◇
(しちゃった、やってしまった、彼の前でおしっこを……)
良く知る知人の前で痴態をさらし、お尻の下の特等席で出す所を余すところなくみられた。
そう思ったら、大きく全身が身震いした。
「んぅ❤」
力強く放物線を描いていたおしっこは弱まりをみせ、今ではポトリ、ポトリと雫が垂れ落ちている。
そんな落ちゆく尿の雫も次第におさまり、今やもう、一滴の雫すらも出ない。
――でも、まだ終わりではない。
私がこのお手洗いにきた目的は、おしっこをするだけじゃなく、主に次にする行為を目的に来たのだから。
なので私は下腹部に力を入れる。
奮起をし、下品な息み声を上げて。
「……な……ほさ……やめ…………」
息んだ瞬間、下から彼の必死そうな声がうっすら聞こえてきた。
何を言っているのか小さくて聞こえ辛いが、まあ大方やめてとか叫んでいるのだろう。
「……ねぇ、ちょっと黙っててもらえないかしら? 気が散って出しにくいですから。 ――ふっぅんぅぅッ!」
「まっ…………たのむ……から…………」
彼の話す事にさらさら興味のない私は、気にもせずに息み続ける。
嫌がる彼に、早く私の腸内にある “素敵な物” を見せたくて。
(~ああ、待っててね? すぐに出してあげますからね――)
「……そ……ぁぁ……ああ…………」
「――ッッ!」
肛門が下品に哮(たけ)りをあげた。
おそらく、少量の液状のうんちが飛び散った音。
なおも息み続けると、今度はさっきと違った音色で、肛門の穴から液状のうんちが外へ流れ出る感触がした。
「ハァハァ……下痢をしていたのかしら……私……。 冷たい水分の摂りすぎ? それとも昨日食べた食事のせい?」
息むのに少し疲れた私は、休憩がてら前日に食べていた食事を思い浮かべる。
朝は良く覚えている。 いつも納豆ご飯とお味噌汁と野菜なため。
お昼は多分オムライスとコーンスープだったはず。
そして夜はこのお店で食事を取っていた。
パーティーの前日から私はエロステに宿泊していたから。
「えっと、何を食べてたかしら……? ――あ、そうそう、仲の良いお友達のすき焼きセットでしたわ! 昨日の夜に食べたばかりなのに、もう記憶が薄れていた事にビックリ」
思い出した事により、味や美味しそうな匂い、そして食用にされた二人の男性の記憶が鮮明に蘇ってくる。
お世辞抜きに美味だった。 牛のお肉は噛まずして舌の上で蕩けてしまうし、お鍋に入っている野菜類は、濃い味付けにも負けず、しっかりと素材の味がしていた。
だけど何よりも、二つの食用にされた男性が美味しかった。
「ふふ、親友だったらしいけど、あの丸呑みした子、あの後お友達に会えたのかしら」
すき焼き鍋とは違う別皿に載せられて、私が待つテーブルの上に置かれたお二人。
一人は具材と一緒に口の中で咀嚼して食べた。
噛めば噛むほど甘さが際立つから念入りに。
残ったもう一人は、寂しそうに泣くから生卵に包んで噛まずに呑み込んであげた。
先に食べた子は原型は留めていないけど、せめて私のお腹の中で会わせてあげようと思って。
「もしかしたらあの子のせいで下痢をしたのかしら……。 でも丸呑みで下痢をしたなんて事、今まで一度もなかったのだけど……。 う~ん、やはり冷たい水分の摂りすぎかもしれませんね。 うん、これから少し控えて気を付けないと」
色々考えた結果、私はそう結論付ける。
「ふぅ……それにしても臭いですね……」
現実に意識を戻す。
さすがの下痢便というべきか、いつもの固形のうんちとは違って臭いがキツイ。
「あぁそういえば彼は……」
ふと彼に意識を向ける。 いつのまにか静かになっていたので忘れていた。
「大丈夫ですか? 塩木さん。 ごめんなさい、私、下痢だったらしく臭かったですよね。 道理でお腹が痛かった訳です」
