――それは日が落ち、外が暗闇に包まれた刻。
「ようこそお越し下さいました」
「あの、星野理央で予約をしていたのですけど」
「はい、承っております。 こちらのお席へどうぞ、星野様」
若い女の方にテーブルまで案内されて席に着く。
店内を見回すと、私の他にも複数人の女性達がテーブルに着き、談笑して楽しそうに食事をしていた。
その他にも店内には、ガラス瓶の中に入った男達が飾られて陳列されている。
「ふふ、良さそうな “物” ばかりね」
ひと月ぶりに見る生きた玩具達は、どれも気持ち良さそうでそそられる。
しかし、今日はいつものように自慰をしにきた訳ではない。
今日は別の目的があって来たのだ。
あのテーブル席で談笑しながら食事をしている人達みたいに、ディナーを食べるという目的が。
だから今日の私の身なりは黒いドレスに身を包み、奪う小さな命に対して礼儀となる恰好をしてきている。
これから旅立つ “者” に贈る、はなむけ衣装として。
「お客様、こちらが当店自慢のソースがかかった季節のお魚と、旬のお野菜になります」
店員の方がテーブルの上に料理をコトコトと置き、一つ一つ料理の説明をしてくれる。
どれも見るからに美味しそうで堪らない。
それに、一番美味しそうなこの―—
「そしてこちらが、8種類のフルーツに浸した甘く薫る “月山桂馬” 様となります。 甘いお味になりますが、お魚と一緒に食されても美味しいですよ」
瑞々しいお野菜の上に寝転がる、ブクブクとまん丸く膨らんだ月山くんが本当に美味しそうで、勝手に口内に涎が溢れてしまい、下品だけど溜まった生唾を飲み込んでしまった。
トクトクトクッ……
そして私の為にワインを開け、グラスに注いでくれる若い店員。
「星野様、どうぞ」
「えぇ、どうもありがとう」
注ぎ終わったワインを手に持ち、まずは香りを楽しむ。
「ん~いい香り♪ 32年物なんですよね?」
「はい、32年物のワインとなります」
今回の食事と一緒に愉しむワインの年代は特に拘っている。 “32年” と言う年月の拘りを。
この年代は、私にとっては特段何もない。 私は27歳なのだから。
じゃあこの “32年” と言うのは何なのか? というと、今から食す食べ物と同じ年代なのだ。
“月山桂馬という人間だった者と”
同じ年にこの世に産まれ、そして32年の時が過ぎ、最後は私の口の中で味わわれ、飲まれ食べられる。
後は一緒にお腹の中でゆっくりと溶かして、私の身体の養分にする。
――素敵だと思わない? この世に私よりも長い年月もの時を過ごした物が、まさか私に食べられるだけにこれまで存在し、生きていたなんて思うと。
月山くんとワイン共々、私に食べられるためだけに……。
そう思ったら、濡れてしまう……。
「では、どうぞごゆるりとお楽しみくださいませ」
「えっ……? えぇ、ありがとう」
若い店員は、スタスタと歩いて行く。 途中、他のテーブル席にいる客に飲み物を注いだりして。
……気づかれていないかな? 流石に食べ物を目の前にして、興奮していたのだとバレたら恥ずかしすぎる。
「コホンッ! じゃっじゃあ、いただこうかしら」
誤魔化す様に咳払いをし、さっそくナイフとフォークを手に持ち、お皿の上の食べ物に目を向けた。
見ると月山くんは食べ物らしくお皿の上に大人しく載っている。
まあ、もう自分の意志で動く事が出来ないから仕方がないのだけど。
実は月山くんには、お店の人に頼んで痛みを感じる痛覚を無くしてもらっていた。
そのせいもあってか、どうやら身体が痺れてしまって動けなくなっているようだ。
お店の人にも「痛覚を無くすと、動かなくなりますが本当に宜しいですか?」と念を押されたのだから、確かなのだろう。
まぁ、お店の人が念を押した理由も分かる。
だって、口の中で暴れる感触や、絶望した悲鳴を聞きながら食べる事がスパイスとなり、味わい深くなるのだから。
後、丸呑みをしてお腹の中で暴れるあの感触……それがまた良い。
お腹の中で食用小人が溶けていくのを感じながらするオナニーも、特別興奮してやめられない。
だから普段は痛覚を消したりしてもらう事はなかったのだけど……今回は別。
だって、せっかく知っている人だった特殊な食事を愉しむのだから、落ち着いて優雅に食べたいし、月山くんの味を目一杯味わいたいから。
グジュ…… グジュ…… グジュッ…… ゴクンッ!
