ガヤガヤガヤ……
煌びやかな広いホール内。
そこでは招かれた客人である多くの淑女達が、食事をしながら会話に華を咲かせて楽しんでいた。
四十代、三十代らしき女性達から、高校生、中学生、そしてあきらかにまだ幼い幼女まで。
「おっ……メロンの味も美味い……。 何だこれ、すっごい濃厚じゃん」
「うん! 明日香ちゃんのおすすめした子美味しいね! しあわせ~♪」
「でしょ~! あっ! りん、桜、これもすっごくやばいから食べてみ」
皆が皆、本当に楽しそうだ。
色々な料理を口の中に入れ、誰もが笑顔を浮かべて幸せそうにしている。
生きたままの……元人間を踊り食いして。
「ぷはぁ~! ほらほら遥ちゃん、お口の中を見て? ――あ~んっ! ね? もう何もないないになっちゃったでしょ? 萌にかかれば二匹の小人さんなんて簡単に呑み込めるんだから♪」
「わぁ~ほんとだ! 萌お姉ちゃんすっご~い♪ 遥もやってみる! あ~んっ!」
「――あ、あ、ダメッ! 遥ちゃんは駄目ですよ! 良く噛んでから食べましょうね? こら萌! こんな小さな子の前で何をやってるの! 喉に詰まらせたらどうするんですか」
「……心菜ちゃんの言う通りだと思う。 ただでさえ私でも丸呑みするのは辛いのに」
「ぷぅ……ごめんなさい」
「ほえ? ほんひゃはめなの? (飲んじゃ駄目なの?)」
男を入れた大口を開きながら、キョロキョロと目玉を彷徨わせている幼女。
年上のお姉ちゃん達が言い合っている姿に困惑している様子。
「うん、お利口さんな遥ちゃんは、加恋と心菜お姉ちゃんみたいにモグモグして食べようね」
「う、うん、わひゃった! (わかった)」
「はい、も~ぐも~ぐ」
「キャハハ♪ も~ぐも~ぐ♪」
「あー! 仲間外れにしないでよ。 萌も一緒にもぐもぐする!」
中学生らしき三人のお姉ちゃんと、まだ小さな子供の微笑ましい姿。
心温まる光景なのに、している行為はあまりに残虐という極まりないものである。
何しろこれは、まだ生きていた者を咀嚼し、年若い娘達の歯で命を奪っている行為なのだから。
たっぷりと口内溢れる唾液に絡められ、細かくされるという残忍すぎる行為なのだから……。
そして、何度か咀嚼を繰り返したのち、程よく飲み込みやすいサイズになったのか、
と、四人の少女の喉が同時に鳴った。
今頃飲み込まれた者は、あの少女達のポッコリ膨らんだお腹の中で漂っているはずだ。
それは、先ほど生きたまま丸呑みされた者も同じく。
後はお腹の中でじわじわ溶かされ、あの少女達の成長の糧とされていくだけ。
まだ成長盛りの子供なのだから、おそらくは……強い胃酸によって割とすぐに跡形もなく消化されていくだろう。
そんな光景を、私、安藤 菜穂(あんどう なほ)は一人離れたテーブル席に座り、スープを啜りながらぼんやりと眺めていた。
食事を愉しんでいる女性客らの膨らんだお腹を見て。
ズズ……ズズズッ
「……ふぅ。 今日だけでいったい何人の男性が、私達人間の身体の犠牲になったのでしょうか……」
ポソリと独り言を呟き、時間を忘れて女性達の姿を眺めていると、ふいに私を呼びかける声がした。
「な……ほ…………さん……。 ――菜穂さん!」
「ハッ⁉ ――えっ?」
声をした方に振り向くと、長らく席を外していたはずの友人が私の向かい側の席に座っていた。
……いつの間に戻ってきていたのだろうか。
「あ、ごめんなさい宮子さん、戻ってきていたのを気付かなくって……。 もしかして、何度も声をかけてくれていらしたの?」
「いいえ、ついさっき戻ってきた所。 お手洗いがすごく混雑してて……。 っで、戻ってきたら菜穂さん上の空じゃない? ……何か悩み事?」
心配げに私を見つめる友人の『黒岩 宮子』(くろいわ みやこ)さん。
