カチッ……コチッ……カチッ……コチッ……
「ぅ……ぅあ」
秒針を刻む音が聞こえる。
その音が嫌に煩く聞こえ、意識が覚醒する。
「……え!? どこだ、ここは?」
ゴシゴシと寝起きの目を擦りながら、辺りを見回す。
窓の外は暗く、いつの間にか夜になっていたようだ。
また、すぐ近くにノートやシャープペンシルが置いてある。
おそらくは、自分は勉強をする机の上に乗せられているのだろう。
「……見た感じ、どうやらここは誰かの部屋みたいだな。 しかし、確か俺は――学校にいたはずじゃ……」
記憶を掘り起こしていく。 小さくされてからの学校での記憶を。
「ああそうだ。 俺はキノちゃん先生の足から解放されて、廊下に倒れていたんだった。 それから……そうだ! 自分に向かって、浅見や並木が歩いてきてッ」
最後に見た光景が、脳裏に突如とフラッシュバックする。
「お、思い出したッ! 並木に踏まれて俺は――って、生きてるのか? 俺!?」
ペタペタと触って自分の身体を確認する。 どこも痛む所なんて無く、怪我なんてしていない。
また、汚れて土臭かった身体が綺麗になって、良い香がしていた。
「……夢、だった? いやいや、違う! それは絶対にない」
まだ体に残っている。
並木に踏まれて潰されていく、あの感覚が……。
だから、夢だなんて事は絶対にないと断言できる。
「だったら、どうして無事なんだろうか……俺は」
いくら考えても答えは出ない。
なので、一先ず忘れる事にして、これからの事を考える事にした。
「……いくら考えても時間の無駄だしな。 とりあえずまずは、現状を確認しないと」
改めて辺りを見回す。
部屋には、ベッド等の家具類も置いてある。 そして、可愛らしいぬいぐるみも。
これを見て、男の部屋ではない、女の子の部屋だという事が分かった。
「どういう事だ? 誰の部屋なんだ、ここは!」
結局自分のいる場所が部屋だという事以外分からず、ただただオロオロしていると、遠くの方から床を踏む足音が聞こえてきた。
ドスッ…… ドスンッ……
その足音は確実にこちらへ近づいている。
とうとう自分がいる机の上にまで、微量な震動が伝わってきた。
「この部屋に向かってきている? だ、だったら、この部屋が誰の物なのか答えが分かるな。 それに、誰に連れてこられたのかも……。 こ、こうしちゃいられない!」
急いで机の上に置いてあるペン立てまで走り、影に隠れて身を潜める。
この部屋に住んでいる人物が分からなく、怖かった……という理由で。
まあ、一応の保険だ。
隠れてすぐに、部屋の大きなドアが開いた。
そしてドアから現れたのは――
「な、なみき? 並木だ!」
自分を踏んだ張本人である『並木 りん』だった。
「ふぅ、サッパリしたぁ。 それにしてもすごいな~。 “明日香ちゃんから貰った石鹸” を使ったら、本当にお肌がスベスベしてるし。 さすが高級品だね♪」
ドシドシと歩いて俺がいる机を素通りしていく並木。
通り過ぎた後にも、石鹸の甘い香が辺りに漂っている。
「こ、ここは……並木の部屋だったんだな」
隠れていたペン立ての物影から、恐る恐る顔を覗かせて見ると、並木はベッドの上で伸び伸びと寛いでいた。
自分を踏んだであろう足裏を、こちらに向けた形で。
「何か、怖いな……」
並木に対してすっかり恐れてしまっている。
踏まれた時に、心の奥底に恐怖を植え付けられてしまったからだ。
わざと並木が俺を踏んだのではないのだと、分かってはいるが……だからこそ、それが余計に怖かった。
先生もそうだったが、ただの “歩行” であれほどの絶望や苦痛を味わわされたのだから。
「まあ、怖がっていても何も進まないな……。 とりあえず、勇気を出して並木に呼びかけてみるか」
隠れていたペン立てから移動し、並木がひと目見て気づきやすい机の真ん中に立つ。
例え声が聞こえなくても、並木の視界に入りそうな場所に。
「おーいッ! 並木ぃぃぃ! おーーいッッ!」
さっそく声を張り上げて叫ぶ。
ブンブンと両手を振り、その場でジャンプもしたりして、視界に入るように。
そうした行為のおかげか、並木は手を振って叫んでいる俺に気づいてくれた。
「ん? え!? リンの机の上でお人形が動いてる……」
