~身に着けられる者~
薄暗い部屋。辺りは複数の人達の声で騒然としている。
その騒がしい声で呆けていた私の意識は覚醒した。
「そうだった。私はこのありえない状況に驚いて…」
周りを見渡すと、大勢の人々が私と同じ場所に集められている。
それは恐怖で震えている人。泣いている人。狂ったように大笑いをしている人。
そして私のように静かに佇んでいる人達。
それぞれの感情を露わにしている人達の気持ちは分かる。
誰だってこんな状況を見たら、パニックを起こすに決まっているのだから。
「あっ…全員目が覚めていますね。」
若い女性の声。見た感じ、恐らく20代前半の私よりも年下の女性。
胸の開けたスーツを着ていて、茶髪のゆるふわヘアーの少し幼い雰囲気をだす女性。
大勢の人達がパニックを起こしている原因はこの声の持ち主のせいなのだ。
…何故、この若い女性に驚き、恐怖して涙を流す人までいるのか…。
それは、体の大きさが私達と余りに違いすぎるから…。
途方もない大きさ。恐らく私達の大きさはこの女性の小指の大きさしかないとみて分かる。それぐらい圧倒的に私との体の大きさは違うのだ。
「みなさ~ん。はい、ちゅ~も~く!」
大きさに似合わず、可愛らしい声で私達全員の視線を一点に集める。
見上げると、薄く笑みを浮かべながら、私達を目線だけで見渡す女。
「わぁ~♪今回の小人達は、皆言う事を聞いてくれて偉いですね~。いつもは私に怒って文句をぶ~ぶ~言う人がいるのに。まぁそういう子がいたら、皆さんの目の前で見せしめに私が”食べちゃう”のですけど。」
…恐ろしい言葉が口から発せられた。食べる?俺達人間を?言葉の意味が理解できなく思考が追い付かなかったが、女性の口元から出された舌が妖しく唇をペロリとなぞり、本当の意味で私達自身を食べる事なんだと理解した。
周りは皆ざわざわと騒ぎ始めており、ほとんど全員が言葉の意味に気づいたようだ。
「あぁ~もぅ!皆さん煩いですよ!静かにして下さい。いいのですか?本当に食べちゃいますよ~?」
”食べる”という一声で、辺りはシンッと静まり返る。
ふんわりとした声で言う言葉と似合わず、決して冗談ではなく、本気なのだと皆薄々気づいてしまったから。
そう思わされたのは、お腹から鳴るぐぅぅという音が、私達の耳まで大きく届いたからだ。
「あっ…静かになっちゃった。うぅ…お腹が減っているから一人か二人ぐらい摘まみたかったのに…。」
そう呟きながら、私達をまるで美味しい食べ物を選ぶかの様に見回している。
「はぁ~まぁいいです。後で別の小人を食べるとして、今は君達の事です。一応言っておきますけど、私が大きいのではなく皆さんが縮んで小さくなったのですからね。…なんで小さくなったとか、此処は何処とか、この際どうでもいいですから説明はしません。皆さんが知る事は、これからどういう風に生きて行くか…それだけです。」
本当に残念そうな声で喋る女性。”別の小人”と言っていたが、この言葉で小さくされたのは私達だけではないのだと分かる。
ただ…女性が話す小人は、目の前の女性の大きな口の中に入れられ、食べてしまうような事を話しているが…。
そして私達のこれからの事。口振りから見て、私達の今後は決定づけられているように思える。…これから何を言われるのか、何をされるのか、目を細めて私達を見回す女性の次の言葉を皆、固唾を飲んで待つしかなかった。
「まず、皆さんの小さい脳みそでも分かるように実際に見せた方が早いですね。」
そう悪態をついた女性は、上半身のスーツのボタンを一つ一つ外していく。
そして露わになるブラジャーを身に着けた女の胸。
はちきれそうだと思うほど大きな胸はブラジャーの中に納められ、小さな音でギチギチと胸を固定しているホックから音が鳴っている。
さらにスカートを上にたくし上げ、目の前には今まさに穿いている巨大な下着姿の下半身が聳えていた。
「ほらっ皆さんどうですか?小人さんからだと解りやすいと思いますけど。」
何が分かると言うのかさっぱり分からない。まるで痴女のように男達の前で下着姿になり、見せびらかしている行為が。
「もっとよぉ~く見て下さいよ…ほらっこれでどうです?」
さらに私達に近づく女の股間。そこから漂う女性特有の臭気が辺りに漂い、むせている者が複数人いる。…そして女性が本当に何を見せたいのかを気づく人達が現れ始めた…。
私もその中の一人だ。
「あははっ、皆少しずつ気づいてきた”物”も現れ始めましたね。気づいていない子はもっと目を凝らして見て下さいよ。私の穿いているパンツやブラを。」
そう…この女性が着用している下着自体におかしな所がある。
それは、穿いている下着の一部分…女の大切な所を隠し、守っているかのような場所。
陰部や乳首の辺りがウニョウニョと小さく動いているのだ。
「うふふ、すごいですよね~これ。最初はもっと動いて、私の大事な場所を刺激されて気持ち良かったのですけど…今はこんなに薄っすらとしか動いてくれなくて。これもその内動かなくなってしまって、完全に私に穿かれるだけのおパンツになってしまうのですよ?うふふっ面白いですよね~。」
女性が話す内容はどういう意味なのだろうか…。
微妙に動いている下着もまったく理解ができない。
一体これは何だ…何なのだ…。
「ふふ、気になります?気になりますよね~。答えはこれです。じゃ~ん!」
--口で擬音を口ずさみ、取り出した物は”糸”みたいに細い何かだった--
何故、糸みたいだと例えたかはミミズみたいに動いているから。
この大きな女性が穿いている下着のようにウニョウニョと…。
「実はこの糸って、君達と同じ小さくされた人なんです。ふふ…皆さんのお仲間さんですよ~あははっ。」
ケラケラと笑う女性…。指で摘まんでいる糸みたいな物を見て、あれが私と同じ人間だなんてとても信じられない。
だって…あんなに細く、この女性が吐く吐息だけで飛んでいきそうな…。
突然大きな手の平が私の上空を通過し、後方に居た私と同じ大きさの人間を掴み、持ち上げられていく。
「こうやって体を薄~く引き伸ばして、手と手を合わせてクルクル~ってすると…ほらっ糸みたいになっちゃうんです。これ、面白くないですか?あはははっ。」
目の前で持ち上げられていった人間が大きな悲鳴を上げているのにも関わらず、手の平同士で擦り付けられ、一瞬で糸のようにされた。
ー糸のようにした人間を指で摘まみ、それを見ながら無邪気に笑う女性ー
ー人間の体を手の平で細く引き伸ばされる光景を見て、悲鳴を上げる男達ー
「あはっ♪あはは!アハハハハハ!」
私は大笑いをしている狂った女と、恐怖で悲鳴を上げている男達との感情の対比が余りに違いすぎる光景を見て、いつの間にか私自身も涙を浮かべながら乾いた笑いを浮かべていた。
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読んで下さってありがとう御座います。
全体公開部分の前編ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。
後編はまた別日に投稿しますね。