友人と言っても、彼女とは古くから付き合いがある訳じゃない。
エロステで何度も顔を合わせている内に話しかけるようになり、意気投合して仲良くなった仲だ。
なのでまだ友人歴は浅いと言えば浅い。 だけども、学生時からの友人と比べると何でも話せる仲。
だって私と同じ趣味嗜好を持つ、稀有な人だから。
まあ、それを言ったらこの場にいる全員が、同じ趣を持つ仲間ではあるのだけども……。
「……ほさん……菜穂さん?」
「――あっ! ごめんなさい、私ったらまた……」
「本当にどうしたの? もしかして気分が優れないとか」
「あっ! いえ、そういう訳じゃないんです。 ただちょっとおかしな事を考えてしまいまして……」
「おかしな事?」
「ええ、自分でもこんな事を考えているなんて変だなとは自覚しているのですが……」
「ちょっと! すごく気になる。 話せる内容なら聞かせてよ菜穂さん」
「はい、別に構わないのですが……。 馬鹿馬鹿しい話ですが、わ、笑わないで下さいね?」
「もちろん! 約束するわ!」
私は俯きながら、考えていた事を宮子さんに話す。
料理となった人間の男性が私達女性に食べられ、その後、どうなるのだろうかと。
これは、ただ人間を小さくしただけではない物。
身体をペチャンコに潰したとしても、自然と元の姿に戻る不思議な生き物。
だから、お腹の中で消化されても、もしかしたら意識があるのではなかろうかと。
「と、言った感じで、皆さんの膨らんだお腹を見ていたら、変に気になってしまいまして……。 ――ん? 宮子さん?」
話し終わっても返答がないのを不思議に思い、俯いていた顔をあげて宮子さんの方をちらりと見る。
するとどうだろう、顔を真っ赤にプルプルと肩を震わせて、今にも吹き出そうにしているではないか。
「――ぷふっ! アハハハッ!」
というか、吹き出す以前に爆笑しだした。
「ちょっと宮子さん、酷いわ! 笑わないでとお願いしましたのに!」
「ご、ごめんね、あまりにも菜穂さんがおかしな事を言うから……ぶふぅ! ダメ――アハハハ」
「も、もうっ! また笑って」
涙を流しながら笑う宮子さん。
本当に可笑しそうに笑うものだから私は恥ずかしくなり、言うべきじゃなかったと後悔する。
「アハハハ……ハハ……あっ…………」
せめてもの意趣返しに、精一杯ジト目で睨んでいる私に気づいたのか、宮子さんはバツが悪そうにしだす。
こほんっと咳払いをし、体裁を取り繕おうとしているが、もう今更だ。
「あ……アハハ……ほ、本当にごめさんなさい菜穂さん。 まさかそういった類の話だとは思わなくて」
「馬鹿馬鹿しい話だと前もって言いましたのに……そんなに笑うなんて酷いですわ」
「はい、反省します……。 でも、笑ってしまって何だけど、確かに菜穂さんのように考えてみると面白いわね。 私、この者らを食べたら消化して、そのまま下(しも)の方から出てくるだけだと思ってたから」
「はい、ここにいる皆さんも普通はそういう認識だとは思いますわ。 しかし現に、食すと美容効果がはっきりと身体に出てきますよね? ほら、お肌が若返ったり、あと……お胸が若干膨らんだり……お尻のお肉も……」
「確かに! 私も小人を食べるようになってから、色々な所が成長してるわ」
確認するように、宮子さんはモニュモニュと自分の胸を揉んでいる。
はしたない行為だが、この場では誰も変には思わない。
ここは、私達女性の淫欲を発散する場でもあるから。
「だから私達が食べた男性は、確実に人間の身体の箇所の脂肪となっているのだと思うのです。 この料理となった男性の持つ再生力が、私の肌に潤い等を与えていらしてくれておりますから。 実際、こういった効果が持続しているって事は、つまり生きていらしているのでは? と思いまして」