ベッドから下りて、ドシドシとこちらへ向かってくる。
あまりの巨体で、ビリビリと大気が揺れている。
「壊れていなかったんだ……良かったぁ。 でも、何でだろ? 手足が曲がっていたのにいつの間にか元に戻ってるし……それに、何で勝手に動くんだろ? このお人形。 どこかに電源とかあるのかなぁ?」
「ちょっ! うわッ!」
目の前にまで歩いてきた並木は、不思議そうな顔をして、俺をおもむろに手で掴む。 スマホ等と同じ、物みたいに……。 俺の事を本当に人形だと思っての行為だ。
そして並木は、胸元辺りまで持ち上げ、その大きな指で身体をまさぐりだした。
頭や腹、ひっくり返しては背中を触ったり、関節を無理やり曲げたりして。
「や、やめッ! 痛ッ! 並木、やめてくれ!」
「わわっ! お人形が喋った!?」
俺が喋った事に、目を見開いて驚く並木。
興味が湧いたのか、顔の近くまで持ち上げられ、マジマジと巨大な目で見つめてきた。
「び、ビックリしたぁ~人形が言葉を喋るなんて。 しかも、岩田君の声そのままだし……」
間近くで目玉がギョロギョロと動くので身がすくむ。
だが、これは絶好の機会でもある。
(そうだ! こうして顔の間近くに持ち上げられているからこそ、俺が人形ではなく、クラスメイトの岩田正司だと並木に気づいてもらえるかもしれない)
――そう思って話しかける。
「並木、俺は人形じゃないんだ! 本物の岩田正司なんだ!」
「わわっ! また喋ったッ! 本当にすごいなぁ~このお人形。 岩田君にほんとそっくり♪」
「ち、違うって! 本当に岩田なんだよ! 並木と同じクラスメイトの。 どういう訳か昨日、柏木達に体を小さくされてからずっとこのままなんだよ! しかも俺だけじゃない。 速人や健太も同じように小さくされてしまって……」
「明日香ちゃんが岩田君達を小さく……? ウフフッ♪ なぁにその話、おもしろ~い」
クスクスと笑っている並木。 まったくと言って良いほど信じていない。
「頼む、俺の話を信じてくれ! 本当の事なんだよ。 こうしている間にも、速人と健太がどうなってるのかも分からないんだ。 だから、すぐに警察に連絡を――」
「ウフフ、それは大変だね。 ……それにしても、藤田君と大友君のお人形もあるんだね。 明日香ちゃんって、クラスメイトの男の子をモデルにして、お人形を作るのが好きなのかなぁ?」
並木の返す反応が変に気になる。 どうしてか、俺を人形だと思い込んでいる様子に。
(なんだ? どうしてだ?)
だがその疑問は、すぐに知る事になる。
「りん知ってるよ? 君って明日香ちゃんの所で作られたお人形だって。 前に葉山君にソックリなお人形を見たんだから騙されないよ」
「……え? 葉山にソックリな人形? ま、まさか!?」
嫌な想像をしてしまう。 自分がこうした身になったのだから、どうしても……。
葉山までもが、俺と同じ目に遭っているんじゃないかと。
「ハァ~葉山君のお人形……可愛くて “良かった” なぁ~❤ 明日香ちゃん、また学校に持ってきてくれないかな……」
現に並木は言っている。
葉山を見たって、あの口から確かに。
それに、柏木が学校に持ってきたとも……。
《おそらく、いや確実に、葉山も犠牲になっているんだ》
「それはそうとやっぱり凄いなぁ~。 葉山君のお人形とは違って、今度は喋るし。 それに、りんの事も名前を呼んでいるから、ちゃんと認識しているんだよね? 本当にクラスメイトの岩田君と喋っているみたい♪」
「――だ、だから、本人なんだって! 人形じゃなく、人間の岩田なんだ!」
必死になって並木に訴えるが、話を聞き入れてもらえない。
そればかりか体を逆さまにして、股を広げさせてくる。
「痛ッ! 痛い!! やめてくれ、なみきぃぃ!」
「わぁ……❤ 男の子のおちんちん、始めてちゃんと見ちゃった。 硬いって聞いた事あるけど、結構柔らかいんだね。 本物の岩田君も、こんなにフニャフニャしてるのかな?」
お構いなしに最もデリケートな箇所を指で弄ってくる。
同級生の女子に見られ、そして触られて、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。
