「うわぁッ! 地震か!」
「これは地震ではありませんので落ち着いて下さい、この揺れはご婦人様が私達を使用しにお越しになられた、ただ歩かれている揺れですから」
「はぁ? 歩かれてる揺れって――」
「ほら茂さん、来られましたよ」
「――なッ⁉」
正面にあるカーテンが開き、そして室内に入ってきた二人の人間を見て、俺は言葉を失う。
それはあまりにも……あまりにも大きすぎる女が室内に入ってきたからだ。
「花園様、こちらになります」
「はい♪」
一歩……たった一歩地面を踏み歩く度にとてつもない揺れを巻き起こす。
女性二人がこちらを近づくにつれ、室内に漂う空気が暴風となって吹き荒れる。
「おぉぉわああぁぁぁッ!」
歩き、そして自分の正面に立ち止まった二人。
一人はゆるふわな髪をしたスーツを着た女性。
そしてもう一人は、同じくゆるふわな髪をしているが、されど胸元まで髪を伸ばしている、真っ白な服に身を包んだ女性。
そんな二人の女性の太ももである脂肪が、目の前で波打ち震えている。
「な……なななッ……そんな…………」
真っ白な服を着た女の手が、ガラス越しのテーブルに落ちてきた。
おそらくはただ手を乗せただけだろうが、しかしその手にある爪――長いネイルを見てさらに驚かされる。
なぜなら、ネイルに描かれた細かな模様一つをとっても、自分よりも大きいからだ。
ネイル自体もそうだ。 俺から見ると、まるでマンションのような建造物みたくでかい。
それほどに違う。
俺とこの女の体躯の差が――桁違いに……。
口をあんぐりと開けて呆ける村井茂をよそに、当のネイルの主である女性が上半身を傾け始める。
空気を――大気を切り裂いて。
「わぁ♪ これが『マイクロモルモット』何ですね」
「はい、名称が長いから、私たちは略して『モル』ちゃんって呼んでます」
茂がいる茶碗サイズのガラスで出来た器を覗き込む、白い服を着た『花園 弥生』(はなぞの やよい)。
それに答えるのは、エロステの職員である『奥村 香』(おくむら かおり)であった。
「始めて拝見しましたわ。 噂では聞いていたけど、本当に埃みたいに小っちゃい❤」
興味津々といった様子でガラスの器の中を見回している。
ただ見ているだけ。
だがその光景は、茂からすれば悍ましく、そして心の底から畏怖するものであった。
何故なら自分よりも何倍、何十倍、何百何千何万ともある巨大な目玉が、ギョロギョロと彷徨い動いているのだ。
まるで宇宙にある銀河みたく、恐ろしさを合わせ持った美しい眼球が……。
あまりに美しく雄大であるものだから、眼球の奥深くに吸い込まれてしまいそうな錯覚をしてしまうほどだ。
そしてこの声。
真近くであるガラス越しに発せられる声であるために、大気が爆発し、茂の小さな小さな鼓膜を音の振動で痛いほど刺激させる。
「ッがぁぁ……あぁがぁぁ」
普段と変わらぬ特段大きくない喋る声量であるのにも関わらず、キーンという耳鳴りを発症させるほどの。
「うーん、小さな点にしか見えない。 本当にこれは人間だったのですか?」
「はい、紛れもなく最近まで私達と同じ人間の男性だった人達ですよ~」
「ダニみたい……ううん、ダニよりももっと小さいなんて……。 これが同じ人間だったとはとても信じられないわ」
「あはは、モルちゃんを始めて見た皆さんも良くおっしゃられていますね♪」
また、今の茂と女との体格差が桁外れに違うためか、弥生と香の声質が野太く聞こえていた。
人間同士が聞くと、二人の発する声は鈴を転がしたような綺麗な声色だというのに。
「ぁぁ……うあぁ……ぁぁぁ………そんな、嘘だ…………」
「どうです? 私の言った通りだったでしょう?」
両耳を手で塞いで驚き固まっている横で、得意げに俺に話しかける広斗。
