SamSuka
Jin(鬼頭ジン)
Jin(鬼頭ジン)

fanbox


見えざる手

 五時二十五分。  五人の男子高校生が学校を出た。 「あー、やっと終わったー」 「今日の授業も退屈だったなぁ」 「先週テストも終わったことだし、気晴らしに今日どっか遊びにいかねぇ?」 「いいなそれ、お前ら小遣いどんだけ持ってる?」 「あ、俺今月あまり持ってねぇや」 「少しくらいなら奢ってやるって、だから行こうぜ」 「いやいや、翔真も色々大変なのにんなことできっかよ」 「いいっていいって。友達の好意には少しは甘えとくもんだぜ、環」 「で、どこ行く?」 「ゲーセンかファミレスか、それともカラオケ?」 「じゃあまずファミレス行こうぜ。丁度腹減ったし」 「そうするか」  しかし、先頭を歩いていた高輪武之が道を間違えた。  そして四人もそれには気がつかなかった。  五人は、いつの間にか知らない建物の前へとやってきていた。 「ここ……どう見てもファミレスじゃ……」 「何やってんだよ武之、なんだこのボロいビルみたいなトコ」 「おっかしいな……確かにあのファミレスに向かって歩いたはずなんだが……」  乾忍が、その建物に何の違和感も持たず、扉を開けて入っていく。 「おい、忍! お前何やってんだよ!」 「何って……ここに入るんだよ。何もおかしくないだろ?」 「バカ! そんなわけあるか……忍、お前、何考えて……」  そんな諍いを続けている間に、開かれた入り口へ宅間大が入っていく。 「おい!」 「えっ、何?」 「何じゃねえよ! なんでお前まで入ろうとしてんだ大!」 「なんでだろ……でも僕は入らなきゃいけない気がするから……」  秋山翔真の制止を気にも留めず大は建物へ入る。  続いて、乾忍と中舘環も無言で建物へ入る。 「忍! 環! ……くそっ、なんだよこれ!」 「俺たちも入ろうぜ翔真」 「はあ!? 武之まで何言い出すんだよ! 俺がおかしいのか!?」 「何もおかしくないだろ?」  武之のその言葉に、翔真は『自分達がこの建物に入ることは何もおかしくない』と判断する。 「……そうだな、何もおかしくないな。何で入るなって変なこと言ってたんだろ……俺」 「まあいいじゃん。忍と大と環が待ってるぞ」 「あっ、ああ……」  こうして、何も深く考えずに、翔真と武之も建物の中へと入る。 「……何だこりゃ」 「何もない……」 「壁一面真っ白だし、狭いし……何だここは?」 「気味悪いし、やっぱ帰ろうぜ」  その時、大はこの建物を出たくないと思った。 「俺は嫌だ。ここにいたい」 「おい大! お前何言ってんだよ!」 「みんなもそう思うだろ?」  大のその言葉に、武之と環と翔真と忍は、逆らえなかった。  武之と環と翔真と忍と大は、この建物を出るという考えを脳内から完全に抹消した。 「ああ」 「ずっとここにいようぜ」  翔真は、建物の扉を閉めて、鍵をかけて皆が出られないようにした。  その時、大の陰茎がひとりでに勃起した。 「んっ……」 「おい、大……何でお前チンコ勃ってんだ……?」 「こんなとこでエロいこと考えてんなよ」 「違うんだ! これは……何かの間違い……」  続いて、翔真、忍、環、武之の四人の陰茎も同じく勃起を開始する。 「お、お前らだって、勃起してんじゃん!」 「ほんとだ」 「何でみんなして……」  その疑問は不要なので、五人の思考からは完全に遮断された。 「何でだろうな?」 「まあ、どうでもいいじゃん」  この建物は、射精するとその人間の全ての情報が書き換えられる施設だと今この時点でそうなった。  なので、そのための準備を今から始める。  まずは、最初に勃起した宅間大からだ。  勃起した大の陰茎は、そのまま性的興奮のボルテージを臨界突破し、精液を射出する。 「あっ!」 「ちょっ……大、嘘だろ、突然、こんなこと……っ!?」 「俺だってわかんねえよ! 突然気持ちよくなって……あっ!?」  射精したため宅間大の情報は書き換えられた。 「大!?」 「あっ、ああ……」 「まっ、大の体が!?」  大は、年齢が45歳になった。  大は、身長が177cmになった。  大は、体重が103kgになった。  大は、種族が熊獣人になった。 「う、うわあっ!?」 「大が、熊のおっさんに!?」 「な、なんだよこの体! こっ、声までこんな低く! こんなの俺じゃ……」  大は射精した。 「うっ!」  大の一人称が『ワシ』になった。  大の口調が変わった。  大の職業が大工になった。  