私も宮子さんと同じく優しく胸を揉む。
過去、自分が食べてきた男性達が脂肪となった胸を触り、今も意識があるの? と問いかけるみたく。
「うーん、そう考えてみると楽しいわね。 ふふふっ♪」
お互いの顔をみやって上品に笑いあう。
「なら、口の中で咀嚼し、肉の塊にした男も実は生きていたって事かな? とてもじゃないけどさすがに? と思うけど……。 ああ、でも、エロステにある小さな男は普通じゃないものね。 うーん、謎だわ……」
私の与太話で宮子さんまで深く考え込んでしまった。
眉間に皺を寄せたりもして、何だかすごく申し訳ない気持ちになる……。
「あの、そこまで考えて頂かなくても……。 ごめんなさい宮子さん、こんな与太話に付き合わせてしまって」
「へ? あ、ああ良いわよ。 考えてたら私も楽しくなってきたから。 でも意識があったら面白いわね。 私達の身体の脂肪となっても……ずっと……ずっと」
「ふふ、そうですね♪」
宮子さんの言葉に頷き、何気なしにテーブルの上に置いてある残り一口となったスープをスプーンで掬い、目の前まで持ち上げる。
《ゴボッ……ゴポ…………》
そんな掬ったスプーンの中には、ゴツゴツとした一口サイズのお肉が入っている。
“スープの具” として入っている、頭だけの生きた男性が。
「あなたも私の脂肪となって生きていられれば良いわね。 あ~んっ!」
そう言って私は上品な仕草でスプーンを咥え、あえて具となった男性の頭を噛まずにスープごと飲み込みこんだ。
出来れば自分の身体の中で、意識が残っていればいいなと思って。
「ん……んくっ! ……ふぅ、美味しかったですわ。 ごちそうさまでした♪」
テーブルの上に置いたお皿の上には、もうなにもない。
すっかり全部平らげてしまった。
全部が全部、宮子さんと私のお腹の中。
今日は太る事も気にせずたくさん選んで、お皿の上に載せてテーブルまで持ってきたというのに。
「ふぅ……話は変わるけど、こうして空になったお皿を見ると、我ながらよく食べれたわ……ほんと」
「ふふ、二人で食べきれないかも? と話していましたのにね」
ぽこっと膨らんだお腹をさする。
さすがに食べすぎたのか、ちょっとお腹が痛くなってきた。
(一度出しに行った方がいいかしら……)
正直、我慢してても痛みがおさまりそうにない。
ならいっその事、出したい時に出した方が断然良い。
なので宮子さんには申し訳ないが、一旦席を外す旨を伝えた。 化粧室に行きたいと。
「ごめんなさい。 食べて早々席を離れさせてもらって」
「気にしないで菜穂さん。 私なんて食事中に化粧室に行かせてもらったのだから。 戻ったら腹ごなしに食後のコーヒーを一緒に飲みましょうか」
「ええ、是非。 では、少しばかり席を外しますね」
「あっ! そうそう菜穂さん!」
「え?」
立ち上がり向かおうとした所、急に宮子さんに呼び止められた。
「実は戻ってきた時に言おうとして忘れてたけど、菜穂さん、化粧室に行ったら多分驚くと思う」
「……私が驚く? あの、それはどういう……」
「まあ、行ったらすぐに分かるわ。 別に長くなってもいいから、再会を楽しんできて」
「え? 再会?」
言ってる意味が分からず聞こうとするが、宮子さんは「行ってらっしゃい」とフリフリ手を振っている。
どうやらこれ以上話すつもりはないようだ。
「……で、では、行ってきます……」
怪訝に思いつつも、とりあえず私は一礼して化粧室に向かうことにした。
お腹の痛みの他に、尿意の方も酷くなってきてしまったから……。
――こうしていそいそと菜穂は、パーティー会場を離れていくのであった。
体内に溜まった物を排泄する場へと向かいに。