SamSuka
広域はんい
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②縮小奴隷日記 12話 前編~Party Time~ 奇異な街


 ~小さくされて三日目~


 時間にして十八時頃。


 速人達は昨日と同じく街の中を探索するため、拠点のビルに集まり話し合っていた。


「という事で、二人チームを組んで街の出口の探索に向かいましょうか」

「はい、了解っす! じゃあ俺は古上さんとまたチームを組むっすね」

「ええ、お願いします。 それはそうと肝心の古上の姿が見当たりませんが、何処に行ったのでしょうか」

「ああ、喉が渇いたからって、おっさんと一緒に池まで行くって言ってたぞ」

「そうですか。 なら二人が戻ってくるのを待って、探索をはじめる事にしましょう」


 待つ時間。 それぞれ自由に行動しだす。

 かと言って何もする事がないのだが……。


 なので、大人達は壁を背にして腰を下ろす。

 少しでも無駄な体力を使うまいとしてであろう。


「速人、僕達も座って休んでようか」

「おう、そうだな」


 大人達にならって二人も座ろうとした時、慌てふためいた古上がビルの入口のドアを乱暴に開けて入ってきた。


「お、おい皆! 人だッ! 人が池の水に流れ落ちてきた‼」


「「「――はあッ?」」」


 ………………

 …………

 ……


「ハァハァ……。 あ、あいつだ! あいつが黄色い水と一緒に管の中から流されてきたんだ!」


 拠点にいた全員が古上の後を追って、飲み水である池の元まで走ってきた。 もちろん速人と健太もだ。


 ――人が流されて落ちてくるなんて、始めての事であったから。


「ゴホッ! ゴボッ! オエェェ……」

「おい坊主、しっかりせい!」


 見ると、両手両膝を地面について苦しそうに嘔吐している青年がいた。

 最年長の男は、そんな青年の背中をさすって声をかけ続けている。


「速人! あれってッ‼」

「う、嘘だろ⁉ しょうじ……正司じゃないかッ!」


 その青年は、二人の同級生で仲の良い『岩田 正司』であった。


「ど、どいて下さいッ!」

「うおッ⁉ なんだッ!」

「おやじさんすんません! こいつ、俺達の仲の良いツレなんっす」


 介抱している最年長者の男を押しのけ、片膝をついて、代わりに健太が正司の背中をさする。 遅れて速人も正司の前に方膝をついて座った。


「ねえ正司! 僕だよ、分かる? 健太だよ」

「俺もいるぜ、正司!」

「ゲホッ! ゲホッ! ……け、健太か? ああ、速人まで……。 お前達、無事だったんだな、よかった……」


 咳き込んでいて辛そうに喋る正司。


「辛かったら喋らなくても良いから、今は楽になるまでじっとしてて」

「ゲホッ! あ、ああ……すまん」


 健太は正司の呼吸が落ち着くまで、ただ無言で背中をさすり続ける。

 おかげで、ゼェゼェとしていた息は治まっていき、酷く辛そうだった呼吸は正常へと戻っていった。


「健太、もういいありがとう。 大分楽になった」

「よ、よかったぁ。 でも、正司までこの街にいるなんて驚いたよ」

「……街、だって?」

「おう、ここにいる俺達はさ、ずっとこの街から出られなくてどうしようかと困っていたんだ」


 速人の言葉に、正司を取り囲む大人達が静かに頷く。


「こんにちは、正司君でいいのかな? 君はあの黄色い水が流れ出る管の中から流れ落ちてきたと聞きましたが、あの管を辿った先は外へと繋がっているのですか? 金髪の彼が話した通り、私達はずっとこの街に閉じ込められていまして、どうしても街の外へと出たいんです。 教えてもらえませんか?」


 取り囲んでいる大人の一人が一歩前に出て正司に話しかけるが、正司はまったく反応を示さず黙ったまま街をキョロキョロと見回している。


「おい、クソガキ! 無視すんじゃねぇ‼ この管を通ったら外へ出られるかどうか聞いているんだ!」

「まあまあ、落ち着いて。 正司君、すみませんね。 ずっとこの街に閉じ込められていて彼も気が立っているんです。 どうかお願いですから私の質問に答えてはもらえないでしょうか」

