僕の耳に、何とも言えない卑猥な音が聞こえた。
それは、恋人であった最愛の人から奏でる股間からの音。
自分とは違う、他人の男根を咥えての卑猥な音だ……。
「んっ……ふぅ~❤」
しかし少しだけ咥えた男根を、彼女は甘い煽情的な声を出してすぐに引き抜いてしまった。
……何故なのかは分からない。
出来ればこのまま行為を止めてくれたらと思う。 ――思うのだけど、どうやらそういう訳ではないらしく、千雨は持ち上げた臀部をそのままに、巨大な尻肉を打ち震わせていた。
ピクピクと筋収縮を繰り返して、お尻の柔肉を波のように……。
さらにそれだけではなく、少し咥えていた穴は元に戻らずパックリと広がっている。
まるで、《食べたい……早くむしゃぶりつきたい》と言っているかのように。
だからか、かような尻肉や陰部の動きを見て、千雨は決して止めようとした訳ではなく、そればかりか千雨自身が “望んでしている行為” なのだと感じた。
きっと一旦お尻を持ち上げたのは、思ったよりもあいつのアソコが大きくて、ビックリして思わず引き抜いただけなのだろう……。
だって、千雨は僕以外との経験はなく、それに……明らかにあいつのアソコは僕のよりも大きいから……。
――ああ、そう思うと虚しくなってくる。
あんなにも見た事もない動きで、千雨の陰部は嬉しそうにヒクついているではないか。
僕にはそれが、自分の物と比べられて馬鹿にされているように思えてならない。
『晴ちゃんのは小さかったのね』と、言われているみたいで……。
「ちさ……め? ああ……そんな、そんなぁぁッ!」
(ん? 何やろ? 声が聞こえたような……)
精神を蝕む屈辱に痛みも忘れ、悲観にくれる晴樹の声が千雨の耳に届いたようだ。 だがしかし……
「千雨? どうかしたのか?」
「……あ、ううん、なんでもあらへんよ」
せっかく晴樹に向けられそうだった意識は、また夫へと向けられてしまったのだった。
「それよりも、あなたのって、その……おっきいんやね」
「あはは、さっきまであんなに触ってたのに何を今さら」
「そうなんやけど、ウチあまり見ずに触ってたさかい……」
「ハハッ! そっか♪」
女性から大きいと言われたら、大抵の男は喜ぶだろう。
それはこの男、千雨の夫であってもだ。
だからか、気を良くした男はその大きな男根を自慢げに跳ねさせる。
ビクンビクンと、千雨の陰部に食べてもらうのを今か今かと待ちながら。
「あんっ! ……もぅ♪ あなたったらまたそない跳ねさせて。 入れにくいからもう少しこの子を落ち着かせてくれへん? うふふ」
「す、すまん……」
妖しく笑みを浮かべた後、狙いを定めてか男根の真上でふらふらと彷徨わせる巨尻。
女陰の穴からはポタリポタリと透明な雫が垂れ落ち、男の男根を千雨の愛液で濡らす。
またそれとは違い、愛液で濡れた男根の鈴口からも、少量ではあるが透明な雫が湧き出ていた。
これはまるで、口という互いの性器から出す “涎” みたいだ。
そして、普段の彼女からは想像もつかぬ下品な恰好で、男根目掛けて腰を下ろしていった。
「ぅ……ぁ……ぁぁ………………」
言葉すら出なくなった晴樹のすぐ目の前で……。
「はぁ……ふぅぅん❤」
気持ちが良いのか背筋をピンッと弓なりに反らし、熱い吐息を漏らしながら再度鬼頭の先端を咥え込む千雨。
大陰唇と小陰唇というビラビラを絡みつかせて、ぬぷぬぷと卑猥な音と共にすっかり鬼頭を丸々と咥え込んでしまった。
「ん……くぁ……」
「ハァ……んぅ❤ おっきぃ❤」
男根の最も広がっている部分、カリ首までをも全て呑み込んだためか、竿である陰茎を暗闇の蜜壺の中へ易々と挿入していく。