確かに広斗のいう通り、同じ人間とは到底思えなかった。
それは相手側の女からしても同じなようで、実際そういった会話をしている。
「あ……あの女二人は本当に人間……なんだよな?」
「はい、 “普通の人間” です。 私達の方が普通じゃないんですよ」
「そ、そうか……俺は、ここまで小さく縮まされてしまったのか……」
外の世界の普通の人間を見て、尚更理解した。
今の自分が如何にどれだけ縮んでしまったのかを。
「ひッ……ぁぁ…………」
ガラス越しに覗く馬鹿でかい目玉と目が合う。
いや、違う……。 合っていると錯覚しているだけだ。
これは女の眼球が大きすぎるが故、俺がこのガラスのどこにいたとしても、目が合っているような気にさせられるのだ。
「に、逃げないと……早くここから……」
――恐れ戦く。
広斗はこの女が俺達を使いにきたのだと言っていた。
何に使われるのかは不明だ。
だが、こんな……こんな体格差がある人間に使われでもしたら、どうなるのか分かったもんじゃない。
だから、逃げれる場所が何処かにないかと探す。
唯一出られる場所は上にしかないと、広斗に言われた事を忘れて。
それほどパニックに陥っていた。
女と自分との……常識外れたとてつもない体格の違いを真近くで見せつけられて。
「茂さん、気持ちは分かりますが落ち着いてください」
「しかし、このままだと死ぬかもしれないんだぞ!」
「死にはしません、大丈夫ですよ。 実際、長くいる私や彼らは生きているじゃないですか。 それに、もしここから外に逃げたとして、茂さんは生きていられるのですか?」
「……あっ」
言われて気付く。
この小さく縮んだ体で、眼前の巨大な人間が住む世界をどうやって生きぬくのかと。
女の吐息だけで吹き飛んでしまいそうな、この微小な体で……。
「いいですか? これからご婦人様方は、私達を使うためにこのガラスの外に出してはくれます。 逃げようと思えばその時にでも確かに逃げれるかもしれません。 ……でも、逃げたとしても後はどうなるのかは想像がつきますよね?」
「あ、ああ……」
「だからここで大人しくいる事が一番安全なんですよ。 死にたくなければ……ね」
轟々と唸りを上げて、女の巨大な顔が離れていく。
俺達を覗くために前傾姿勢になっていた体勢をやめて、元の姿勢に戻ったからだ。
そうした事により、スカートから覗く純白のパンツが丸見えであるが、俺はそんな女の下着をただただ見上げているしかなかった。
これからこの女に何をされ――そして何に使われるのかを恐怖し、震えて……。
「えっと~花園様の今回受けられるコースは、 “黒ずみ予防” ですね」
「そうですが、その……噂通り本当に効果はあるのですか?」
「もちろんですよぉ。 黒ずんでしまったお客様も御使用になられていますが、効果が出ていると皆さん喜んでもらえておりますから」
「んふ❤ 良かったわ、本当に効くみたいで」
「予防のコースですから、お客様にはこちらのクリームをお肌に塗らしていただきますね」
奥村香は茂達のいる同じ机の上に置いてあった、黒と白色の二種類のチューブを手に取り、花園弥生に白色のチューブをかざして見せる。
「二種類あるのですか?」
「はい♪ こちらの黒い方が黒ずんでしまったお客様用で、小人君を五匹分溶かしてクリーム状にした物です。 そしてこちらの白い方が、小人君を一匹だけ溶かした物となります。 小人君を使った数によって効果に違いがありますから」
「ん? 効果の違い?」
「はい、予防を求めていらっしゃるお客様にこちらの黒い方を使用してしまいますと、効きすぎてお肌に悪く、荒れてしまう恐れがありますので。 ですので花園様にはこちらの効果の薄い白い方を使用しますね。 予防ならこのクリームで十分ですから」
