◇
コツコツコツ……
長い廊下内に響くヒールの足音。
私は宮子さんが言った言葉を思い出しながら、少し足早に歩いていた。
されど、他人からみられてもマナーが悪く思われないよう気を配りながら。
(再会を楽しむ? 化粧室に行くだけなのに、宮子さんはいったい何を……)
まったくの意味不明。 いくら考えても……。
でもそれは、化粧室に入った事によってすぐに分かる事になる。
一室一室の個室に貼ってある “男性の写真” を見た事によって、 “行ったら分かる” と言っていた、宮子さんのその言葉の意味が。
「混雑していたと宮子さんはおっしゃっておりましたけど、私以外誰もいませんね。 ん? ――えっ⁉」
ビックリして、思わず大きな声が出てしまった。
別に女性が使用する化粧室に、男性の写真が貼ってある事に今更驚いた訳ではない。
ここの化粧室の個室には、備品とされた男性の写真や、その者の人生の履歴が貼ってあるのは当然の事であるから。
単純にこれらが貼ってある理由は、 気に入った容姿、人間であった時の男性の職業等を見て読んで、使用者の私達が選べるようにしてあるだけ。
今日はどれを使おうかなと……。 どこかの教授であった者や、医者、本当に色々な職業な方々を、その日、その時の気分で、わざわざ個室に入って確認しなくてもいいように。
なら、何に驚いたのかというと……。
「う、うそ……塩木……議員?」
私の良く知る人物の写真が個室のドアに貼ってあったからだ。
私が以前公設秘書としてお傍に付いていた、『塩木 克久』議員の写真が。
「塩木議員だけじゃないですわ、他の議員の方々まで……」
五つの個室のドアに貼ってある写真は、どれもが良く知っている議員の方々であった。
私が彼らの汚職を世間に晒し、そして追い落とした者達。
「ひと月前ぐらいから彼らは行方知れずとなり、海外に逃亡したのではないか? と報道では流れていましたけど……まさか、こんな場所に備品として置かれ――いえ、働かれていらしたとは……」
驚きである。 そして同時に、この化粧室が混雑していた理由に納得した。
この上質なクラスの職業に就いていた男性の備品を、これまで一度もここに置かれていたためしはないから。
だから皆さんは一度は使ってみたくて、並ばれていたのだろう。
人間であった時の偉い方を、自分の股間やお尻の清掃夫として。
……だって、私もこの備品を使ってみたいと思ってしまっているのだから。
「ふふ、うふふ……困りましたわ、どの個室を使用するか迷ってしまいます」
上機嫌になって五つの個室のドアに貼られた写真を見比べる。
私にとってはどれも魅力に思えてしまう。
どの個室を使ったとしても、言いようのない征服感を掻き立たせてくれるはずだ。
でも、その中でも私の下腹部を一番疼かせるのが彼。
だから私は、
「うん、決めましたわ。 やはり一番付き合いのある彼の個室を使いましょうか。 せっかく備品となられているのですもの。 ほぼ毎日顔を合わせていた私が使ってあげなければ失礼になってしまいますからね。 うふふ❤」
彼――塩木議員がいる個室を使おうと決めた。
心のまま、ただ単純に気持ち良く排泄が出来そうであるゆえ。
使う個室を決めた私は、さっそく彼の住んでいる家に土足であがる。
ここは彼の家でもあるが、私のような人間の女性が致す、プライベート空間でもあるからだ。
(いえ……逆ですわね。 女性のプライベートな空間に、彼が家として住んでいるだけですわね)
ドアを開け、個室の中へ入った瞬間、閉じていた便座の蓋が開き出した。
どうぞお座り下さいと、私を歓迎するかのように。
「まぁっ♪ フフフ……」
思わず笑いをこぼしてしまった。
中にいるであろう彼が哀れで。 ――今からこの便器を使用するのが楽しみすぎて。
一歩、二歩、僅かそれだけの歩みで、便器の前に到達した。
そして、真上から便器の中を覗き込むと。
≪居た……≫
彼が……塩木議員がそこにいた。
「――なッ⁉ あ……安藤……くん…………?」
便器内部のノズルの上で座ったまま、とても驚いた表情で私を見上げて……。
「……ハァ❤ ふふ……うふふふ♪」