その僅か数秒後には全てを挿入し尽くし、新婚である夫婦は完全に一つに繋がってしまった。
「ッくぁ……」
「ハァ……ハァ……んぅぅっ! はいったぁ❤」
ブルリッと一度だけ身を震わせて、千雨はとても嬉しそうな声を出す。
チロリと自分の唇を舐めとるその表情は、何ともいえぬほど妖艶だ。
一方でそんな夫婦の股下にいる晴樹は、恋人であった千雨と、自分とは違う別の男が繋がっている姿を見て、這う体勢そのままにショックを受けていたのだった。
「ハハ……アハハハ…………。 繋がってしまった。 あいつと、僕の千雨とが……」
だけどそれは仕方がない事。
なんせ結婚まで考えて愛していた人が、すぐ目の前で自分以外の男を受け入れる様を、まざまざと見せられたのだから。
かと言って晴樹にはこの行為を止めさせる事は出来ない。
今や晴樹の存在は、この二人の “人間” とはあまりにもかけ離れていて、小さくちっぽけな存在であるがゆえ。
「う……くぅ。 ほ、本当にすごい締め付けだ」
「ハァ……ハァ……んッ……ふぅ~❤ うふふ、どう? 気持ち良い?」
「あ、ああ。 まさか入れただけでここまでなんて。 ――あ、くぁッ! 千雨、そんな風に動かれると! う……ぁぁ」
男の上に乗った男根を咥えたお尻は、奥深く挿入したまま左右に動く。
縦横無尽に動くその腰つきは、清楚である千雨がしているのを相まってか、見る者を魅了するほどとてもイヤらしい。
「ぅぅ……ぁぁ………………」
そんな男女の結合部から鳴る愛液の音が、晴樹の耳の奥――脳にまで到達し、嫌に反響させる。
脳に残るその音は、あたかも演奏のように夫婦の股間から奏でられているから……。
――観客は晴樹だけ。
本来なら見る事も、聴くことも許されない夫婦の営みからなる二重奏(デュエット)を、二人の人間の股下という特等席で観覧させられている。
しかしこの二重奏は、決して観客に向けて演奏している訳ではない。
ただただこれは、股間から奏でる音を聴いて、夫婦二人、自分達がさらに興奮を高めるためにしている演奏なのだ。
その証拠に観客である晴樹には、悦楽なんてものは一切与えられていない。
『不快感』『屈辱』『悔恨』という様々な負の感情だけをこれでもかと与えられているだけ。
「ぁぁ……ア”アッ! ア”ア”ア”ッッ!!」
だからか耐えられないその状況に、これまで以上に出した事のない大声でとうとう泣き叫んでしまった。 幼い子供のように無様に……。
だって、ずっとずっと晴樹の頭には、千雨と付き合っていた頃の姿がちらついていたから。
付き合っていた時に自分だけに向けられていた笑顔や、晴ちゃんという自分を呼ぶ声など。 他人とは違い、特に優しくあったのをどうしようもなく思い出してしまっていたから。
また、晴樹と性行為をしていた時の甘声も……だ。
(――ああ、全てが “僕” にだけ向けられていたものだった。 愛しているという言葉も、セックスをしている時の気持ちよさそうな喘ぎ声も、全てが僕だけのものであったはずなのにッ!)
……だけど今やそれは、別の男に向けられてしまっている。
自分が持っていたものを、全てこの男に奪われてしまったのだから。
だから晴樹はたまらなく悔しく――そして自分の今の惨めさに大声で泣き出してしまった。
「ア”ア”ア”ァァッッ!」
《――何故、自分ではなくこの男なんだと、運命すらも呪って》
――しかし、そんな晴樹の嘆きが幸運をもたらすのだった。
それは、晴樹が最愛に思う当の彼女に、晴樹の嘆き声が届いたからだ。
(やっぱり気のせいやない。 何か声みたいなのがさっきから聞こえるけど、いったいなんやろかって――えッ!? えっ? えっ? 何で晴ちゃんが布団の上にいるん?)