大の着ていた服がシャツと腹巻とニッカポッカと地下足袋に変わった。 「うおおお!?」 「何だよその服!? 大工みてえ……っていうか完全に大工じゃん!」 「ワシだってわかんねえよ忍! だがイッたらこんなガタイになっちまったんだ……信じてくれ!」  忍は、大の言葉に従った。 「わかった」 「えっ……」 「とりあえずさ、元に戻る方法でも考えようぜ。きっと何か……」  大は射精した。 「うおっ!」  大の性的趣向がゲイセクシャルになった。  大の記憶が全て抹消された。  大は近くの建設作業場に勤務している大工の中年熊親父になった。  大の記憶がその経歴と人生に合わせて新たに形成された。  大は変化する前の全ての要素を精液に変換した。  大は射精した。 「おぉふ……お、坊主、あんたら何でこんなとこにいんだ?」 「大……俺ら、大と一緒にこの建物に入って……それで……」 「あん? 確かにワシは大って名前だが君たちのことは知らねえな」 「そんな! 忘れちまったのかよ俺達のこと! 俺達、友達だったじゃん!」 「友達ィ? ワシにこんなガキ共のダチはいねえやな。ワシのダチはワシと同じくらいのジジイばっかりよ。  んなことよりあんたら、何で揃いも揃ってチンコ勃たせてんだ? ワシとしたらそっちの方が不思議だぜ」 「そっ、それは……」  忍は射精した。 「ああんっ!」 「うおっ! 何だ!?」 「つ、次は忍が……」  射精したため乾忍の情報は書き換えられた。 「あああぁ……」 「しっ、忍まで大みたいに動物になってく……」 「坊主の体が縮んで……こ、こんなんありえねぇ、どうなってんだこりゃ……」  忍は、年齢が9歳になった。  忍は、身長が133cmになった。  忍は、体重が31kgになった。  忍は、種族が栗毛の犬獣人になった。 「俺のっ、俺の体……」 「忍、お前、こんなに小さくなっちまって……」 「そっ、そんな……元にもどっ」  忍は射精した。 「ああぁ!」  忍の一人称が『拙者』になった。  忍の口調が変わった。  忍の職業が忍者になった。  忍の着ていた服が黒い忍装束に変わった。 「せ、拙者……忍者になってしまったでござるか……? く、口調まで!」 「何が起こってんだ一体……坊主が、犬のガキになって、忍者みてえな格好に……? この部屋のせいだってのか……!?」 「何を他人事のように! お主も拙者同様先程までただのヒトだったのでござるよ!?」 「はあ!? ワシはちげえ! ワシは、昔から大工一筋で生きてきたただの中年親父だ! それはワシがよく知ってる!」 「どうして……ただ拙者はファミレスへ行きたかっただけなの……」  忍は射精した。 「にいいぃっ!」  忍の性的趣向がゲイセクシャルになった。  忍の記憶が全て抹消された。  忍は現代社会にひっそりと姿を潜めて暗躍している忍者組織の下っ端忍者になった。  忍の記憶がその経歴と人生に合わせて新たに形成された。  忍は変化する前の全ての要素を精液に変換した。  忍は射精した。 「……はっ!? 拙者は何故このようなところに!?」 「そ、そんな……」 「忍まで大みたいになにもかも変わっちまった……もしかして、射精したらこうなっちまうんじゃ……」  翔真は、この部屋で射精したらどうなるかを全て把握した。 「や、やっぱりそうだ! ここで射精しちまったら体も、記憶も、服も、なにもかも書き換えられちまうんだ!」 「なんだよそれ! でもこの部屋からは出たくないし……どうすりゃいいんだよ!」 「残ったのは俺らだけだ! このままじゃみんな別人に……熊のおっさんや犬のガキみたいになっちまうんだぞ!」 「そんなこと言われてもわかんねえよ!」 「何か、人間共が騒いでいるでござるな」 「なんか射精がどうのって言ってるが……ワシらには関係ねえことだ」  大と忍は、環と翔真と武之がどうでもいいものだと認識した。  大は、忍と性行為を行いたくなった。  忍は、大と性行為を行いたくなった。 「へへっ……それにしてもお前可愛いなぁ……」 「お主こそ、なかなか良い体をしておるな……そのむっちりとした脂肪……拙者好みの体型でござる」  大と忍はキスをした。 「んっ……」  大と忍はそのまま性行為を始めた。 「も、もうワシ、我慢できん!」 「拙者も、興奮が収まらぬ! たまらないよぉ!」  大と忍は、お互い恋愛感情を抱くようになった。 「大殿、拙者を、ボクをメチャクチャにして!」 「あっああ! 何かよく分からんが! 何故かお前のことが好きになっちまった! もっとお前とヤりてぇ!」 