はじめに
Ver.T(虎獣人TF編)は無料公開です。
【台詞回しや展開が少し異なっているVer.D(龍人TF編)はスペシャルプラン限定コンテンツとなります。】
これは、今より少し先の未来の話――
世界の科学力は更なる発展の一途を辿っていた。
さまざまな電子機器は進化を遂げ、人類の生活はさらに利便化され、今やそれが当たり前となっていた。
そしてそれは、娯楽も例外ではない。
「ただいまー!」
ごく普通の家庭で育った中学生の少女、竜田大河(たつた たいが)。彼女は放課後になると、寄り道もせずまっすぐに家へと帰っていた。
大河は部活にも入っておらず、いわゆる帰宅部というカテゴリに分類される生徒である。しかし学校での素行も成績もごく普通の女子中学生といったもので、特筆すべき特徴はなかった。
そんな彼女が今は嵌っているものは、ゲームである。それも、現代の技術で数十年前にとうとう完璧に実現したVR・RPGゲームだ。
VRゲーム自体は、過去に擬似的なものが発表されていて、しかしそれはあくまでゲームの中にいるように感じるだけで、実際にゲーム内に入り込めるわけではなかった。
しかし最新の科学技術により、精神をデータ化しゲーム内に移動させることができるようになり、VRゲームの需要が一気に高まることとなった。今や発売されているゲームの大半がVRであるほどだ。
かつて時代を席巻していたゲームは、VRの魅力に取り憑かれた人類により、マニア以外は見向きもしない状況となっていて、ゲームが好きな人間には些か不満が募る結果となったのは功罪と言えるだろうが。
『ニュースをお知らせします。南米にて新たな鉱石が発掘されました』
「うわ凄い。綺麗な宝石になったりするのかなー」
この技術は、医療技術(直接人体に入り、異常を確認したり細かな分析をする)や発掘(地層の状況を把握する)においても応用された。これにより、世界のあらゆる技術はさらに発展した。
世界を揺るがしたVR技術――
しかしそれは、知られざる弱点もあった……
「さーて、今日も頑張るぞ」
大河はVR機器を装着し、ゲームを起動した。そのゲームはMMORPG『エターナル・ワールド』。世界中の人間達とゲームの中の永遠の世界を共にするというテーマからこのタイトルが名付けられた人気作である。
舞台はシンプルなファンタジー世界で、プレイヤーは冒険者として人間、それだけでなく獣人や魔人、妖精や天使など、様々な種族になりきることができ、全く異なる自分になれると好評であった。
しかし、過去にあまりにゲームにのめり込み過ぎて現実と虚構の境が曖昧になるという事件が起きてからは、“ダイブ系”VRには一日通算6時間までプレイができ、それ以上のプレイはできなくなる(6時間経過で自動的にログアウトされ、次のログインが有効になるのは次の日の朝8時以降)仕様となった。
それでも“ダイブ系”人気は衰えることを知らず、熱中する人間が増え続けている。人間の精神を担保にするため、デバッグも万全。誰でも安心安全に二次元の世界を謳歌できる夢のようなゲームであった。
――そのはず、だったのだが。
いや、今でも『バグ修正プログラム』により“世界の平和”は守られ続けている。それは事実である。必ずしもそれは良いものとは限らない、といえことを除けば。
◆
★『ダーク』さんがログインしました。
ダーク:「さて、今日もモンスター討伐して経験値稼がなきゃ」
大河は、この世界ではダークという名前だ。個人情報保護法により本名でのプレイは基本的に禁止されているためユーザー独自の名前でプレイしなくてはならないためである。そもそも彼女は大河という男のような名前が好きではなかったので、かえって好都合だったのだが。
名前の由来は、好きなライトノベルの主人公の名前からそのまま取ったものだった。
ダーク:「ねえ、キミ! 今日のオススメのモンスターは何?」
魔法使い:「モンスター討伐に行くのね? うーん・・・今日はフォレストウルフ退治に高額の懸賞金がかけられているみたい」
彼女が話しかけているのは可愛らしい魔法使いだった。彼はゲーム運営が用意した架空のプレイヤー。いわゆる「NPC」である。
彼らはユーザーに有力な情報を提供したり、戦闘の助太刀などをして協力してくれる存在だった。