「正司、俺からも頼む。 いい加減家に帰りたいからよ、黙ってないで答えてくれよ」


 キョロキョロと街を見回していた視線はゆっくりと速人の方へ向くが、その正司の顔は心底驚いた表情をしていた。


「速人……健太、それにあんた達も……。 自分がどういう姿にされているのか、まさか知らないのか?」

「お? ああなるほど、確かに俺達って裸だったわ。 このまま外を出歩くとやっぱまずいよな」

「――違うッ! 俺が言っているのはそんな些細な事じゃない!」


 突然大声で怒鳴る正司に全員が面食らって黙り込む。


「……い、今の俺は……いやあんた達も、得体の知れない注射を刺されて体が人形みたいに小さくなっているんだ」

「はぁ? 小さくだって? おいおいクソガキ、訳の分からん冗談を言ってると――」

「――黙って聞けよッ! 俺が話しているのは冗談なんかではないんだ!」

「こ、このガキ!」

「落ち着け馬鹿者が。 ……すまないな坊主、続きを話してくれや」


 今にも殴りかかろうとしていた男を静止し、続きを促す最年長者の男。

 正司は場が静かになったのを確認して、ポツリポツリと喋り始める。


 ――小さくされてから、自分が体験してきた出来事を。


 無言で話を聞く大人達。 だが、誰もが正司の語る話を信じていない様子。

 額に手を当てて深い溜息を吐く者すらいる。 どの者も興味なさげだ。

 速人でさえ苦笑いを浮かべたまま話を聞いている。


 だが健太だけは真剣に聞いていた。


「俺は、自分をこんな目に遭わせた同級生の女子達に捕まってしまい、その後スーツを着た女の人に手渡された。 そして、この “玩具の街” が置かれた部屋に連れてこられたんだ。 ……いや、片手で握られて持ってこられたって言った方がいいか。 それから俺は――」

「あはは、正司君、大変面白い話をありがとう!」


 一人の男が笑顔でパンパンと両手を叩き、話の途中であるのにも関わらず割って入ってきた。


「もういいですよ。 君が狂っているって事が分かりましたから。 さて皆さん、この後の探索予定なのですが、その前に喉が渇いた者、腹が空いた者がいれば、今の内にこの黄色い水を飲んでおいてください。 この水以外、飲食できる所はありませんからね」


 正司を狂っていると決めつけ、これからの事を話し始める大人達。

 もう正司には何ら一切の期待や興味がなくなったようだ。


「なあ、あんた達。 今から飲もうとしているこの黄色い水が何なのか教えてやろうか?」

「はぁ……もういいですよ、あなたのホラ話は」

「――人間の尿だよ。 ここに俺を掴んで持ってきた女のオシッコだよ。 あの管の繋がる先にある透明なカップの中に俺を入れ、そのままオシッコをされて流されてこの街に来たのだから」

「はは、オシッコですか。 確かに匂いはアンモニア臭いですが、飲めば違うと分かりますよ。 ほんとにあなたは虚言が酷いですね」

「くははっ! もう相手にしなくていいじゃねぇか。 それよりもよ、このクソガキがあの管から来たって事は、やはり出口になる所はこの中じゃねぇのか? いい加減街の探索はやめて、管の中に入ろうぜ」

「……ええ、そうですね。 どうやらこの街から出られそうな場所は、この管の中以外何処にもなさそうですし」

「よし、決まりだな! じゃあ、俺が先に見てきてやるよ。 お前らはそこで待ってな」


 意気揚々と準備体操をして体をほぐし始める男。

 そんな男の姿を、正司は感情のない目をしてただ見つめていた。


「なあ、正司。 冗談を言うのは時と場所を考えろよ? めっちゃ怒らせたじゃねーか」

「はぁ……速人って本当に馬鹿だ。 ごめん、正司。 あの人達は頭が固いから……。 僕は正司の話を信じているよ」

「ああ、別にいいさ。 “どうせすぐに分かる”