彼に謝っているが、別に心配をしてではない。
この後洗浄という役目をしてもらうつもりにしているので、臭い匂いで意識を失っていないか不安になって声をかけただけ。
せっかくの知人の備品。 絶対に使いたいから。
「……ゴホッ……ゴホッ……な……も……だ」
耳を澄まして静かにしていると、彼の咳き込む声が微かに聞こえた。
「ああ良かった、大丈夫そうですね。 まだ何か喋られているようですけど、ごめんなさい、まだまだ出そうですので、頑張ってくださいね? 私も頑張りますから」
彼が無事だと分かった私は、腸内に残っているものを出そうとまた息む。
ギュルギュルと腹鳴りと共に、下品な音を肛門の穴から無遠慮にこき立てて。
◆
「うぁぁ……あ、安藤君はまだ出すつもりなのか……」
口を開けっぱなしだった肛門は、彼女の息む声を合図にいっそう大きく広がりだした。
そしてすぐその穴の中から、液状と化した汚物が流れるように落ちてゆく。
眼前で降りそそぐ下痢便。
それはあまりにも臭くて、普段と同じように呼吸をしていたら意識を失ってしまいそうだ。
「――ゴホッ! ゴフッ! ゴフッ! くぅぁ…………」
私のいるこの便器で大便をしていた人間は、何も安藤君が始めてではない。
幾人もの女性達が、この便器の中に大便を産み落としていった。
当然どの女性のものも臭い事には変わりない。
だが、耐えられるほどだった。 ――安藤君の出す物ほどではなかった。
ここまで濃厚な毒ガスを放つ物ほどでは……。
「あ……ぐぁ……な、何を食ったらこんな臭いになるんだ……」
時折肛門が爆発して、便器内に細かな液状の便を撒き散らしている。
便器内にあった透き通った水は、小便で黄色く染められ、そして今や下痢便で泥状と化し見る影もない。
かように綺麗な水だった中へ、なおも安藤君は大便で執拗に汚し続けている。
いわばこの便器は私の住む家。
なのに彼女は遠慮なしに汚していく。
私の生活している空間を自由に使い、えげつない臭いを撒き散らして。
気づけば、安藤君の肛門から塊のある便が産み落とされようとしていた。
それはみるみる内に蛇のような形状を作りだしていく。
――所々 “コーン” が混じった、長細い大便を。
安藤君が作ったご立派な大便。 得意げに悠々と肛門にぶら下がっている。
しかし柔らかすぎて重力に耐えられなかったらしく、途中でボトッと千切れる。
――だから見えた。
そんな千切れた箇所の断面――安藤君の肛門にぶら下がった大便の中に、コーンとはまた別種の “異物” が混じっているのが。
「なんだあれは……。 ん? ――なっ⁉ もしかして、これは――」
異物は――どう見ても人の形をしている。
ゆえにこそ、すぐに理解できた。
あれは自分と同じ、小さくされた人間であると……。
「あ、安藤君も “便秘” のために人を……? ああ……いや……これは――」
そう考えるが、瞬時に違うと否定する。
あれはそういう用途で入れたものではないと。
なぜなら人の形は保ってはいるが、えぐく皮膚が焼きただれた……骨が剥き出しの亡骸だったからだ。
「食われたんだ……。 この男は安藤君に……」
きっとそうなのだろう。 この男は食べられ、消化されずに彼女の体内を巡りに巡ってそのまま出てきたのだ。
大便と一緒に……いいや――大便として肛門の穴から。
「ハァハァ……」
肛門にぶら下がったままの人間が混じった大便は、彼女の息み声と共に物凄い勢いで押し出されるように動き出した。
大穴からムリムリと、連なる長細い形状をまた作りみせて。
「ああぁぁ……うあぁぁ…………」
そんな大便は哀れにも泥水の中に落とされ、静かに沈んでいく。