最新技術で進化した人工知能も、人間と遜色ないほどに違和感なく接してくれるため、まるでリアルの人間といるようだと評判だった。それでいて都合の悪い行動は例外を除いて起こさないため(例外とは、無用なPK・NPCK行為や窃盗・詐欺などの違反行為である)NPCに依存するユーザーも少なくないほどである。これにおいては一部で問題視されていたが。
ダーク:「フォレストウルフってあたしじゃまだ難しそうなんだよね」
ダークはステータスを確認する。
“ダイアモンドレイピア”や“シルフのスカート”というレアドロップアイテムを装備しているとしても、俊敏でなおかつ破壊力のあるフォレストウルフを相手にするには少し心許ないステータスだった。
しばらく考え込んでいたダークだったが、この戦士を頼ればいいやと半ば楽観的だった。
ダーク:「ねえ、一緒にフォレストウルフを倒してくれないかな? お礼はするから」
魔法使い:「ええ。大歓迎よ。私も懸賞金は欲しいしね。いっしょに戦いましょう!」
ダーク:「やった! ありがとうございます!」
このゲームには協力クエストクリア後にアイテムをNPCに渡す約束をすることでNPCのステータスを上昇させることができる『お礼システム』というものがあり、楽にゲームを進められなおかつ協力しているという実感を深めることのできるシステムだった。
レベルの低いうちはこのシステムを利用するユーザーが多く、ダーク(大河)もこの一人である。
ダーク:「よし、そうと決まれば出発!」
意気揚々とフォレストウルフを倒しに街を後にしようとするダーク。
しかし、その時、現実世界――彼女の部屋では異変が起きていた。
◆
――現実世界。
彼女は一人、機器を被りながらゲームの世界に没頭していた。だからこそ、気づくことはなかったのだ。
接続していたケーブルが、今にも抜けそうなことに。
彼女はゲームの中で楽しくお喋りしているものの、見ているのは架空の視界のみ。目の前のケーブルは見えてすらいない。そして――
ケーブルは、緩やかに接続部から抜けていった。
彼女が持っているVR機器は、トラブル対策のなされていない一世代前のものであった。家計的な意味で最新機種を買うことができなかったのだ。
そしてそれが彼女を襲う不幸となろうとは、彼女も想像しなかったことだろう。
「あっ!?」
突然、声を上げたと思った大河は、急に糸が切れたかのように倒れこんだ。起動されていたゲームはぷつりと切れ、テレビの画面は、どこまでも続く暗黒を映し出していた。
ゲームは強制終了され、普通なら彼女は強制的にログアウトするはずだ。だが解放された彼女が意識を取り戻すことはなかった。なぜなら――
◆
「うーん……」
そこは、ファンタジーの世界でも現実でもない世界。電子の粒が無数に流れる空間。そこに大河は漂っていた。『ダーク』としてのアバターの姿で。
大河の意識はない。今は眠っているのかうつらうつらと寝言のようなものを呟くだけだった。
しかしそんな大河の肉体に変化が起こり始めた。
ググ……と華奢な少女の姿が膨らんでいく。それは、少女を少女と呼べなくするほどの変化であった。いや、女性でも子供でもなくなるのだが。
腕や脚は空気を入れたかのように膨らみ、柔らかな肉が彼女の体を埋め尽くす。そして、脂肪の中にもたっぷりと強靭な筋肉も溜め込まれてゆく。
腹筋はボコリボコリとシックスパックを形成してから、溢れ出る脂肪によってすぐさまボヨンと太鼓腹と化してしまった。
下半身すらも、尻からかけてその全てがまるで空気入れによって風船が膨らむかのように脂肪と筋肉で覆われていった。背丈はゆうに2メートルを超えるであろう巨大さになっていた。
そして、雄大さと貫禄さをも持ち合わせてすらいた。
相撲取りのような体型と化してしまった大河だったが、彼女を更なる変化が襲う。
全身の角質が生え変わるようにポロポロとこぼれ落ちて、代わりと言わんばかりに深緑色に輝く艶やかな鱗で覆われていった。
可愛らしかった耳がずぶずぶと、ひとりでに体内へ消えていき、ヒレのようなものがその位置に新たに生えていた。
小さな口も、その体に似合うよう、長く大きく立派に伸びていく。鼻は大きく立派になり洞窟のような鼻の穴が目立ってしまっている。口を開けると全てを噛み砕いてしまいそうなほど鋭い牙がいくつも並んでいる。その姿は、まさしく龍そのものであった。
アバターを作成するときに決めたポニーテールがそのままふさふさとした髪質に変化していく。栗色だった髪の毛はいつも月の光を反射していそうなほどに淡く輝く銀色の髪になった。キューティクルは失われ、ぼさぼさの、まるで老人のような髪へと変化してしまった。口には顎髭が蓄えられまるで何年も生きてきたかのような貫禄を見せる。
