その巨大なペニスを一心不乱に扱いていた。  それはどうやら、真人の意思を無視して動いているようで、悪魔は体のみを支配しているのだとわかった。  おそらく悪魔は、”自ら“の自慰行為でヒトの精子を全て抜こうとしているのだろう。 「あっ……亜鬼羅、あの悪魔のオナニー、す、すごくきもちいいんだ……あんっ」  真人は、いや、悪魔は両手で摩るようにその肉棒を上下に動かしていた。あれだけ大きいモノだからこそできる芸当だろう。  悪魔でもこの快感はとても悦いものなのだろうか、その身体は小刻みにピクンと震えている。  俺の肉棒を扱く手も、それに呼応するかのように動きが早くなる。つい俺もイッてしまいそうだ。 「うあっ、……たぶんおれはっ、次の射精でヒトじゃなくなるっ……  だからっ、いまいっておきっハッ、ハァッ、たいんだっ、ウッ、ダメッ。イキソウッ」  真人が何か言っている。  今更何を言おうというんだ。もうすでに手遅れなのに。  しかし、あんなに憎んでいたはずだったのに。復讐したかったはずなのに。  俺は、あいつが、亜心真人が消える事をいい事として認識していなかった。  俺は、本当は、真人に消えてほしくなかったとでもいうのか?  じゃあ、あの、前までの苛立ちはなんだったのだろう。それを今思い返すと虚しくなってくるようだった。  でも、あいつが、快感に悶えて、悪魔に抗っている姿を見ていると、興奮がさらに加速してゆく。それはもう、この姿と声だけで、オカズになるぐらいには。  俺は男で興奮するような、そんな性癖は持ち合わせてはいなかったはずなのに、今はこいつの事しか、考えられない。  そうか、もしかしたら――。 「亜鬼羅……俺が悪魔になってもっ、ああっ! やめっ、ろっ!  ……俺の、ハァ、ハッ、フッ、ことっ、忘れ……ハッ、ないでっ、ウッ、ダメだっ、イくっ……アゥアアゥアアアァアァ!」  『俺のこと忘れないで』――  それが真人が真人としての最期の言葉になった。  真人が叫びをあげたその瞬間、背中と臀部から勢いよく翼と尻尾が飛び出してきた。  ズルルルルッと粘液を纏いながら、根元まで新たな部位が広がっていく。  完全に生えたのだろうか。限界まで翼と尻尾が飛び出ると、それは纏った粘液を撒き散らしながらバタバタと暴れ出し、数秒後におとなしくなった。  そしてこれ以降、彼の身体から翼と尻尾が引っ込むことは二度となかった。  その真人の、気持ち悪くも美しささえ感じさせる姿を見た瞬間、俺は絶頂を迎えた。  パンツがみるみるうちに精子で濡れていった。  一方、真人は翼と尻尾が定着したその反動と絶頂により、ペニスから白い精液が、塊のように大量に溢れ出した。  精子は数時間延々と出続け、その後白く大きな塊が、ふたつ巨大な悪魔のペニスから、狭い鈴口を無理やり割ってポコッと音を立てて排出された。  俺はそれがヒトの精子の『素』だと、すぐに理解できた。 「あ……ああっ……き……っ…………ふぅ」  最初はそれを見て驚愕していただけだった真人の顔が、射精後はやりきった恍惚の表情へと変わっていた。  俺の友人だった亜心真人は消え去り、そこには悪魔だけが残った。 「ふぅ。やっと奴は消えたよ。おっと、存在も消してしまったから忘れてしまった」  真人が、いなくなった。  存在ごと抹消されたらしく、悪魔ももうすでに真人の事は覚えていなかった。  悪魔は、奴が消えた事が真実であると、それをオナニーひとつで証明してやると、両手でペニスを扱き自慰行為をはじめた。  その動きは、真人がまだ残っていた頃と同じ動きだった。 「あぁ……うっ」  悪魔が唸ると、ペニスから紫色に光る精子がビュッと勢い良く飛び出た。  真人が出した大量の精をいとも簡単に塗りつぶすかのような、禍々しき原色の、それでいてさらに大量の精子が、悪魔のペニスから飛び出ていた。  ピュッ、ピュッ、ピュッ、ピューッと、勢いよく。  やはりヒトの精子は全て抜かれていて、代わりに悪魔の精子が睾丸の中に作られていた。  そして、その紫の精子は、唯一真人が存在した証であった白の精子をあっという間に全て更新してしまった。  こうして、真人が存在していた事を示すものは全てなくなってしまった。  人間、亜心真人はいなくなった。  代わりに、白昼堂々道端で自らの精をぶちまける、変態じみた悪魔だけが残ったのだった。  友達が消えゆく様を見ながら射精した俺が言う事ではないが。 「クク……やはり久々のカラダは気持ちがよい。封印されてからずっと思念体のままだったからな。  