さっそく私は “メイン” となる食べ物を残し、先に他の料理を愉しむ事にした。
口の中でモグモグと咀嚼し、飲み込む姿を月山くんに見せて。
わざとフォークを月山くんに向けたりして遊んだりしながら。
「うふふっ♪ おいしっ❤」
ふとお皿の上に乗っている月山くんを見ると、いつもの笑みを浮かべていた。
ここまでくると流石に関心してしまう。
もうじき私に食べられてしまうというのに、怖くないのだろうか。
「出来れば月山くんの歪む表情を見たかったけど……」
……諦めよう。 こうまでしても尚、こんな笑みを浮かべられたら、さすがに私の負けだと認めるしかない。
――だからせめて今まで酷い事をしたお詫びも兼ねて、最後は月山くんをいっぱい味わってあげよう。
無駄に命を終わらせるのではなく、人間の私の栄養にして役立ててあげよう。
それが食べ物になった月山くんにとって、幸せな事だと思うから。
それにしても、ここの料理はどれも美味しい。
シェフの腕がいいのか、どれだけ値段が高くても人気がある事に頷ける。
あれよあれよと言う間に、お皿の上の料理はみるみる私の胃袋の中へ入っていく。
ゆっくり食べていたのに、気づけばもう、月山くんしかお皿の上には残っていない。
「はぁ~美味しかった❤ 幸せ♪ じゃあそろそろメインを……」
最後に残った月山くんという食べ物に向けて、フォークを突き刺そうとした時、
「星野……約束が違うじゃないか……。 助けてくれると言ったのに……」
突然 “食べ物” だと認識していた物に喋りかけられたので、驚いた声を出してしまった。
それに私の事を星野と気安く食べ物に呼ばれた事に、少しムッとしてしまう。
あんなに私の事は理央様と敬って呼べと言っていたのに……。
まあ、これが最後になるのだから許してあげるけど。
「……ここから出してくれると約束してくれたじゃないか。 なのになんで……こんな事を……」
「……え、えっと、月山くん。 私はあなたを助けてあげるなんて一言も言っていないわよ? それにここから出してあげるって約束はちゃんと守ってあげるわ」
一体何を勘違いしているのか、月山くんはどうやら私に助けてもらえると思っていたらしい。
なんでそう自分に都合よく考えられるのか理解できない。
「こ、此処から出してくれるって言ったじゃないか……」
「う、うん? だからこうして私の食事が終われば、ここから出る事が出来るわよ? 今から月山くんを食べて、お腹の中にいれて外に出る事になるのだし。 約束を破っていないでしょ?」
「ハハ……何だよそれ。 何なんだよ、それは……。 俺が馬鹿だった。 この悪魔が助けてくれるなんて期待した……俺が」
酷い言われようだ。 元々私は月山くんを食べるつもりで話していたのに、勝手に勘違いしていたのは月山くんじゃない。 ――それに、
「はぁ~本当にどうしようもないのね、月山くんは。 ここからもし出られたとして、どうしていくつもりだったの? そんな小さな身体じゃ何も出来ないでしょ?」
「…………」
私の問いかけに無言になってしまう月山くん。
それを見て、会話が終わったのだと思い、
月山くんの背中にフォークを突き刺した。
「ウグァァッ!!」
そして何故か痛そうに大きな悲鳴をあげている月山くん。
痛覚がないのだから痛くはないはずなのに、何で痛そうに悲鳴をあげるのか分からない。
「あっ! お汁が垂れちゃってる! 勿体ない。 レロォ……」
ペロ…… ペチョ…… ペチョ……
フォークで刺した箇所から、汁が滴り落ちてしまったため、私は慌てて舌で舐めとる。
「んはぁ~❤ すごぉい♪ 月山くん、美味しくなってるじゃない。 この味すごく好きよ? 私❤」
ペロペロと舌を這わして舐める。
とっても濃く甘い味が本当に素晴らしく、いつまでも舐っていたい。
これまで月山くん以外の小人を食べてきたけど、一番美味しいと思う。
だから、我慢が出来なくなりさっそくお肉の味を堪能させてもらう事にした。
「ギャアアアアアアアアアア!!」
月山君の片腕を歯で挟んで噛み千切り――
