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Jin(鬼頭ジン)
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快楽に堕ちる夜(1/2)

「ガハハハ、さっさとイッちまいな。新しい世界が見えてくんぜ?」 「うあっ……あっ……やめろ……!」  夜の街。  その影の、人気のないそこでは、日夜快楽の宴が行われていた。  そこには人間と怪物と、大量の兵士たち。今は、強大な悪の塊のその指に、自らの排泄器官を開発(ほじく)られている哀れな被害者の姿があった。  男の名は八武貴唯(やたけ たかただ)。その街では有名な某底辺校の生徒で、その日は親とのトラブルで家を抜け出していた、その最中だった。  彼はこの街を恐怖に陥れている悪の塊、怪人組織『エビルマ』の王「ダーティキング」にそんなところを偶然発見され犯されることになったのだった。それは本当に偶然で、彼は本当の本当に不幸だった、と言えるだろう。いやむしろ、”あちら側“からしたら、幸運とカテゴライズされるような出来事なのだろうが。 「ふざっ……んな! やだ! 俺、イキたく、いいっ!」  貴唯は、常人にしては珍しく、ダーティキングの責めに長い間耐え続けていた。それを見たダーティキングは何かを感じたのだろう。にやついた顔をさらににやつかせると、貴唯のアナルに突っ込んでいた片指を勢い良く引っこ抜いた。 「う、うっ! な、何、してやがんだ、テメ……」  ふと、後ろを見ると、ちらっと指を何かに差し込んでいるダーティキングの姿が見えた。うめき声、ほんの少し荒くなった息遣い。それらがダーティキングの裂けた口から聴こえる。 「……なかなか見上げた根性じゃねえか。なら、一階級特進させてやる。お前はいい兵士になるぜ。きっと……」  そんな事を口にしたダーティキング。貴唯はそんなもの死んでもごめんだ。と、心の中で毒吐いた。そんななか、貴唯の瞳には、一筋の黒い放物線が映った。その放物線は、ダーティキングの腹、膝、腕に移動し”染み“を作った。 「さて、ほんのちょっと”俺様“を分けてやる。ありがたく思え……」  ダーティキングはそう言うと、”染み“に指を擦り付けると、ふたたび貴唯のアナルにそれを突っ込んだ! 「あ、がっ……!?」  その瞬間、貴唯が感じたものは、はじめての感覚と快感、そして二度と戻らないであろう、邪悪精液の感触だった。 (なんだこれ、キモチイイ……!)  抵抗のあった貴唯の脳に信号を送り込む。(善がれ)。(キモチよくなれ)。(俺様達と共に)。そんな、快感と教育を兼ねたそんな都合の良い信号。いくら責めを耐えたからといって結局は貴唯はニンゲン。ニンゲンの脆弱な脳には、悪の王の快感信号には到底敵わない。あれだけ責めを耐えていた時とはうってかわって、彼はすぐに堕ちてしまった。それはまるで、崖で掴んでいた細い枝が折れ、崖下へと真っ逆さまに急降下していくようだった。 「あ、ああ……俺……」  貴唯の体中に、真っ白な精液がこびりついている。エビルマの邪悪精液は黒一色であるために、彼らのものでない事はすぐに伺えるだろう。つまりこれは全て、彼自身が蒔いた種である。  もう彼は戻れなかった。一度悪への崖っぷちから崩れ落ちれば、獅子でも這い上がることはできない。そんな暗く黒く、そしてとてつもなく心地の良い真っ暗闇へと、貴唯の精神は呑み込まれていった。 (俺……やべぇ、俺がどんどん呑まれていっちまう……何してたんだっけ、俺……  そうだ、してたんだ。セックスしてたんだ。活動してたんだ。キモチイイこと、してたんだ。  俺は、誰だっけ? あれ? あ、この人は、様だ。ダーティキング様だ。俺が、俺を作ってくれた、王だ、主だ。  そうだ、俺はこの人に呑み込まれるために生まれてきたんだ。そうだ、俺の名前は……) 「エビルマン、ダーティキング様の下僕、改造兵のエビルマン!」  気がつくと、八武貴唯の姿は、全身黒のタイツに灰色のグローブとブーツ。そして悪魔の顔のような、そんな不気味な覆面に包まれた、改造兵エビルマンのものとなっていた。  