思念体だと性欲の処理もできぬ、淫魔の私だとなおさらだ。まあ、俺が身体を乗っ取っても迷惑にならぬよう、元の身体の人間の存在は抹消したがな。  さて、彼は終わったし……次は貴様の番だ」  悪魔は、俺を見てそう言った。  次は……俺の番?  俺の、ってどういう意味だ?  俺はそう問いただそうとした。が、悪魔は「もう遅い」。そう言って長く伸びた爪をギラギラと見せつけるような、そんな悪魔の指をパチン。と鳴らした。  すると、今度は俺の身体に異変が起きていた。 「言ったであろう。貴様の魂を貰うと」  悪魔はそう言ったが、俺はそんな言葉は耳に届いていなかった。  なぜなら、俺は快感に悶えていたからだ。  身体が変容する、その快感に。   4 「ああっ……! うあっ!」  着ていた服が黒い霧となって消える。  瞬く間に全裸になった俺の身体は、筋肉が盛り上がり、皮膚も紫色に染まっていく。  俺の身体もあいつと同じ、悪魔へと変貌しているのだ。  髪が抜け落ち、角が生えた。  手と足の爪が伸び、瞳も縦の虹彩が入り色も金色になる。  歯が伸びて牙になり、大きな蝙蝠のような翼と、鏃のように先が鋭利に尖った悪魔の尻尾が生えていく。  仕上げにペニスがバットと同じぐらいまで大きくなり、俺は変身を終えた。 「貴様の人間としての魂は頂いた。貴様は今日から私の仲間だ。  私の名前はマイン。よろしく頼むぞ、アキラ」  俺も、あいつと同じ悪魔になってしまった。もう二度と戻る事もできないのだろう。  あいつと同じという事は、俺も淫魔なのだろうか。そう思えば思うほど、身も心も淫らになっていくようだった。  そういえば、何故存在を抹消されたはずなのに、俺だけが亜心真人のことを覚えているのだろうか。  やっぱり、俺は、真人の事を友達……いや、親友だと思っていたからなのだろうか。それとも、真人の最期の言葉のせいなのだろうか。  真人が消えた。そう思うと悲しくなってきて、俺は―― 「うっ、うっ、うあぁ……」 「おや、どうした。泣いているのか?」  俺は泣いていた。  それと同時に快感も感じていた。 目からは涙が溢れてきて、止まらない。  俺は、復讐したいとかなんだとか抜かしていた。なのに、やっぱり、俺は真人の事が大事だったのだ。  それを理解した途端、自分の馬鹿さと本当の気持ちに気づき、涙を流していた。  それと同時に、俺は、真人を愛していたのだとわかった。  真人が何でもできる事に腹が立ったのは、俺が真人よりもずっと下のほうに行ってしまって、対等でいることができなくなると思ったから。  真人が違う友達と仲良くしているのを見て腹が立ったのは、真人ではなく、友達に嫉妬していたからだったのだろう。  少なくとも、俺はそう思わなければ壊れてしまいそうだった。 「そう、だ……俺は真人が好きだったんだ」 「マサト……? 誰だそれは。  まあいい。アキラ。私を救ってくれた礼だ。俺と付き合えよ。  これも運命だったのだ……乗っ取ってた人間の身体を通した時から感じていた感情がいま何だったのかはっきりわかった。  アキラ。私は貴様が好きだ」  好きだ。  悪魔……いや、マインにそう言われているはずなのに、俺は、とても嬉しかった。  真人を奪ったこいつを、俺はなぜか好きになってしまったのだ。  真人はもういないから。マインになってしまったから、代わりにこいつを好きになった?  そんなわけはない。俺は今でも真人が好きなままだ。  じゃあなんで。俺は真人のカラダが目当てだったのか?  でも―― 「あ……ああっ……」 「どうした? アキラ」 「ああ、俺も、お前が、好きっだっ……あっ、うっ、俺と、俺と……付き合ってくれ……」  俺は、オナニーしながらマインに告白をしていた。  マイン、いや、真人を見ていると、俺はどうしようもない快感に苛まれていた。それをオナニーで、いや、射精で表すしか方法がないんだ。  全身が、心が、とても気持ちいい。  ペニスから我慢汁が溢れている。今にも白い……いや、違う、紫の邪悪な精子が出そうなほど、ギンギンにガチガチに固まっていた。 「よくぞ言ってくれた。私は嬉しい。それはそうと、射精しそうだな。したい時は我慢せずすればいいのだぞ?  そうだ。良ければ私のアナルの中にするか? そうすればアキラの気持ちが私に届くかもしれぬからな」  俺は何も言わず、マインのアナルにペニスを突き挿していた。断る理由なんて全くなかったから。  はじめてのアナルセックスだ。勿論そんな事したこともなかったし、何より男同士でヤリ合うなんてこと、はじめてだったのだ。  