突然の事に困惑する千雨。
ペットケージの中にいるはずの晴樹が、自分のいる布団の上でうつ伏せになってこちらを見上げていたから。
(どうやってケージから抜け出して来たんやろか? ああ、それよりも晴ちゃんの両脚が折れてしまってるやないの……)
出来れば声をかけて折れた脚をさすってあげたいと千雨は思うが、グッと我慢をする。
そんな事をすると間違いなく傍にいる夫に変に思われるため。
だから「大丈夫?」という言葉すらもかけられない。
(すぐに折れた脚の骨は元に戻るのは知ってるけど、やっぱり痛そう……晴ちゃんあんなに泣いて……。 でも、何で両脚が折れてまでウチの元に来たんやろか?)
千雨は腰を揺らすのをやめて晴樹をジッと見つめる。
『どうしたの?』『何でここに来たの?』という言葉を込めた表情で。
そうしていると、どうやら晴樹は千雨に見られている事に気付いたようで、これ幸いにと晴樹は何かを訴えるように、涙まみれのその表情で叫び出した。
「あ、あ”あ”ッ! 良かったッ! 気付いてくれたぁ! ちさめ、もうこんな事はやめてくれぇぇ! 頼むよッ! もう、これ以上僕は……苦しくて見ていられない」
千雨に向けた、すがるような声だった。
晴樹本人は大声を出しているつもりだが、千雨からは意識を向けなければ聞き取れない、とても小さな声。
だが、そんなすがった声を聞いた千雨は、何故晴樹がこんな所にいるのかを理解したようだ。
(そっか……。 晴ちゃんは嫉妬してウチの元まできたんや。 脚が折れてしもて絶対痛いはずやのに、それでも這ってウチの元まで……)
こんな状態になってまでも、ここまで彼に愛されているのだと感じた千雨は母性本能をくすぐられ、晴樹をさらに愛おしく思う。
このまま彼を掴み、『がんばったね』自分をこんなに想ってくれて『嬉しい』という言葉をかけながら、胸でギュッと抱きしめてあげたいと思うほど。
しかしそれとは違う……また別種の感情も生まれていた。
(なんやろ? ……この気持ち。 泣いている晴ちゃんを見てたら――何だかゾクゾクしてくる)
得体の知れない興奮。
晴樹を愛おしく、また “哀れ” に思えば思うほど、その興奮は膨れ上がっていく。
~それは『深い愛情』が故に芽生えた千雨の『加虐心』~
千雨自身この興奮の正体が何なのかは分かっていないが、でも、夫との性行為を晴樹に見せて、間違いなく自分の中で性的興奮が生まれているのを本能で感じている。
――なので、
「千雨? どうしたんだ? さっきから後ろを向いてボーッとして」
「あ、ううんっ! 何でもあらへんよ、ごめんね」
「ああ、いいけど……。 でも、動くのが疲れるなら遠慮なく言ってくれよ千雨」
「大丈夫。 こう見えてウチって体力には自身があるさかい。 ……じゃあ、ゆっくりと動いていくからね」
最後の『ゆっくりと動いていくからね』という言葉だけを晴樹を見つめながら呟いた千雨は、その通りに挿入したままのお尻を浮かし、そして……落とす運動を始めていく。
……小さな彼に見せつけるように何度も、何度も上下させて……。
“僕” の目の前で打ち下ろされる彼女のお尻。
ゆっくりとひと突き、ひと突きと打ち下ろされるお尻の衝撃は凄まじく、敷布団の上にいようとも大地震のように地面が揺れる。
「ぁぁ……いやだ……嫌だよ千雨……」
男根を突き入れる度に鳴る音が、僕の声を用意にかき消してしまう。
また、男女二人の性器からは愛液の飛沫を飛び散らせ、僕の元に雨の如く降り注ぐ。
「ハァ❤ ハァ❤ 気持ち良い~。 あなた、すっごく気持ちがええよ❤」
何故だかこちらを見つめて、蕩けた表情で感想を漏らす千雨。
そのような行動に、何となくだが僕にこの性行為を見せつけて、性感を得ているんじゃなかろうかと思えた。
だって、快楽で歪んだ表情そのままに笑みを浮かべているんだ。
僕が千雨としている時にも見せた事がない、憐憫(れんびん)を含んだ表情で……。