それは周りにいるダーティキングの下僕。有象無象。そしてそれぞれの個性や感情を持った改造兵の群れとまったく同じ姿でもあった。 「ガハハハ、気分はどうだ?」 「最高の気分です。俺はこの闇に包まれるために生まれてきたのやもしれません。そしてその包まれる闇は、あなたこそ相応しい。この体はダーティキング様のために……」  敬礼しながら嬉々として感謝の言葉をつらつらと述べる改造兵。その姿は数分前、悪の王の責めに抗っていた不良少年の面影を微塵も感じさせないものであった。  そのままダーティキングの前に跪くと、微動だにしなくなった。実は彼の変化はこれで終わりではなかったのだ。 「ガハハハ、お前はエビルマンじゃねえよ。一回級特進。ほんの少しだが俺を入れてやったんだ。もう少しで始まるぜぇ……」 「え……うっ……!?」  貴唯だったエビルマンが一言呻くと、ピクリと一瞬激しく揺れる。そのまま手も使わずに一人でに黒の精液を発射した。 「あ、あ、ああ……!」  ブルブル震えるエビルマンの臀部に、何やら変化が見えはじめているようだった。タイツの尾骶骨部分あたりから何か別のものが伸びはじめていた。それは先端が鋭利になると、さらに縦に質量を増しはじめる。それがキモチよいのか、エビルマンは呻きながらひとりでに、たて続けに射精していた。  それは尻尾だった。先が矢尻のように尖った悪魔のような尻尾。成長が収まると射精もすぐに止んだ。そこには、立派な尻尾をこさえたエビルマンの姿があった。 「お前は強化改造兵、ネオ・エビルマンだ。俺様直属の改造兵の第二形態ってとこだなァ。働きに期待してるぞ……」 「ありがたき幸せ。私ネオ・エビルマン。ダーティキング様のために全てを捧げることを誓います」  エビルマン改めネオ・エビルマンは、さらに深く跪くと、ダーティキングの後ろへ付き、エビルマンを先導しながら棲家へ向かっていった。  そしてそこが、ネオ・エビルマンの最初で永遠の楽園となるのだった。 ● 「……レイジーオーガ様」 「ふぁ、何だぁ?」  その日の夜、ダーティキングが人間達を堕としている時のこと。エビルマ最高幹部でありダーティキング第一の幹部でもある鬼怪人、「レイジーオーガ」がいつものように惰眠を貪っていた。 「ずっと寝ていられては困ります。本日こそは」 「オレはダーティキング様の命令しかきかねえっつってんだろ、うっせえな。  それ以外のヤツの命令きくのはめんどくせぇんだよ」 「しかし」 「なんか文句でもあんのか? オレはダーティキング様みてぇに優しくねえぞ?」 「……いえ、何でもありません。申し訳ありませんでした」  どうやら部下の一人であるエビルマンがレイジーオーガにも活動するよう説得しているようだった。が、しかし、彼が信奉するのは王ダーティキングただ一人であり、それ以外の命令には耳を貸そうともしていないのだった。  彼に変えられ永遠の快感を植え付けられた元ヒーローの怪人は、怠惰の塊であった。  やりたくないことはやらない。面倒なことはしない。毎日を怠けて過ごし快楽を貪る。それだけが生きがいであった。しかし自らが崇拝し信頼している王の命令だけは聞くのだが。  大欠伸をかましながらレイジーオーガは大の字で寝そべる。そこには恥ずかしげもなく緑色の巨大ペニスが塔のように聳え立っていた。 「どうすりゃいいんだ……ダーティキング様はあれだけレイジーオーガ様に信頼を置いていたというのに……」  エビルマンはとぼとぼとレイジーオーガの前を後にする。まあ、説得に失敗したからといって何をされるわけでもないのだが。ダーティキングは自分の部下に危害を加えることは一切しない。部下の失態や汚点も自らが好む『悪』として全て受け入れてしまうからだ。そして何より共に堕ちる仲間が大事だから、であった。堕ちるならとことん悪へ、下へ堕ちてしまおう。それが彼なりの思想なのだろう。 「ダーティキング様からの命令はねぇし、別に俺が出る幕もねえってこった。ま、俺はこうやってキモチよくなってりゃいい……」  自由に怠惰に過ごしていたレイジーオーガ。だったが、彼の怠惰なひと時はすぐに妨害されることになる。 ◯ 「浄は、まだ見つかってないのか?」 「はい、すみません師匠」 「そうか……英光も悔しがってたからな……浄と英光は、まるで兄弟みたいに仲が良かったしな」 「まるで俺と師匠みたいに、ですね」 「おぉ、言うなぁ! ハハハッ」  夜22時。ヒーロー事務所の一室に、二人の男がいた。  一人はマッシブヒーロー「ダークスマッシャー」と技巧ヒーロー「テクニカルハンドマン」。ダークスマッシャーは、驚異的なパワーで悪を鎮圧するヒーローであり、テクニカルハンドマンは、その巧みな指遣いで相手をイカせ悪の精液を根絶やしにするヒーローである。  その二人は、所謂師弟と呼ばれる関係であり、その仲は、まるで親子のようとまことしやかに、そして微笑ましく囁かれていたのだった。  ダークスマッシャーこと増田拓は、今年で50を迎えるものの、未だに衰えないその力を行使し猛威を振るっていた。その肉体は筋肉の塊であり、プロレスラー顔負けのマッシブな身体を持つパワフルな男の中の男だった。身体も毛深く、まさに男臭く、そして格好良く敵を倒す。そんな男の憧れのようなヒーローであった。そしてそんな自分自身も誇らしく思っていた。  対象的に、テクニカルハンドマンこと巧手支郎は、線が細く顔も端正に整っており、ミステリアスでクールな人物とも評価されていた。その容姿から女性にも人気があり、その手でイカされてみたい……などと不埒な言葉をのたまう輩もいるという。  そんな支郎は、まだ15歳であった十年前の頃から拓に師事を受け、今や立派なヒーローとしてその名を轟かせ、師匠の拓とは、有名な師弟コンビでもあった。 「ここまで来るのに色々あったものだな」 「ええ……」 ◯  それは想い出。  二人が出会い、共に戦い、そして積み上げてきた記憶。と、絆。 「危なかったな……大丈夫だったか?」 「あ、ああ……」 「俺を弟子にしてください! あれから俺、ヒーローになるため努力してきたんです! あなたを目標にして……だから!」 「やめておけ。お前はまだ若すぎる。エビルマと戦うのはあまりにも酷だ」 「お願いします! あなたの指示することは何でも聞きます! あなたと一緒にヒーローがしたいんです! お願いします!」 「……そんなに言われちゃあしゃあないか。しかし、ヒーローってのは生半可なもんじゃねえんだぞ。それだけは覚悟しとけ」 「はい! ありがとうございます!」 「大丈夫だったか?」 「はい、なんとか」 「支郎。よく見とけよ。これが戦いだ」 「師匠……」 「お前、見違えたな」 「そう、ですか?」 「ああ、もうすっかりヒーローの顔つきじゃねえか。見違えたぜ」 「あ……ありがとうございます! 師匠!」 「大丈夫、ですか?」 「ああ……なんとか、な」 「何ともなくて……良かった」 「……お前、成長したな。俺が守られちまうとは……師匠失格。だよな……」 「そんなこと。そんなこと……ないです。俺は、俺は……  師匠に会えて、良かった」 ◯ 「お前も本当によく成長したな。あの青臭いガキの頃が懐かしいぜ」 「よしてください。俺もあの頃は若かったんですから」  他愛のない過去の回想を肴にしながらお互いの絆を語り合う。そんな時間。師匠と弟子の、そんなかけがえのない時間。  しかし、その時間も長くは続かなかった―― ビコーン、ビコーン! 『○○地区にエビルマの反応あり、至急現場に急行せよ』  アラームが鳴った。  エビルマが近くにいる。そして、また人の心を脅かそうとしている。そうなれば、当然行くしかなかった。 「ちっ……行くぞ、支郎! 今すぐ準備しろ!」 「ハイ師匠!」  しかし彼らはこの時まったく知らなかった。はじめて出会う上の脅威に。  そして、新たに出会う強大な存在に……  なぜなら、彼らが戦っていたのは、全て改造兵だけであったからだ。  奴らと戦ったのは出野浄を含めごくわずかだったこと。そして幹部の存在は、今年初めて奴が見初めた存在であったこと。これが、二人を思いもよらぬ運命に引きずりこんでしまう――


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