スカートを破いて、長く太く立派な尻尾が生えると、彼女――いや、彼の変化はひとまず完了した。
何故か、彼は龍人となっていた。
◆
ダーク:「ん・・・あれ、あたし、寝ちゃってた・・・?」
大河は目を覚ます。そこは見慣れない小屋だった。
ボロボロのサンドバッグに食卓テーブル、それに大量の瓢箪が置いてある小さな木製の小屋。そこで彼はただ一人座っていた。
ダーク:「あれっ・・・なんであたしだけしかいないの? みんなは? 魔法使いさんは?」
キョロキョロと辺りを見回すが誰もいない。何故自分だけがここにいるのだろうと疑問に思うが、答えは返ってはこなかった。
ダーク:「うーん・・・全然体動かしてないのに、なんかダルくない・・・? っていうか疲れ感じないでしょこの世界」
ふと、自分の手を確認してみる。そこには、緑色の鱗に覆われたふくよかな腕があった。あれ? と大河は思った。
ダーク:「これ・・・どういうこと?」
全身をくまなく見ようと首を下に向ける。そこには、いつもの武器が装備された、龍人の、しかも男の体があった。
ダーク:「・・・は?」
その声は何年も年を重ねてきたかのような重厚な声で、大河は自分の祖父がこの小屋にいるのではないかという錯覚に見舞われた。
大河は、無言で鏡を覗き込む。それに映った姿は、まさしく、自分。
――には全く見えない、龍人の男の姿がそこにはあった。装備は変わっていないため、女装しているように見えひどく滑稽であった。
長い髪をまとめて辮髪にしたぼさぼさの銀髪と顔に鎮座するボリュームのある顎髭。脂肪と筋肉が詰まった丸々とした巨体に、身体中に覆われた翡翠の如き輝きを放つ鱗を纏っている。それが今の大河の姿であった。
ダーク:「きゃああああぁ!?」
大河は思わず絶叫した。しかしその声は嗄れていて、老人が断末魔をあげているようにしか聞こえなかった。
ダーク:「何よこれ!? なんであたしこんな姿になっちゃってるの!? 声もおじいちゃんになっちゃってるよぉ!」
唯一、大河から一つも変化がない瞳からは大粒の涙が溢れてくる。しかしこの姿ではただ女々しいだけだった。元は女なのに、そんなことを言われる筋合いは彼にはなかっただろうが。
ダーク:「もしかして、バグか何か・・・? 今あたしどうなってるの・・・? ステータスは・・・?」
大河は、自分のステータス画面を再度開いてみた。そこには、変わり果てた彼のステータスが書かれていた。
ダーク:「イヤアアアアア!」
ステータスはあらかた変化しており、性別は雄に、種族は龍人に、そしてジョブは、己の拳と魔法の力を武器にし、肉体一つでさまざまなモンスターと渡り合う武人“武闘家”に書き換えられていた。
装備品だけが元の彼女のまま残っているのが、逆にアンバランスだった。このままだと彼は女装趣味の変態龍老人である。
ダーク:「あたし、男の人になっちゃったよぉ・・・しかもこんな太ったおじいちゃんの体なんてイヤ・・・」
ダーク:「神様助けて・・・元に戻してよぉ・・・」
喉を枯らしながら変わり果てた声で泣きわめく大河。しかしその嗚咽は、ただ閑散な小屋に響くだけで、誰にも聞こえはしなかった。
彼女が、竜田大河がこうなってしまったのは、VR機器のケーブルが抜けてしまったために起きたバグだった。バグにより、彼女のアバター情報は、“内部データに存在する異なるデータ”と入れ替わってしまったのだ。
そのデータというのは、NPCのものだった。ゲーム内イベントに登場する歴戦の龍人武闘家、ロンというキャラクターの。
しかも本来のロンとは鱗の色や容姿に微妙な違いが見られた。大河そのもののデータを媒介にしたため混ざってしまったのだろうと推測できる。
ダーク:「誰か助けて・・・誰でもいいから・・・たすk」
システム:『データに不整合が存在するエリアを確認しました。位置――“デバッグルーム・ロンの家”』
ダーク:「うっ!?」
その時、大河の股ぐらがずきりと熱くなった。内側から込み上げるマグマのような快感。さらには天に昇りそうなほどふわふわとした感覚が大河を襲い始めた。
ダーク:「あ、あたしの体・・・一体どうなってr・・・ひっ!?」
スカートから急に飛び出たのは、赤くネチャリと勃ち上がった、棘付きの肉棒だった。龍人である、大河のペニスのはずだ。しかも年老いた体の割に性欲旺盛である。