「……え⁉ すぐに分かるって……どういう事?」

「ここにオシッコで流される寸前、俺は女が話す独り言を聞いたからだよ」

「ひ、独り言って……なんて言ってたの?」

「ああ、それはな? 俺達を使って “パーティー” をするって」


 ドゴオォォォッッ‼

 正司の言葉のすぐ後、とてつもなく大きな揺れが街を襲う。


「うおっ! なんだ!?」

「皆さん、身を低くして屈んでください! 地震です!」


 地震と聞いて、速人も健太も言われるがまま両手を頭に当てて屈む。


「ヒィィッ! こえーよ! 昨日よりもめっちゃ揺れてる」

「うん、それに全然揺れが収まらない」


 皆が恐怖で屈む中、正司だけは冷静であった。

 ただ呆っと真っ黒な空を見上げている。


 ゴゴゴゴ……

 ゴゴゴ…………

 ゴゴ………………


「じ、地震が収まってきたようですね。 皆さん、もう立ち上がっても大丈夫そうですよ」

「クソったれが! 何だってんだ今の地震はよ!」


 揺れが完全に収まったのを確認して、屈んでいた身を起こし、立ち上がっていく大人達。


「速人、正司、大丈夫そうだって。 僕達も立とうか」

「……お、おう、そうだな」


 そう言って立ち上がる健太と速人の二人。

 だが、正司だけは未だ両膝をついて空を見上げたままであった。


「正司、どうしたの? ずっと上を見上げているけど。 何か見えるの?」


 気になった健太はつられて上を見上げる。 だけどいつもと変わらない真っ黒な空が広がっているだけ。


「ねえ、正司はさっきから何を見ているの? 僕にもおしえ――」


 ガコンッ‼


 突然健太の声をかき消すほどの、大きな音が街の中に響いた。


「な、なんだッ⁉」


 何処から鳴ったのかも分からない大きな音に、大人達は慌てふためく。


 軽いパニック状態。 誰も彼もが……。

 激しい地震の後に、この得体の知れない音だ。 無理もないだろう。


 そんなパニック状態の中、古上が空に指を差しながら大声で叫び出した。


「み、皆ッ! 空を見ろ! 壁が――壁が持ち上がっていっている」


 一斉に空を見上げる。 確かに古上の言う通り、自分達を隔離して閉じ込めていた壁が持ち上がっていた。


「お、おいおい……まじかよ……」


 誰もが持ち上がっていく壁を見ている事しかできない。

 呆然と……ただただ。


 そして、ある程度壁が持ち上がった時、暗闇だった街の中に、眩い光りが日射の如く差し込んだ。


「――うぐぁッ! 目がぁぁッ‼」


 強い光に全員が目を両手で抑えて悶える。

 痛いのだ。 暗闇に目が慣れ過ぎたせいで余計に。


「お客様方、こちらにありますのが調教をしていない、人間を小さくしたばかりの小人でございます。 どうぞ、お近くで御覧になってください」

「まぁ! 調教をしていない小人ですって。 見に行きましょうよ」

「ええ♪」


 ズウゥンッ! ズズゥゥンッッ‼

 大勢の足音から鳴るとてつもない地響き。 それらが街に近づくにつれて大きさが増していく。


「ぐぁあぁ……な、なんだってんだ!」


 キャイキャイ♪ と喜々とした声。 その声を聞いて多くの女性達の声である事が分かる。

 しかし分かるのは声だけだ。 瞼は未だ開けられなく、自分達が今どういう現状なのか何も分からないでいた。


「くッ……うぅ……二人共大丈夫?」

「くっそ……俺は大丈夫だ」


 隣からの速人の声に、健太は無事でよかったと安堵する。


「しょ、正司は! どこ? 無事なの⁉」


 返答がないのを心配して、痛む目を我慢しながら恐る恐る薄目を開けていく。

 すると、ぼんやりとだが姿かたちが見え、正司が無事だった事にほっと胸を撫でおろした。


「良かったぁ、正司も無事だったんだね。 もう、返事してくれよ! 心配したじゃないか」

「……心配? 寧ろこれからの自分を心配した方がいいぞ、健太」

「え? 何を言って――」


《ウワァァァァァッッ‼ な、なんだあれはッ!》