期待通りの反応を示す彼に、どうしても口角が上がり、熱い吐息までも吐いてしまう。
モジモジと、無意識に左右の太もも同士を擦り合わせてしまってもいる。
――それは、性的興奮に似た何か。
卑猥な物(彼)を見て、明らかに私の身体が反応をしてしまっていた。
「そ、そんな! 何故安藤君がここに……」
ハッと桃色の景色の中にいた意識は、彼の声によって引き戻される。
「なぁ、安藤君! どうして君がここにいるんだ!」
改めて彼に意識を戻すと、ピーピーと雛鳥みたく、一生懸命に私に向けて便器の中から囀っている塩木議員。
ああ、なんて素敵な姿なのだろうか。
ああ、なんて私の淫欲を掻き立たせる姿なのだろうか。
彼が人間として在った時は、嫌悪すらしていたはずなのに、今の彼はとても好ましく思えてしまう。
「安藤君、私の声が聞こえているんだろ! 頼むから返事を……。 ――なッ⁉」
ひたすら私に呼びかけていた塩木議員は、突然と絶句する。
きっと、便器の中から私を見上げている形だから、見えてしまったのだろう。
私の悲惨な状態になりつつあるスカートの中身を。
オマンコからの愛液によって、ジワジワと “シミが広がる下着” を。
「はんぅ……❤」
小指を甘噛みしつつ、ブルリと身体が震えた。
今の私の顔は、多分とても他人様に見せられない蕩けた表情をしているだろう。
~恥ずかしい。
彼なんかに、愛液でシミを作った下着を見られて。
~見ないで。
こんなはしたない自分の姿を。
そう思いつつも、私はスカートの中身を隠そうともしない。
寧ろ、腰をもっと前に出して見せつけている。
彼の驚愕した視線が、私のいやらしいオマンコを刺激するものだから……。
「……うあ……ぁぁ……」
――ああ、ずっと私の下着を下から覗いてる。 ……ほんといけない人。
気になって仕方がないのよね? あなたが人間だった頃、嫌がる私に構わず触ったり、無理やりスカートを脱がせようとしていらしたのだから。
まあ、あの時は大きな声を出して、難を逃れて助かりましたけれども。
でも、今のあなたになら見られても……触れてもいい。
いっそ、私の方から触らせてあげる……。
例え、嫌だと後悔しようが無理やりに。
「塩木議員、いいえ塩木さん。 先ほどから不躾な視線を感じるのだけれど、少しは遠慮ぐらいしたらどうですか?」
「――ハッ! ……す、すまん……」
わざと冷ややかな目つきで前屈みになって話しかけると、彼は慌てて視線を逸らした。
見せつけているのは私の方だというのに。
「ふふ♪ ごめんなさい、冗談ですよ。 今のあなたに見られても、私は何とも思いませんから」
「あ、安藤君……今の私にって…………」
「だってそうでしょう? 今のあなたはこの便器の機能の一つである備品なのですから。 だから私は気にはしませんよ? まったく、これっぽっちも」
「なッ……」
逸らした顔を、また再度私の方へ向ける。
こちらを見つめる彼の表情は、何故か心底信じられないといった表情をしていた。
「何を驚いているのですか? この便器をご使用なさったお客様も、あなたがいるのに気になんてしていなかったでしょう?」
「安藤君のいう通り、確かにこれまで多くのお客人が、私が中にいるのにも関わらず、何食わぬ顔をしてここで用を足されていた。 ――だが! 安藤君は別だろ? 私と君は知った仲ではないか! それなのに、君も……ここでするのか? 私が見ている前で、その……」
「え? もちろんしますわ。 寧ろするつもりでこの個室に入ってきたのですけど」
「は? ……え、え?」
彼はポカンと口を開けている。
人がこういった個室の中に入ってくる理由は一つしかないというのに――お馬鹿さんなのかしら。
でも、愛らしい。 お馬鹿な人ほど可愛らしいと誰かがおっしゃっていらしたが、私も心からそう思う。 哀れを通り越して……。
「……という事ですので、さっそく使わせてもらいますわね?」
「あ、安藤君! 冗談はよしてくれ、お願いだからッ‼」
必死で便器の中から呼びかけ続ける塩木。 だというのにくるりと巨体が後ろを向き、ドレスのスカートをたくし上げてしまう。
それによって現れるは、黒い大人らしさのある下着。