ダーク:「もしかしてこれ、お縺。繧薙■繧!? ありえないよ! このゲーム、エッチなゲームじゃなかったはずなのに・・・いやっ! 気持ち悪い・・・あんっ」
怯える大河だったが、立て続けに襲い来る快感に腰が砕けてしまう。床に膝をついた大河は、そこから一歩も動けなくなってしまった。
システム:『“龍人武闘家・ロン”のデータに不整合が発生しています。このままではゲーム全体に支障をきたすため、即時『バグ修正プログラム』を起動します』
その音声とともに、大河の周りに不可思議な文字列が具現化されて漂い始める。
ダ繝シ繧ッ竜田螟ァ豐ウ繝ュ繝ウ:「なにこの文字・・・これ絶対よくないやつじゃん! それに嫌な予感がするっ!?」
ビン! と急に大河のペニスが跳ねた。カウパー汁が滝のように溢れ出し小屋を汚す。大河の身体の中は、未知なる快感でいっぱいになっていた。
システム:『ロンの肉体に、緊急的に“バグ除去パーツ”を装備させました。只今より、このゲームにおいて不必要な要素(バグ)を排除・修正いたします。ユーザーの皆様、ご安心くださいませ』
竜田大河:「ご安心って・・・あたしは全然安心してない・・・っていうか、これ元に戻してくれるの? きっと、そうなんだよね!?」
いつのまにかユーザーネームが彼女の本名になっていたことには、彼は気がついていなかった。そして、もう一つ彼は致命的な勘違いをしていた。
そのバグは、あくまでNPCであるロンのためのものということを。
ステータスに追加されたバグ除去パーツの位置により、大河はやはり立派で粘ついたペニスがそうあると確信した。そして、“それ”はとうとう大河の意思を無視して開始された!
竜田大河:「んおっ!?」
間抜けな叫び声とともに、ペニスから粘っこい粘液が発射された。それは真っ白でとてつもない臭いを放つ――精液とほぼ変わりないものであった。
リアルに最大限まで寄ったVRシステムは、どうやらデバッグを射精と認識したらしく、不要なデータを擬似的な精液に変換し排出することで実質上バグ修正を行ったことにしたらしいのだ。
この世界での射精の快感は、思考ルーチンのクラックのようなものであるため、感じれば感じるほどまともな思考が行えなくなるであろう。バグも抵抗ができなければ、ただの屑データでしかない。その点においては合理的と言えなくもなかった。
竜田大河:「だ、出しちゃった・・・邊セ蟄出しちゃった・・・あっ!?」
射精した途端、大河のマジックヘルムが煙のように消えてしまい、代わりに頭には立派に聳え立つ大きな角が生えていた。
竜田大河:「あ、あたしの装備品が! 元に戻してy・・・ああんっ!」
次の不具合(バグ)を排除するため大河のペニスはひとりでに射精を続ける。常人なら萎えてしまう量の精液がほとばしっているにも関わらず、ペニスは元気にビクビクと聳え立っている。さすがゲームの中と言うべきか。
竜田大河:「嫌! やめて! あたしの装備、全部違うのになっちゃうよ! こんな角邪魔だし、絶対にいらない! あたし、どんな装備になっちゃうの!? あっ、あんっ!」
大河の装備品は、例外なく全て、大河の射精と引き換えに龍人武闘家に似合う中華風の道着へと変わっていった。
竜田大河:「あ・・・ああ・・・」
大河の体には、いかにも武闘家らしく、そしてその肉体年齢に見合う装備品が着せられていた。黒い革で出来た妖しげな光を放つ小手、空色と緑色のコントラストが美しい立派な道着、足には白足袋と、天狗が履いているようなそこが高く大きな下駄が履かされていた。極め付けには股間をぎゅっと締めている真っ白な六尺褌。しかしペニス――バグ除去パーツはまだ役目を終えていないため褌からはみ出ており異様ないやらしさを醸し出している。
竜田大河:「元に戻して・・・こんなのやだ・・・パパ・・・ママ・・・」
弱々しく助けを呼ぶ声に反して体は既に構えを取っている。その姿には、歴戦の武闘家の威厳さえあった。褌からはみ出るペニスを除けば、だが。
システム:『装備品をロンのものに修正しました。続いて、名前の修正を始めます』
竜田大河:「名前!? それって!? イヤ! それだけはやm・・・んあああぁぁ!」
大河の拒否も虚しく、この世界に不要な「名前」は、精液に変換され排出されてしまった。