 絶叫に近い誰かの声。

 恐ろしさのあまり上げてしまう悲鳴。


「ま、まじかよ……嘘……だろ…………」


 その後、隣にいる速人からも絶叫ではないが、驚いて思わず呟くような掠れた声が聞こえた。


「――何? どうしたの⁉」

「う、うえ……」

「上? 上って……。 ――えッ! 何あれ⁉」


 上を見上げた健太の視界には、街を取り囲む、逆光を浴びたとても大きな巨大な影が見えた。

 次第に光りに慣れてきた健太の目には、それがなんの影であるのか……はっきりと視認できるようになる。


「ぅぁ……あぁぁ……」


 恐ろしさの余り、健太は言葉を無くしてしまった。

 それは速人も大人達も同じである。


 ――何故なら。


 街を取り囲む巨大な影は、お洒落なパーティードレスを着た、とてつもなく大きな人間の女性達であったから。 速人達よりも年上の女性や、明らかに年下であろう女の子までもがいる。


「わぁ♪ 桜ちゃん、玩具の街の外に小人さんが集まってるよ。 かぁわいいね❤」

「ほんとだ……。 ってか可愛いって――え? これが?」


 そんな女性達の中から、健太達が良く知る同級生の女子達の声が聞こえ、瞬時に声がした方を見上げる。


「うそッ! あれって並木さん? どうしてここにいるの⁉」

「ま、まじかよ……桜もいるじゃねぇか」


 喜色な表情をして、同級生である『並木 りん』が遥か上空から街を見下ろしている。

 その隣に立っている『浅見 桜』も、興味深そうに同じく街を見下ろしていた。


「――ああッ! 見て! 柏木さん達もいる……」

「なッ⁉ ほ、本当だ……」


 りんや桜の横に並んで立つ『柏木 明日香』『天上院 茉由』そして、『白鳥 詩織』の姿までもがある事に気付く。

 その三人は速人達に気付き視線を向けて微笑んではいるが、りんや桜とは違う――また別種の、小馬鹿にした笑みを浮かべているかのように、速人はどうしようもなく感じていた。


「速人、あの三人の表情を見ていい加減分かっただろ? 俺達をこんな目に遭わせたのがあいつらだって」

「う、うそだ……。 冗談だと言ってくれよ……。 何で、どうして柏木が俺達にこんな」


 地面に膝をついて項垂れてしまう速人。

 他にも、大人達の数名が同じく膝をついて驚愕の表情を浮かべている。


「ハハ……ほらな健太。 俺の言った通りになった」

「……へ?」

「どうせすぐに分かるって言った事がだよ」

「あ……うん……」

「まあ、あの時信じた所で、何も変わりはしないんだけど……。 ああ、それと一つアドバイスをすると、逃げ出そうとか逆らったりとか、無駄な抵抗はやめておいた方がいい。 体力を消耗するだけで、どうせ敵わないから……」

「う、うん……。 あんな大きな人達にどうこう出来る訳ないよね……。 あはは……分かってる」


 正司は何もかも諦めた顔をして、遥か上空にいる女性達を見上げている。

 健太も渇いた笑いを出して、ただ見下ろす同級生の女子達を見上げている。



 こうして始まりを迎えてしまったパーティー。

 それは、小さくされた “大量の男達” を餌に、女性達が大いに愉しむ狂ったパーティーだ。


 逃げられない。 逃げられる訳がない。

 街の中にいる者。 特に若い速人達三人は、お客様達にこのパーティーを愉しんでもらうための――大事な物であるため。


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読んでくださり本当にありがとうございます!

突如として開かれたパーティー。

次回は、お客様が愉しむ姿を書いていきます('ω')

②縮小奴隷日記 12話 前編~Party Time~ 奇異な街

Comments

zexcy15さん、ありがとうございます!

広域はんい

次回に期待膨らむ内容でした。 すごく楽しみです。

zexcy15


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