と、何度も口の中で、月山君の片腕というお肉を咀嚼して。
「あん、もったいない」
腕を食べている間、噛み千切った箇所からピューピューとお汁が噴き出してしまったため、ワインの中へとお汁を落とす。
こんなに美味しいお汁を無駄にするなんてありえないから。
「んっくっ…… んっくっ……」
そして、月山くんのミンチになった腕と、甘いお汁が混ざったワインと一緒に、喉を鳴らして飲み込む。
「はぁぁ~極上❤ 本当にすごいわ月山くん。 あなたがこんなに美味しいなんて♪」
月山くんに美味しいと伝えて、もう片方の腕を噛み千切って食べる。
腕だけじゃ物足りなく感じて、両脚もついでに。
「ヒィィィ!! 星野やめっ! やめろぉぉ!! 俺を食うなぁぁ!!」
はしたないけど、月山くんの腕や脚だったものが私の口の中で咀嚼されて、原型が無くなるまでグチャグチャになっていくのを、口を大きく開いて見せながら食べて見せてあげる。
あなたを美味しく食べているのよ? と、実感してもらえるように。
「ヒッ! ヒアァァァ!」
月山くんが面白い声を出しながら見ている口の中は、ミンチとなった腕や脚が私の唾液と混ざり合い、それでも尚、歯で何度も咀嚼して潰している光景だ。
こんなに美味しく私に食べられているのだから、食べ物として誇らしく思っているのではないかな? せめて人間に美味しく食べられたいと、食べ物ならみんな思うはずだし。
……たぶん♪
「んっ……ゴクンッ! ふぅ~月山くん、手足が無くなってしまったわね。 このままあなたの身体も咀嚼して味わいたいけど、やめておいてあげるわね。 少しでも長く私のお腹の中で生きていられるように、残りは丸呑みをしようと思うの♪」
未だ面白い声を出している月山くん。 とっても良い笑みを浮かべていて、ご機嫌そうだ。
「じゃあ、さっき食べたディナーが私の胃の中にいっぱいあると思うけど、その中に月山くんも入りましょうか。 あ、心配しなくてもすぐに溶けないように、胃液をこのワインで満たしてあげるわね? ゆっくり溶けて、お腹の中を愉しませてね。 うふふ❤」
これで本当に月山くんの生きた姿とはお別れになる。
次に会えるとしたら、きっと明日の朝辺りに例の場所から出てくるだろう。
一生懸命に舐めて掃除してくれていた、私のお尻の穴から。
「さようなら、月山くん。 最後に言っておくけど、あなたの痴漢は冤罪だったって事は知っていたわ」
「……へっ!?」
「あの痴漢だと騒いでいた子達は身内で、私がそうするように頼んでいたのよ?」
「――はっ? はぁぁぁぁ?」
「あっ! うふふ、やったーっ! 私の勝ち♪ じゃあ、いただきます。 あ~んっ❤」
「ちょっ! まっまt……」
「んっ……んぐっ…!」
そんな音と共に、月山桂馬は星野理央の口の中へ入れられて吞み込まれた。
「ふぅ~ ごちそう様でした❤」
そう言葉を発する理央の口の中にはもう何もない。
桂馬を喉奥へと送り、胃の中へと落としたからだ。
「ふふっ♪ 月山くんってば、最後に凄い表情をしていたわ」
そう言って満足したのか、恍惚としながらお腹を擦る理央。
美味しい物を食べた事と、何より長年気になっていたものが見られた事に、大満足して。
そして残ったワインを全て堪能し、お会計を済ませて軽い足取りで新居に帰る理央。
自分の帰りを待っている大好きな人の元へと。
こうして月山桂馬の人間の女性に使われる日々は終わった。
……いや、完全には終わってはいないか。
――何故なら月山桂馬は、星野理央のお腹の中でまだ生きているから……。
◇
~理央が食事を終えてから1時間後~
「う……ぁ……ぁぁ……ぁ」
桂馬は胃の中で激しく “縦” に揺られ、うねるような荒波にのまれていた。
理央が食べた物やワイン共々、今も分泌され続けている胃液の海で……。
「ぅぅ……ゴボッ! ぃゃだ……。 しにたく……なぃ……」
か細い悲鳴を上げ、溶かされていく自分の身体を感じながら……。
そして、時折鳴り響く怪物のような鳴き声を聞いて……。
――この音の正体は、胃の中から直接聞こえる理央の消化音。