遶懃伐螟ァ豐ウ:「嫌あ! あたしは遶懃伐螟ァ豐ウ! あたしの名前、消えちゃうよぉ! 忘れちゃう! ・・・忘れたく・・・あれ? あたしの名前、なんて名前だっけ・・・?」
繝ュ繝ウ「あたしの名前は・・・繝ュ繝ウ! じゃない! 確か、あたしの名前は繝ュ繝ウ・・・あれ? あたしは、繝ュ繝ウで、あたしの名前は! ・・・ロン・・・だったわよね?」
ノイズで遮られた科白からは、新たに修正された龍人の名前しか出てこなかった。彼女の元々の名前は、すでに彼の記憶からも完全に消え去っていた。
ロン:「お家に帰りたい! 帰らなきゃいけないのに! もうすぐパパが帰ってくるかもしれないし・・・こんなおじいちゃんの姿で一生過ごすなんて絶対に嫌・・・」
そんなロンの前に一つの影が近づいていた。それはかつて彼女が討伐しようと息巻いていた――あのモンスターだった。
フォレストウルフ:「グルルル・・・」
ロン:「えっ、モンスター!? そんな! 今この状況で・・・嘘でしょ!?」
フォレストウルフは涎を垂らしながらロンに近づく。涎が焦げ茶色の毛並みの悪い毛に落ちてひどい臭いを撒き散らしている。
ロン:「今のあたしのステータスなら戦えるかもしれないけど・・・おちんちんがこんなになってる状況でなんか、あたし戦えないよ!」
見た目とは裏腹に狼狽し続けるロン。そんな彼を見たフォレストウルフはロンを獲物と認識し、襲いかかった!
ロン:「来ないで!」
フォレストウルフ:「ギャイン!」
フォレストウルフはロンの無意識の掌底一発で吹っ飛び、小屋の壁に激突した。そのままフォレストウルフは伸びて動かなくなった。
ロン:「た、倒せちゃった・・・この体、強さだけは凄いわね・・・」
ロンは自分の肉体を見ながら自画自賛する。元々この体は自分のものではなかったとはいえ。
システム:『続いて、言語データを修正します』
そんな困惑の中にいるロンを無視して、システムは無慈悲にただ淡々と己の役目を果たし続ける。
ロン:「うっ!」
ロンのペニスはまた勃起し始め、再びカウパー汁を溢れさせる。そしてそんな彼は、一人、良からぬことを考えて始めていた。
ロン:「・・・まだあったかい・・・死んでないわね・・・」
ロンは気絶したフォレストウルフを抱きかかえる。このモンスターを眺めていると、なぜかこのモンスターの、尻尾の付け根の下辺り――そこにある穴ぼこにペニスを挿れたくなった。
普段の彼女なら考えられない発想――しかし、精神にいる別の誰かが『やってみろ――きっと、気持ちいいぞ』と誘惑してくるのだ。
ロン:「この中におちんちんを・・・入れるの・・・? 何で・・・? でも、入れたい・・・気持ち良さそう、だから・・・」
ロンは、知識もないままフォレストウルフの穴をほじくり始めた。ヌチャヌチャと粘着質な汁が染み出してきて、ロンは官能的な気分になった。
ロン:「入れる・・・わよ・・・ひゃんっ!?」
それはまさに一瞬の出来事だった。刹那の情事だった。解した穴にペニスを入れた途端、脳を貫くような電撃が、とてつもない快感が彼の全身を満たした。年老いた体にも関わらず、そのペニスは萎えることなく子種をスムーズに発射させた。
パーツからは、生温かいバグが発射され、フォレストウルフの腸内を満たしはじめた。
ロン:「ああっ! 何これ、これ凄い! ザーメン出すの気持ちいい! でも、出したくないの! 出るのやめて! あたし、龍人なんかじゃない! あぁあん!!」
ロン:「フォレストウルフのアナル犯してあたしのザーメン出ちゃってる! 出しちゃダメなの分かってるのに! しかし凄く気持ちがよいんじゃ! やめられん!」
ロン:「出る・・・イク! ふぅ・・・またイッてしもうたわい・・・もう何回かのう? えっ、あたし、言語まで老人になってしもうとるのか・・・!? フォレストウルフのアナルを突くたび、あたしの言葉が、段々と変化しちゃってる気がするんじゃが・・・いや、間違いなく変わってしもうとる!」
ロン:「あたし女の子なのに、こんな年老いた人間のような言葉遣いになりとうない! まだあたしは14年しか生きておらんのに・・・んごぉお!!」
喘ぎ声すら雄臭くなる一方で、ロンは自分が自分で無くなっていくはずなのに、それが普通であったかのような感覚に陥っていた。しかも、今までの口調に違和感すら感じてきていた。
この射精は、人格さえも書き換えてしまうのか? ロンはそれも悪くないとなぜか思い始めていた。精神がロンに引っ張られているのだろうか?