情欲をそそる官能的なシアータイツを纏った、はち切れんばかりの肉々しいお尻が、塩木の頭上に堂々と姿を現した。
「そ、そうか分かったぞっ! 私が君にセクハラ行為をしたから怒っているのだろう? ――あ、謝る! あの時君に酷い事をしたのは全面的に私が悪かった! 反省している! だ、だから、こんな事はやめて私を助けて! お願いだから助けてくれぇぇ!」
声が聞こえたのか、頭だけを動かし、ちらりと塩木の方を振り向く菜穂。
≪自分の声が届いてくれた≫
そう思ったのに、菜穂はクスリと鼻で笑い、シアータイツと下着を一気にずり下してしまう。
まるで、赦してくれないと行動で示すかのように……。
「うあ……ぁ……」
ぷるんっと揺れ動く尻の肉。
大人らしさのある女性特有の発達したお尻が、塩木の頭上で重々しく波打っている。
「そんな……私と君は知った仲なのに……どうして……」
彼、塩木はこれまで使用者に対して声をかけた事は一度もない。
例え使用者が子供であっても、備品となりそれに徹していた。
一切の不快感を与えず、気持ちよく致せてもらえるように。
そうしていれば、自分の評判がいつかは白銀 いちびの耳に入り、この劣悪な環境から解放してくれるのだと、疑う事なく信じているがゆえ。
これは、実際に白銀 いちびの口から言われた言葉である。 『気に入られれば化粧室の備品という立場から解放してやろう』と。
だから守っていた。 喋ることを一切禁じ、どんな扱い方をされようが我慢をして便器の備品となり徹していた。
……これが、今の現状から解放される唯一の道であるため。
だけど、塩木は始めて使用者に向けて声をかけた。
良く知った仲の人間が、この便器を使いに来たから。
――そう、知った仲なのだ。 だから甘えた。
自分を貶(おとし)めた元秘書である安藤 菜穂という女に。
これまで充分に罰は受けてきたのだから、もう赦してくれと……。
……しかし、
「さて、準備が整いましたわ。 たくさんこの中に溜め込んで来ましたから、しっかり御覧になって、後始末の清掃をお願いしますわね」
いくら謝罪した所で既に菜穂は致す気満々らしく、塩木の頭上でフリフリと腰を振っている。
菜穂自身が言ったように、汚物を溜め込んだ馬鹿みたいにでかすぎるお尻を……。
「たすけて……お願いだから……ここから私を…………」
ノズルの上で両膝をつき、神に祈るかの恰好で菜穂のお尻を見上げる塩木。
彼には、もうこうする他なかったからだ。
反省していると、体全部で表現をして、菜穂に……女神に見てもらうしか。
「あら? うふふ♪ まあまあっ! 祈る恰好なんかして……そんなに早くしてほしいのね」
そんな塩木の姿を見て、にこやかに笑みを浮かべている。
あまりに卑屈で矮小なこの姿が、菜穂の嗜虐心という琴線に振れてしまったようだ。
「じゃあ、楽しみにして頂いているみたいですし失礼して、遠慮なく座らせてもらいますわ。 “塩木便器” に。 ――よいっ……しょ♪」
「ちがッ! 違うッ‼ 安藤君! そうじゃ――」
もはや塩木の事を便器と呼んで、ゆっくりと腰を下ろそうとしてくる。
「うああ……やめてくれ……助けてくれよぉぉ! あんどうくんッ! 安藤君ッッ‼」
轟轟と迫ってくる菜穂のお尻。
「ぁ……ぁぁ――あ”あ”あ”ぁッ!」
その間、塩木は悲しみ含んだ叫び声をひたすらに上げ続けるのであった。
便器内――そして塩木の体全部に、菜穂のお尻の影が覆い被さっても……。
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読んでいただき、ありがとうございます!
人間だった頃、仕事の中とはいえ毎日と顔を合わせて会話をしていた女性。
そんなお知り合いのお尻に、ビデとして働かされるのは辛いものがありますね('ω')
広域はんい
2023-01-22 05:24:37 +0000 UTC喆 张
2023-01-21 22:39:37 +0000 UTC広域はんい
2022-12-25 12:42:41 +0000 UTCzexcy15
2022-12-25 12:10:34 +0000 UTC