先に出された彼女の大便に歓迎されるかのように、ずぶずぶ呑み込まれて。
「ハァ……ハァ……。 ッふぅ~! お腹が軽くなりました」
全部出し終えたのか、大きく広がったままでいた肛門の穴は緩やかに萎んでゆく。
時折、クパクパ口開いたりをしていたが、次第にそれすらも無くなり、完全に蓋をするかの如く塞がる。
「終わった……?」
おそらくはそうだ。
息み上げていた声はすっかり鳴りを潜め、あれほど激しくガスや汚物を撒き散らしていた肛門は、静謐(せいひつ)を湛えたままであったから。
……しかし、私からすれば終わりではない。
寧ろ――始まり。
「ぅぁぁ…………」
ほら、真上からボタンを押す音が聞こえ、私がいる場はガタガタ音を立てて動き出した。
前へ前へ、排泄したばかりの肛門の真下をくぐり抜け、小便をした彼女の女性器の真下まで……。
安藤君は私を使用するためにボタンを押したのだ。
トイレの備品として使うために。
排泄したばかりの汚れを掃除させるために……。
「本当に今から安藤君は私を使おうとしているんだな……」
手を伸ばせば届く距離にある女性器は、そうだと言わんばかりにさも誇らしげ。
べっとりとマンコの周りに尿の汚れを湛えて。
「……ああ、これを綺麗にしなければならないのか」
汚れを舐め取らなければならない――するしかないのは自分でも分かっている。
私はその為にここに置かれているのだから。
しかし、中々その一歩を踏み出せない。
決して他人ではない良く知る人間のマンコを、自ら便器の一部の機能となり……舐めて綺麗にするのは。
――してしまうと、心の奥にあった “人間としての大事な物” がなくなってしまいそうで……。
「あれ……? いつもはボタンを押すと洗浄が始まるのですが」
頭上から不満そうな安藤君の声がしたのち、便座を軋み揺らしていきなり両の太ももが開きだした。
よって暗かった便器内には、眩い光が差し込む。
「う~ん、ちゃんと洗浄ノズルは私の股間前まで動いていますね。 でも、肝心の洗浄が作動していないようですが……どうしてでしょうか?」
両股を広げた遥か上空から覗く安藤君は、まるで私を壊れた物のように喋っている。
本当に、本当に心底不思議そうに……。
「ぅぁぁ……ぁぁぁ」
私を覗くその表情は何とも無表情で、黙ってこちらを凝視したまま。
それが私からすればとても悲しく、また酷く恐ろしかった。
この感情のこもっていない目。
まさしくこの目は――私を備え付けられた便器の一部として見ているようで。
「………………」
ただただ彼女は私が動くのを待っている。
何も言わない。 何も言ってくれない。
言わずとも動いて行動しろと、目で語っているかのよう。
こんなに黙ったまま見つめられ続けていると、何故だか安藤君に調教されているかのような気持ちになる。
自ら便器の一部に成り果てろと……。
「あぁぁ……」
――耐えられなかった。
安藤君が私を黙って見るその目に。
――これ以上見られたくはなかった。
付き合いのあった人間から、あたかも物のように。
「うぁ……ぁぁ……」
安藤君の目から逃れるため視線を前へ向けると、相変わらず眼前には巨大なマンコが聳えている。
たっぷりと小便の蜜で汚れたマンコが、「さあおいで」と私を待っている。
「……やるしかないのか」
思えばさっきから彼女は、私を使う事を楽しみにしている様子だった。
なので私が綺麗にしない限り、ずっとこのままだろう。
「うぅ……臭い…………」
だから……だから私は、誘われるまま徐々に顔を近づけていく。
舌を出し、眼前に聳える巨大なマンコに向けて。
結局私には、こうする他なかったから。
自ら――便器の備品となりにいくしか……。