ロン:「よく考えれば、この成熟した精神はあたしよりも余程物事を冷静に考えられておるはず・・・今は狼の尻を犯しておるが。何故かあたしはあたしでいることを拒みたいはずなのに、あたしじゃなくてもいいのではないかと思い始めておる・・・しかももうあたしがあたしでないことを自覚するたびに、古い口調など捨ててしまえばいいのではないかとしか考えられんのじゃ・・・すまんのう・・・」
ロン:「今までの14年間悪くなかったぞ、“あたし”。さらばじゃ・・・“あたし”!! ひぐんっっ!」
ロンは、大河としての一人称を排出した。ロンはもう、自分の使う一人称はこの世に生まれてきてからずっと『ワシ』であったとしか思えなくなっていた。
ロン:「おおう・・・もうワシが人間のメスだとは誰も思いはせんのだろうな・・・それにしても、射精の快感は幾つになっても慣れんのう。これだけは、いつでも最高じゃ・・・」
そう言いながらロンは未だ萎えぬペニスを扱く。出せば自分を忘れてしまうのにも関わらず、自らの沸き出る欲望に抗えずにいた。
システム:『その他の不要なデータを修正いたします。これで修正は完了となります』
ロン:「もう終わりなのか? 寂しくなるのう・・・その他というのは、ワシの中の、全てということじゃろうな。人間の女子だったことも、中学校に通っていたことも、ゲームが好きだったことも、世界で一番愛すべき父と母のことも、どれもこれも全部ザーメンになってしまうんじゃろうか?」
困惑している彼とは対照的に、ペニスはひとりでに勃起を続けている。白褌を、真っ青な道着を、日々修行を重ね研鑽された己の肉体を、そしてつんと臭う油臭ささえも、彼にとってはもはやオカズでしかなかったのだ。
そんなロンの下に、もう一人の来客が現れる。それは、重厚な鎧を装備した虎の獣人であった。
ロン:「お前さんは・・・誰だったかのう?」
ティグリス:「忘れちまったのか? ティグリスだよロン爺! あんたの相棒!」
ロン:「はて・・・そういう“設定”、ということなのかのう・・・?」
ティグリスと名乗った虎獣人は、どうやら“元の彼”のことを知っているようだった。おそらく、NPCとしてのロンの相棒――という設定がなされているキャラなのだろうとロンは推理した。
ティグリス:「設定ってなんだよ。おかしな爺さんだな。せっかく久々に会ったんだぜ。冒険にでも――」
その時、ゲームを裏で支配するシステムメッセージが、新たな指令を出した。別のNPCキャラクターが、デバッグ中のNPCキャラクターと邂逅してしまった時の応急処置だった。
システム:『NPC・虎獣人戦士・ティグリスがデバッグ対象のNPCと接触したため、ティグリスのモードをデバッグモードへと移行してください』
ティグリス:「はい。了解しました。マスター。ティグリス、デバッグモードに移行します」
ティグリスは朗らかだった表情を一変させ、途端に生気のない無表情になる。抑揚なく呟いたその言葉は、彼がNPCからシステムの奴隷となったことを証明していた。
ティグリス:「ロン爺・・・好きだ。俺、もう我慢できねえ!」
ロン:「ティグリスとやら、一体何を・・・これはッ!?」
ロンは目を丸くした。なぜなら、彼の装備している黒ビキニから、真っ赤な逸物が飛び出していたからだ。
ロン:「どうして・・・チンポはワシにしか・・・何故じゃ、可能性があるとしたら、彼の股間にもバグ除去パーツが装備されたとしか思えん。恐らく、そうなのじゃろう」
ロン本人の知能は過去の自分よりもかなり高いらしくこの程度の推理は造作もなかった。それよりも、ロンはこれから起こることを少なからず察していた。察していても、逃れることは叶わなかったが。
ティグリス:「ロン爺、アナル突かれるの好きだったよな?」
ロン:「そんなもん知らん! というかお前さん、さっきから言葉が支離滅裂になっとるぞ!」
ティグリス:「好きじゃなくても、きっと気持ちいいぜ、きっと、バグが取れたら、俺の事思い出すんだから。あれ、そうじゃなくて、俺は、俺はデバッグモード。ロンのバグを除去する装置」
無理やりティグリスに覆い被さられたロンは、彼のなすがまま、その逸物を受け入れるしかなかった。