「……ん? あれれ? 何だか硬くなってきた。 何これ、おもしろ~い♪」
「ちょ、触らないでくれ……。 やめてくれって並木!」
そうしたせいで情けなくも勃起してしまった。
気持ちが良いとかそんなのではなく、勝手に。
「へーへー♪ 人間の男の子も触ったら、ピンッ! て立っちゃうのかな。 りんのおっぱいと同じだね」
突然、並木の口から信じられない言葉が飛び出した。
並木からは聞いた事もないエッチな言葉を。
「な、並木? お前……。 ぐあッ! 痛いッ!!」
「あ!? ご、ごめんね! 夢中になっちゃった。 でも、お人形でも痛いと感じるなんてすごいね!」
「あ、当たり前だろッ! 俺は人間だってずっと言ってるじゃないか!」
「きゃッ! 怒っちゃったの? すごい! 本当に感情があるみたい」
「あるんだよ! どうしてここまで言ってるのに、分かってくれないんだよ……」
「うわ~♪ 今度は悲しんでる。 こんなにリアルだと、何だか本当に岩田君をイジメてるみたいな気持ちになっちゃう」
駄目だ。 並木に信じてもらえそうな方法が思いつかない。
どれだけ言っても人形扱いだ。
――だからだろう。 俺の事を人形だと思っているため、さらに並木はとんでもない言葉を口にした。
「……明日香ちゃんって、こういうプレイ用に同級生の男の子のお人形を作ったのかな? 何だか良いかも、こういうのって……変な気分になってきちゃった」
少し蕩けた表情をさせながら、そんな言葉を。
「へ、変な気分って。 並木……?」
「うん……うんッ❤ そういうプレイ用なら、一度試してみようかな。 クラスメイトとして接っしてするプレイ……すごく興味があるし」
「え、ちょ!? おいぃぃぃ!」
ベッドまで移動して仰向けに倒れ込む並木。
そして、お腹の上に俺を置いたまま、来ているシャツを捲り上げてしまった。
「う、嘘だろ……」
さらには、ブラジャーまでをも……。
「えへへ♪ お人形だと分かっているけど、やっぱりちょっとだけ恥ずかしいね。 どうかな? りんのおっぱい。 桜ちゃんは小さいってよくからかってくるけど、そんな事ないよね?」
確かに、並木は他の女子よりは小振りの方だ。
だけど、今の俺から見たら小振りとかそういう次元の話じゃない。
身体の全て……何もかもがでかすぎる。
「うふふ、りんのおっぱいを見て、おめめをまん丸にしちゃってる。 かわいい~❤」
「か、可愛いって並木……いや、それよりも何でいきなり胸を出してるんだよ!」
「うん? それは今から始めようとしているからだよ。 岩田君こそ何を言ってるの?」
「は、始める?」
こうして聞き返しているが、実際の所、薄々気づいていた。
並木が何を始めようとしているのかを。
まさかと思ってあえて俺は聞き返したのだったが――
「りんはね、岩田君を使ってエッチな事をするんだよ。 そういう用途にも使えるお人形なんでしょ? だから、オナニーを今から……って、もう! こんなの言わせないでよ」
予想通り、並木はオナニーを始めようとしていた。 しかも、俺を使って……。
「じゃあ岩田君、そろそろ始めようか」
「……え!? うわぁぁッ!」
そう言って並木は、お腹の上に乗っていた俺を掴み、胸の上へと置いた。
お腹よりも更に柔らかい場所に置かれたため、足元がプニッと沈み込む。
「こ、これが……並木の」
目前には、俺の顔と同じ大きさの真紅な乳首が鎮座していた。
またその乳首の周りには、桜色の乳輪が大きく円を描いている。
「す、すごい……」
思わずそんな言葉が口からこぼれた。
至近距離で見る女子の乳首は、これまで生きてきた中で、見た事もない造形をした気持ち悪い物体だったからだ。
「さあ岩田君、そろそろ触って? ここ、ここだよ~ほら♪」
そしてチョンチョンと自分の乳首を指差す並木。
言葉の通り、俺に触らせて性感を得るつもりなのだ……。
「ねえ、こ~こ♪ 怖くないから早く~」
いつまでも動こうとしない俺に痺れをきらしたのか、並木はまた俺を掴もうと手を伸ばしてきた。
「わ、分かった! やるッ! すぐにはじめる!」
そんな何気ない行為に恐怖を感じた俺は、焦りながら並木に返事を返し、すかさず行動を始めた。