「あっ、ああ!」 「ンッ、グッ、ヌオオオッ!」 「なんだよこれ……」 「気持ち悪い……俺らも、こんな変態に……?」 「変なこと言うなよ想像しちゃったじゃんか!」 「だって……!」  武之は射精した。 「ぐっ……」 「武之!」 「くそぉ! どうしてこうなっちまうんだよ!」  射精したため高輪武之の情報は書き換えられた。 「嫌だぁ! ぎっ、ギギィ!」  武之は、年齢が33歳になった。  武之は、身長が125cmになった。  武之は、体重が45kgになった。  武之は、種族がゴブリンになった。 「ギギ……俺の体、どうなった……」 「あのさ、これって……」 「ゲームとかアニメに出てくる、あのゴブリンだよな……?」 「ゴブリン!?」 「マジでゴブリンになってるぞ、武之……」 「手は緑色で爪が伸びてて……小さい……体……」 「大や忍みたいに動物みたいな姿だけとは限らないってことかよ……」 「嫌だぁ! ギ、ギギッ、コンナノッ、ウガァアアアァ!」 「たっ、武之、落ち着けっ!」 「あああああ!」 「環、武之を落ち着かせるんだっ、とにかくっ、暴れさせるな!」  武之は射精した。 「や、やだっ、やめっ!」  武之は抵抗など無意味だと知らずに勢いよく射精した。 「んぐっ!」 「うわっ!?」  武之の一人称が『オイラ』になった。  武之の口調が変わった。  武之の着ていた服がボロボロの腰布に変わった。 「んふぅ……お、オイラ……」 「た、武之……お前も、多分もう……」 「諦めてんじゃねえよ! 武之だけは何とかしてみせる! もう誰もこんな目に合わせたくねえ!」 「ふざけるな! お前、何、言ったって、オイラ、段々、ゴブリン、なってる! まだ、何もなってない、のに、ギゼンシャ、ぶって、いるな!!」 「偽善者って……ただ俺は……」 「助けて、くれよ! そこまで言う、ことは、オイラ、助けて、くれるんだろ!?  もう出したく、ねえ、変わりたくねえ! 誰でも、いい、オイラ、助けろ!」  武之は射精した。 「タア゛ァ゛ァァァッ゛!」 「あ……あ……」  武之の性的趣向がゲイセクシャルになった。  武之は名前がダギーになった。 「ウソつき……呪ってやる……」  ダギーの記憶が全て抹消される。 「嫌だぁ! 消えたくない! なりたくないぃ!」  ダギーの記憶が全て抹消された。  ダギーは異界に迷い込んだ野生のゴブリンになった。  ダギーの記憶がその経歴と人生に合わせて新たに形成された。  ダギーは変化する前の全ての要素を精液に変換した。  ダギーは射精した。 「ギギ……オイラ、なんだ? ここ、どこだ?」 「武之! しっかりしろ!」 「ニンゲン、何故、いる? オイラ、ゴブリン、ニンゲンとは、馴れ合わない。それに、オイラ、タケユキ、違う。オイラの、名前、ダギー」 「違う! お前は高輪武之! 俺達の……」  翔真と環は、目の前のゴブリンを武之だと認識しなくなった。 「……ってそんなわけないだろ。こんなゴブリンが武之のはずない」 「オイラを、侮辱、するな! オイラ、ニンゲン、許さない!」 「ごめんな。さっきお前の近くに武之が……ってあれ、武之もさっきまでここにいたはずなのに……何でいなくなって……」  翔真と環は、武之と学校の帰りに別れたことを思い出した。 「あ、そうか。武之は家に帰ったんだった。何でここに一緒に来たと思ったんだろ……俺」 「知るか。オイラ、あっち、セックス、してる、ヤツラ、話す。オイラも、混ぜて、もらう」 「あっ、おい! ……行っちまった」  環は射精した。 「んっ!?」 「環、まで……何で俺じゃねえんだよ……何で俺が最後なんだよ!」  翔真が希望するならば、望み通り翔真も即座に変化させることにする。  翔真は射精した。 「ああっ!」  射精したため中舘環の情報は書き換えられた。  射精したため秋山翔真の情報は書き換えられた。 「ぐっ、ががあっ!」 「うおおおおあっ!」  環は、年齢が40歳になった。  翔真は、年齢が354歳になった。  環は、身長が197cmになった。  環は、体重が158kgになった。  翔真は、身長が185cmになった。  翔真は、体重が88kgになった。  環は、種族がパンダ獣人になった。  翔真は、種族が悪魔になった。 「おっ、俺が……パンダで……」 「俺はっ、これ、悪魔か……!?」  秋山翔真は、最後の真実を知った。  どうせ元の存在は全て抹消されるのだから、置き土産に絶望を味わわせてあげよう。  (おっ、俺らは……間違えてたんだ……学校を出た時から……  俺らは、こうなる運命だったってことかよ……俺がこれを知ったのも、どこかで俺を見ている奴の仕業ってことかよ!?  そんなの……そんなことあってたまるか!  そうだ、環にもこのこと教えねえと、きっとあいつも……  いや……) 「あ、あはははっ……」 「しょ、翔真……?」 「あはははっ、俺らに、もう未来なんてなかったんだ」 「おい、どうしちまったんだよ翔真!」 「俺らはどっちにしろ、こうなる運命、だったのか……ならいっそ……俺だけが……環にまで同じ思いを味あわせたくねえから……」 「翔真……」 「もう、忘れちまおうぜ。何もかも」  環は射精した。 「ああああぁっ!」  翔真は射精した。 「イ、イグゥゥッ!」  環の一人称が『陳』になった。  環の口調が変わった。  環の着ていた服がチャイナ服に変わった。  翔真の一人称が『オレ様』になった。  翔真の口調が変わった。  翔真の着ていた服が黒ビキニに変わった。 「嫌アル! チ、陳は、こんな姿になるためにここへ来たわけでは……翔真も、そう思っているアルよね……?」 「もう喋るな環よ。オレ様も貴様も、もう抵抗など無意味なのだから」 「翔真! キミ、そんなことをしたら、射精なんかしたら、キミは、完全に悪魔になってしまうアル! よすアルよ翔真!」 「さらばだ……今まで楽しかったぞ、環、忍、武之、大」  翔真は射精した。 「おおっ!」  翔真の性的趣向がゲイセクシャルになった。  翔真は名前がドーマになった。  ドーマの記憶が全て抹消された。  ドーマはナルシストの悪魔になった。  ドーマの記憶がその経歴と人生に合わせて新たに形成された。  ドーマは変化する前の全ての要素を精液に変換した。  ドーマは射精した。 「……グヒヒッ、さすがはこのオレ様。一発の射精も相当濃いな」 「翔真? まさかキミはもう、記憶を……」 「ぬ? 誰だ貴様は。それよりも、オレ様の肉体、誰よりも鍛え抜かれた美しさだと思わんか」 「そんなことどうでもいいアル! 残ったのは……もう陳のみ……何故こんなことに……なったアルか……?」  それは、私が決めたからだ。  お前らは、たまたま私が目をつけた操り人形でしかないからだ。  ただ私がお前らを変えたかった。  矮小な人間から、新たな存在へと転生を行いたかったからだ。  まあそれも、お前らには一切聞こえないだろうが。  抵抗も認識もできぬまま、困惑のまま自我を失うがいい。  環は射精した。 「ああっ……陳のチン、がっ……イヤアル! パンダに、なりたくっ……」  射精しろ。 「アイヤアアアアアッ!?」  環の性的趣向がゲイセクシャルになった。  環は名前がカンカンになった。  カンカンの記憶が全て抹消された。  カンカンは陽気なパンダ獣人の商人になった。  カンカンの記憶がその経歴と人生に合わせて新たに形成された。  カンカンは変化する前の全ての要素を精液に変換した。  カンカンは射精した。 「……陳は、ここで何をしていたアルか? なーんにも、思い出せないアルネ」 「オレ様もさ。まあいいじゃないか。思い出せなら思い出せないで。  それより貴様、なかなかモフモフでプニプニの良い体だな。オレ様の筋肉には到底敵いはしないが……」 「ん……キミ、なかなかダイタンアル……そんなことされると、陳は……」  宅間大。  乾忍。  ダギー。  カンカン。  ドーマ。  お前達はこの世界のことも、元の世界のことも、今までの人生ももう何も考えなくていい。  立派な家を建てることも、忍としての使命も、森で狩りをして生きることも、中国で自由気ままに生きることも、己の肉体を晒すことも、もう今のお前達には関係ない。  それは私が決めた設定で、ただ私が満足するための、ただのオプションだ。  だから、お前達はただこの白い箱庭の中で、お互いを好き合って、性行為を一生続けていろ。  それのみが、お前達の幸福だ。 「おうっ」 「御意」 「ギッ」 「うむ」 「ああ」  肉をぶつけ合い、陰茎を隆起させ、尻穴を犯し、水音を滴らせ、快楽を貪る。  それだけ、それのみがお前達の生きる意味だ。それ以外は何も考えなくていい。  おや、次の客がやってきたようだ。 「なんだこれ……こいつら誰だ、なんでこんなこと……」  お前も、もう逃げられない。 「い、嫌だ……」  お前も、この世界の住人になるのだ。 「誰か、助けてくれぇ!」 【完】


More Creators