ロン:「んおっ!」
パチュ、グチュ! といやらしい水音が小屋に響き渡る。しかしそれ以外は静寂と、かすかな二人の喘ぎ声だけがこの空間を支配していた。この世界は、もはや二人だけの世界だった。
ロン:「嘘じゃろ・・・あっ! アナル掘られるのは初めてなのに・・・んっふぅ! この天にも昇る快感は何なんじゃ!? おうっ! ワシ・・・ワシは、もう・・・彼のチンポにいっ!」
ティグリス:「相変わらずいい声で鳴くなロン爺は・・・俺も、そんなロン爺が好きなんだっ、よっ! んんっ!」
はじめに、ティグリスが達した。余程溜まっていたのか、ロンの中に収まりきらないほどに精液が入れられた――と思ったがそれはすぐに彼の中に吸収されて消えてしまった。そしてこれは、彼の……彼女の最期を意味していた。
システム:『デバッグ促進化精液がロンの肉体に吸収されました。データ修正を再開します』
ロン:「い、嫌じゃ! 修正などされとうない! ワシは家に帰るんじゃ! ワシはバグなどではない!! 決して・・・んごっ!?」
そして彼は、ティグリスに続き立て続けに射精した。
ロン:「おぉ! ぬおぉ! ワ、ワシの! ザーメン出とる! イク! ワシのザーメン! 気持ちいい! ふんぬぅぅぅ!!」
ロン:「ワシは、平凡な女子中学生だと思っとった。 しかし武道の道を極めるため山に篭り、共働きの両親に育てられたんじゃ。射精して、ゲームをして、明日はテストだから勉強しなくては。二年生になってから授業が難しくなり、 数年前弟子を育て成長を見届けた時はワシも涙したもんじゃわい」
ロン:「初めてモンスターを退治した時は、沢山の経験値を手に入れ、継承者の証である青龍の道着を授かったんじゃ。小学生の頃遊園地に連れて行ってもらいその後滝に打たれて修行をしたもんじゃ。メリーゴーラウンドの馬を乗りこなし、武士との戦いに臨んだときはワシも死を覚悟したのう・・・」
ティグリス:「級友の大槻貴史くんが好きで、いつも頭の中にティグリスの事を思い浮かべては自慰にふけっていたものじゃ。貴史くん、野球を好み、あの大きなチンポがとても気持ちよくて、ワシと共に闘う大きな背中を見るたびに良き相棒だと思ったものじゃ。以前不埒な行いをする級友と邂逅したときは、武道を通じて真っ当な道に改心させたものよ。む? そのような記憶はなかったはずじゃが・・・いや、ワシにとって武道とは人生のようなものじゃからな・・・」
ロン:「父も偉大な武道家じゃった。ワシもいつかこうなりたいと思ったもんじゃわい。母は、卒業式に大好きなカレーライスを作ってくれとったな。はて、卒業式とはなんじゃったっか・・・? 卒業式・・・そうじゃ。ワシは女子として人間の小学校を・・・んごぉ! あれ? ワシは何を考えていたんだったんかのう? それにしてはやけに頭が晴れやかじゃわい」
ロン:「さて、今までワシの生涯を振り返ってみたわけじゃが・・・何故今になってこのようなことをし始めたのかのう? まるで修正されたデータを確認しているみたいじゃ・・・データ? とはどういう物じゃったか・・・そうか、思い出してきたぞ。ワシは齢十四の女子中学生で、ゲームをしていたら・・・武道家・・・龍人に・・・・・・ぬっ! そうじゃ、完全に思い出しわい! ワ、ワシは! 不都合な記憶を全て出している途中だったんじゃ! い、嫌じゃ! お主にとってはバグだったとしても、ワシにとっては、ワシにとっては、元の世界に帰るための大切な!」
ティグリス:「どうしたロン爺さん! 俺はまだヤリ足りないぜ!」
ロン:「何! よさんかティグリス! ワシはこれ以上射精は――」
しかし、ティグリスはその動きを止めることは一切なかった。プログラムの命令通り、ロンを絶頂に、追いやった――
ロン:「ぬあああぁあああぁぁっ!」
ロンは盛大に射精した。そして、ロンの最後の砦であった現実世界の記憶が、この世界にとってもっとも不都合だった矛盾(バグ)が、排除された。
唯一大河のままだった瞳も、この射精とともに黄金色に輝く龍の目に変わり果ててしまっていた。