――まさしく晴樹の考える通り、事実そうであった。
間違いなく千雨は、股下にいる晴樹をおかずに性感を得ていたのだ。
「ハァ……❤ ハァァ❤ ……うふ、うふふ♪ あんっ❤」
「うあぁ……あぁぁ……」
視線は僕を捉えたまま、千雨は腰を動かす速度を早めていく。
なので先ほどよりもさらに地面が激しく揺れ動く。
「ウワァッ! ウワァァッッ!」
とてつもない衝撃だ。
これまで経験した事もない揺れで、僕は両手を頭に組んで身を縮こませるしか出来ず、ただただこの揺れ……千雨達の性行為の終わりを待つしかない。
「ハァ……ハァ……。 ち、千雨、さっきから後ろの方ばかり見ているがどうしたんだ? 寂しいじゃないか。 ほら、こっちを向いてくれ」
「んっ……ふぅ~❤ ごめんなあなた。 布団の上に可愛らしい “小虫” がおったから」
「む、虫ッ!? ちょ、ちょっと待ってくれ千雨。 私は虫が苦手なんだ!」
「ふふ♪ そない驚かへんでも小さな虫やし大丈夫。 それに、 “人間のセックス” を間近くで見て縮こまっているから何も出来へんよ。 なぁ? 小虫さん♪」
千雨が小虫と呼ぶのはもちろん晴樹の事。
普段の千雨なら晴樹に対してこんな言葉は絶対に言わない。
小さな姿になっても、千雨にしたら晴樹は “誰よりも特別な存在” であるから。
だけど、晴樹を苛めて性的興奮を覚えた千雨は、わざと晴樹に向けて小虫という言葉を使った。
――自分の快楽のために。
(ああ、晴ちゃんがうつむいてしまって表情が見えへん……。 でも、きっと悲しいよね? それとも悔しい? ウチがこの人に抱かれてる姿を見て。 もう晴ちゃんとはこんな風に “男女の営み” が出来へんけど、せめて過去にウチ達がしていた営みを思い出して、晴ちゃんも興奮してくれたら嬉しいな。 うふふっ……あぁ~気持ちええわぁ❤)
ちらりと晴樹の方を一瞥(いちべつ)した千雨は、見るからに正気の目はしていない。
千雨は快楽の海に呑まれてしまい、まともな思考をしていないがため。
――だからだろう……
「ああ、あなた……」
「ちさめ……」
ちゅっ❤
うつむく晴樹を無視して、千雨は自ら男に向けて口づけをし始めた。
舌を絡ませ、あえて大きく音を鳴らし、そして晴樹の元までその音を届かせるように。
ぺちゃっ❤ くちゅっ❤
「ハハ……ハハハハッ………」
“僕” を虫だと言って、それっきり見向きもしなくなってしまった千雨。
あまりの酷い扱いに、もう笑うしかない。
巨大な千雨のお尻は、尚も上下に打ち下ろされている。
僕に一切の配慮を見せないお尻は、力強く、突き刺す角度を変えて、愛液の飛沫を辺りに撒き散らす。
そんなお尻の向こう側……遠くの方から、愛液とは異なる水音が微かに聞こえてきた。
当然僕はそれがなんの音なのかは見ずとも分かっている。
――これが、この男とのキスをしている音だってぐらいは……。
「んっ……んちゅ……」
ちゅっ❤ ちゅぴっ❤
「ぅぅ……ぅぁぁ…………」
もう渇いた笑いすら出せなくなった。 千雨に向ける……言葉すらも。
諦めたんだ。 千雨が僕に気付いてもなお行為は止めず、そればかりか自分に見せつけるようにセックスを始めたから。
――それに、
地震のように地面を揺らし、激しくピストン運動を繰り返すお尻を見て、今の僕には圧倒されて縮こまっている事ぐらいしか出来ないから。
千雨達がする……いや、人間のただのセックスで……。
思えば僕の行動は初めから間違っていたんだ。
こんな姿になっても心の奥深くでは、まだ千雨は彼女なんだと思いあがっていた。
散々言われていたのに……。
――千雨は僕をペットとして飼うって。
(ああ、間違いだったんだ……。 千雨に飼われるペットにすぎない僕が、人間同士の性行為を止めさせようとしていた事自体が)
がっくりと頭(こうべ)を垂れて身の程をわきまえた晴樹。
もう邪魔はしまいと決めたのか、今はただ、布団の上で突っ伏しながらピストン運動を繰り返す音を聞いていたのだった。