まるで桂馬を歓迎し、喜ぶかのように鳴いているみたいだ。
……その消化音の他にも――
理央の扇情的(せんじょうてき)な喘ぎ声が聞こえる。
桂馬を胃の中で溶かして命を奪おうとしているのに、気持ちよさそうな声が胃の中にまで聞こえてくる。
桂馬は先ほどから、ずっとこの声を聞かされ続けていた。
理央の喘ぎ声の他にも、もう一人の気持ち良さそうな声も一緒に。
「あっ……ぐっ! りっ理央、そんな激しく動かれると……すぐに……」
「はっ❤ はっ❤ 渉さん待って! もうちょっと我慢して……ね? もう少しでイキそうなの❤ だからお願い、頑張って渉さん」
星野理央……いや、鷲塚理央と鷲塚渉夫妻が住むマンションの寝室で、男女はお互い全裸になり、ベッドの上で交わっていた。
理央は渉の上で馬乗りになり、激しく腰を打ち下ろして。
「だっ駄目だ、もう出る! 理央、出すぞ!」
「う、うん……いいよ。 私もイクから……中に、中に出して❤」
ギュッ! と男に抱き付く理央。
男もそんな理央を優しく包むように両手で抱きしめる。
そして男女はお互いの腰を最後に強く打ちつけ、高い喜悦の声を出し、果てた。
「ハァ……❤ ハァ……❤ 渉さぁん❤ チュッ、チュプッ……」
激しい性行為が終わった事で落ち着きを取り戻した理央は、甘える声を出して男の身体にギュッと抱き付き、愛する人の首筋に何度も何度もキスを落とす。
その理央の姿は、桂馬を玩具として使っていた悪魔のような人物だとは思えないぐらい、男に甘える姿を見せている。
「ふぅ~理央、今日はどうしたんだい? 家に帰ってくるなり誘ってくるなんて」
「ご、ごめんなさい渉さん。 はしたないよね……こんなエッチな私は嫌だった……?」
「ハハッ、まさか! 始めて理央から誘ってくれて嬉しかったよ」
二人は幸せそうにピロートークを繰り広げている。
お互いの身体に優しいキスを落としながら。
……そんな時、
キュルルルルッ!
と、理央のお腹から可愛いらしいお腹の音が鳴った。
「あれ? 夕食は外で食べてきたんじゃなかったの? お腹が空いたのなら何か作ってこようか?」
「ううん、大丈夫。 多分食べた物が消化された音だと思うし……って、恥ずかしいから渉さんは聞いちゃダメ!」
「アハハ! ゴメンッ! ゴメンって! 何でもするから許してくれよ理央」
「もぉ~っ! だったら、チューして?」
「喜んで、僕の理央」
理央の言う通り、先ほど鳴ったお腹の音は、月山桂馬を完全に消化した音だった。
男女二人の絶頂の声を最後に聞き、人知れずたった一人、理央の胃の中で溶けてなくなったのだ。
……後はゆるりと液状と化した桂馬を幽門の中へと送り、長い長い腸へと流れていくだけ。
そして明日にはこの女の汚物となり外へと排泄される。
――嗚呼……月山桂馬が気の毒だ。
性欲の捌け口に使われ、身体のあらゆる汚い箇所を掃除させられ……そして最後には食べられて、この女のほんの僅かな栄養にされたのだから。
最後に溶かされる間際は、ものすごく無念だったに違いない。
そしてそんな何もかもを奪った鷲塚理央は今――
「はぁむ❤ チュッ❤ チュッ❤」
愛おしそうに男の口にキスをしている。
月山桂馬を味わって食べた口で……お互いの舌を絡ませて……。
こうして月山桂馬を味わい尽くした女は、これからも普通に生きて行く。
残酷に一人の男を食べ殺したというのに、幸せに……。
夫である男と一緒に、ラブラブな夫婦生活を過ごしていくのだ。
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読んでくださりありがとうございます。
桂馬と理央の二人の話はこれで終わりになります。
食べられちゃったし……('ω')
ただただお腹の中で、自分を食べた人物が過ごす生活音を聞きながら溶かされていく……。
どういう気持ちになるのだろう?
ではっ!
広域はんい
2021-05-15 08:32:42 +0000 UTCzexcy15
2021-05-15 06:48:06 +0000 UTC