しかし、セックスは滞りなく進んだ。まるでこの身体がすべて覚えているかのようだった。 「あ……ああっ、いいぞ、アキラのチンポ……なかなか太くて気持ちいいぞ。さすが私が見込んだ男だ……」 「俺も、ケツの中がこんなに気持ちいいなんて……思わなかった……  もしかしたら、女の穴の中なんかより、ずっといいんじゃないか……」 「当然だ。私を、あっ、何だと思っている……淫魔だぞ……  女のモノなどより、ずっとよいに決まっているだろう」  グチュグチュと、ケツの中に分泌されている淫魔特有の粘液と、俺の我慢汁が混じり合ってとてもいやらしい音をたてている。  それはまるで、俺のペニスだけでなく、長く尖った悪魔の耳まで犯しているようだった。  俺のペニスが、マインのケツマンコと絡み合い、とてもよい刺激がペニスから感じられた。グチュグチュグチュグチュいっている。そのまま上下に動かすと、それがさらに増幅され、さらなる快感へと昇華されていく。  俺は、俺のチンポは、淫魔としてはじめての射精を迎えようとしていた。 「で、出る! 悪魔のザーメン出る!  マイン! しっかり俺の気持ちを受け止めてくれ!」 「分かっている……それが恋人としての務めだからな」  よかった。  これなら、俺の気持ちも届けられそうだ。  安堵した俺は全身の力を抜いていた。すると急にマインのケツの中が締まり、俺のペニスに、最大級の快感を与える。  そして俺は、マインの中に、悪魔としての、はじめてのザーメンを解放した。  さすが悪魔であり淫魔の精子。その量は大量で、物凄い臭いを発していた。 「ああ……アキラの思いが流れ込んでくるぞ! そ、そうだなっ……あっ!  私もっ! 俺もっ、お前のこと、亜鬼羅のこと忘れないから!  だからっ、俺は、俺はお前が好きだ! お前は俺の永遠の友達だからな! ああああっ!  私は、アキラを愛している!」  悪魔は快感に悶えながらそう言った。  一瞬、彼の口調が変わっていた。  それは、消えたはずの、俺の親友、亜心真人のものだった。  ケツの穴から紫色のザーメンが溢れ出てくる。俺の出す量が多すぎて外に出てきてしまったのだろう。  そして色も白から紫に変わっていることを確認し、俺は改めて自分が悪魔になっているということを自覚した。 「ふぅ……」 「……なかなか良かったぞ。次は私のチンポをアキラの中に挿れてやろう。気持ちよいぞ?」 「ああ、頼む」  今度は俺が逆にアナルの中に肉棒を挿れられていた。  尻の中だけじゃない。腹の芯から突かれるような感覚と、身体中の『快感』を刺激されるような感覚に、俺は即絶頂を迎えていた。 「おううっ!」  しばらくして、俺の中にじんわりと暖かいものが滾った。マインが俺の中にザーメンを出したのだろう。  その瞬間、俺の頭の中にマインの想いが流れた。  それは、俺を好きという気持ちのみで構成されていて、俺はそれに嬉しさと快感を感じていた。  と同時に、身体中から快感の電流が走り、俺もザーメンをペニスからぶっ放していた。これが俗に言うトコロテンというヤツなのだろうか。 「ハァ、ハァ……届いたか、私の気持ち」 「ああ。好きだ、一緒にいたい。ってな」  こうして俺は、悪魔となり、マインとヒトの目を欺いて生きている。  俺は大門亜鬼羅、マインは真人の身体をした別人として、たまに悪魔として生活している。  今でもマインは俺の恋人で、真人は俺の大切な親友でかけがえのない存在だ。  マインは、もう俺の親友――身体の元の持ち主のことは覚えていない。  だが、俺の親友だった亜心真人のカラダとココロは今でもマインの中で生き続けている。  だから俺は悪魔とだって、悪魔になったって生きていける。  だって、悪魔は、俺の本当の想いを分からせてくれたのだから。  俺に最大級の快感を教えてくれたのだから。  ああ、本当にこのカラダは最高だ。  なあ、真人もそう思うだろう?  もちろん、マインのことも愛してるけどさ。真人を奪ったことは今でも許す気はないし、一生恨み続けるけれど。  まあ悪魔の命はほぼ永遠のようなもの。一生がどれだけあるのかはわからないけどな。  でもそのおかげで真人とずっと一緒にいられるのだ。寧ろ感謝したいくらいだ。  マイン。お前がいなくちゃ、俺が本当に愛していた俺の親友を一生恨み続けるところだったんだから。  そう。  これは、俺を本当の道へと導いてくれた――  悪魔の呪いだ。

悪魔の呪い

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