ロン:「・・・ワシの考えていた元の世界とは一体何だったんじゃろうか? ワシの住む世界はここ一つのみ。元の世界、と称するならここしかない筈なのに、ワシも歳かのう? じゃが、ワシの住む世界は本当はこの世界ではない、というのも確信しておる。何故ならワシは日本に住む元女子中学生の龍人武道家じゃから・・・」
ロン:「『サファイアの伝説』が一番好きなアニメだったのも覚えておるし、究極奥義を修得した時の手応えもしかと覚えておる。調理実習で作ったカレーが美味じゃったのも、病に倒れた師匠との別れを告げたのも、父に中学校の入学祝いを買ってもらったのも、モンスターの軍勢から体を張って街を守った記憶も、大好きだった周防しずくが転校して悲しかったのも、ティグリスを酒屋に誘い盃を交わした思い出も、ワシが元々女子だったのも、ワシが偉大なる武道の伝道師だということも、何か大切なことを忘れてしもうたことも・・・全てな・・・」
ロンは、全ての記憶を噛み締め、それが真実であろうと偽りであろうと、自分にとってはどちらもかけがえのない思い出であることを実感した。だからこそ、その記憶を忘れたくないと心から思った。しかし、そんな感情も、プログラムにとっては無関係な要素でしかなかった。必要なのは、この龍人に相応しくない記憶や思い出を排除する、こと、のみ、だった。
システム:『データ修正95%完了。残りバグ5%』
ロン:「ワシは、バグなどという安易な言葉で括られるような人生を送った記憶はないと思っておる。しかし、ワシが、このか弱き女子の記憶がこの世界に不要というのなら、ワシは最後まで抗わせてもらうぞ。ワシは、武道家、ロンなのだから!」
ロンは最後まで世界に抗うことを決めた。褌が精液でグショグショに汚れようが、今まで培ってきた精神力で、この逆境を跳ね除ける気迫を見せていた。例えそれが無駄な努力なのだとしても。
ロン:「ワシは負けぬ・・・ワシは、女子の記憶も、この武道家としての記憶も、忘れとうないんじゃ! だからっ・・・」
ティグリス:「ロンの前立腺を刺激。全てのバグを排除します」
ロン:「ぐああああああぁあっ・・・」
その言葉が、彼女の――女子中学生、竜田大河の最期だった。ただの普通の子供だった彼女は、バグとして、永遠にこの架空世界に精液として漂い続けることになったのだった……
◆
ロン :「来たのティグリス! 今日も頑張るとするか!」
ティグリス:「オウ! ロン爺さんと俺は永遠のバディだからな! 地獄の果てまでついて行くぜ!」
生まれ変わった竜田大河改めロンは、NPCとしてこのゲームに永遠に生き続けることとなった。架空の相棒、虎獣人の戦士、ティグリスとともに。
リアン:「ここにロンとティグリスという最強の戦士がいると聞きました。どうか、私もあなた方と共に旅をさせてください!」
ロン:「よかろう。ならついてまいれ。しかし、ワシ達に付いていくのは厳しいと思うぞ。それでも良いのか?」
ティグリス:「ロン爺さん、俺たちに話しかけたってことはそんだけの覚悟があるんだろうぜ。なら来るもの拒まずってな」
ロンは、最高の相棒とともに今日もユーザーを助けて回る毎日を送っている。
そして……
ロン:「ああティグリス! やはりお主のイチモツは最高の名器じゃわい! もっとワシを突いとくれ!」
ティグリス:「ロン爺さんのムチムチした肉、やっぱエロいし気持ちいいぜ! いくらでもザーメン出ちまっ、うううぅ!」
二人は、パチュパチュと、夜な夜な全年齢ゲームにも関わらずNPC同士で淫らな行為を行っていた。
普通なら存在しないはずの生殖器を何故か二人は持っており、その快楽を運営にすら知られずに享受していた。
ロンに関しては装備されていたバグ除去パーツの名残なのは分かっている。果たして対するティグリスも、ロンと同じなのだろうか?
謎は深まるばかりだった。
ロン:「ああぁぁ! ティグリスのイチモツしゅごいわいっ、あぁしゅごいのぅ、ワシ、イッちゃううぅ!」
ティグリス:「ロン爺さん! 俺の大好きなロン爺さん! ずっと一緒にいてくれよ!」
しかし彼らには関係ない。
快楽、そして愛という最高のログインボーナスを手に入れたのだから。
GAME OVER