香の持つチューブ型のクリームには、人間の男の命が使われている。
会話の内容その通りに、男を液状になるよう溶かしてクリーム状にしているがゆえ。
理由は、男が縮小されて持つ “再生” の力が、クリームに備わるからだ。
塗ったら “女の身体にだけ” 、色素や細胞を活き活きと若返らせるという効果が。
なのでクリーム状となった男達は、女性が使う美容品となるために溶かされ、命を奪われていたのであった。
綺麗でありたいと願う女性のために。
使用者である女よりも何十年も長く生きてきた男達が、ただ女性の黒ずみを癒す、 “薬用クリーム” にされて……。
「それでは花園様、今から始めますので衣服をお脱ぎになってください」
「はい」
緩やかに動き出す巨体。 そのせいで、大気が唸りをどよめき上げる。
何を思ったのか、茂達を覗き見ていた女は着ている白い服を脱ごうとしていた。
大勢の異性の男の前で、さも自分の家で服を脱ぐみたく――当たり前に。
「あ、花園様、脱いだ服はこちらの籠の中にどうぞ入れてください」
「ありがとうございます」
茂がいる器の真横に、とてつもなくでかい、巨大な物体が落ちてきた。
だが大きいと言っても、それは茂から見た感想であるが。
これは香が言うように、なんら変哲もない脱いだ衣服を入れる籠である。
温泉などに行くと、よく脱衣所に置いてあるそんな籠。
いつの間にかすっかり下着姿になった女は、脱いだ衣服を綺麗に折り畳み、そんな籠の中へと入れる。
女が先ほどまで着ていたただの衣服を、目がくらむような大きさを持つ籠の中に。
「う……ぁ…………」
今、茂の前方に聳えるのは、下着姿となった花園弥生が穿いている純白のパンツ。
見渡せど見渡せど、純白のパンツが場を支配していて、思わず茂は唖然とした声を上げる。
「――うぶッ! 臭いが……」
突然とガラスの器の中に甘ったるい臭気が漂い、茂は耐えきれず鼻をつまむ。
この臭気の正体。
これはもちろん弥生から発せられる体臭である。
別に臭いという訳ではない。 一般的な人間よりも花みたく甘い良い香りだ。
されど茂からすれば強烈な激臭で臭いのだ。
いくらかような匂いの体臭だとしても。
これも、人間との体格差が違うために……。
「な、何だ? この音……」
遥か頭上からなる異音。
気になった茂は弥生の体臭を我慢しながら、純白のパンツから視線を天へ……天へと向けていく。
「ぉあ………」
天を仰ぎ見て、瞬時に茂は理解した。
この異音の出処は、女が着用しているブラジャーから鳴るものだと。
「す……ごい……」
茂は思わずそんな感想を口に漏らす。
だが仕方ない。 ――それほどの光景であったのだ。
「う……おお…………」
茂が仰ぎ見ている遥か上空の彼方には、弥生が穿いているパンツと同じ純白であるブラジャーが、はち切れんばかりのおっぱいの肉を内包せし見せた光景であったから。
両のカップの中に成長しきっている豊満な胸を、形良く見せるために、脂肪を寄せ上げた……。
だから鳴っている。 ギチギチと、壊れてしまいそうな音を立てて。
着用している本人には決して気付かない、茂のような小さな者にしか聞こえない音を。
そんな、そんなブラジャーを、弥生はおもむろに外しだした。
「……んっ」
ホックを外し、ぶるぅんッ! とたゆたう二つの巨大な球形タンク。
所狭しと閉じ込められていたブラジャーから解放された事により、肌同士がぶつかりたぷたぷ弾み打つ。
「うわぁぁッ!」
どうだと言わんばかりに、弥生は脱いだブラジャーを籠に放り投げた。
だが狙いを外したらしく、籠からは片方のカップだけがぶら下がり、はみ出す。
「う、嘘だろ。 こ、これがブラジャーだっていうのかよ……」
とても信じられないといった様子で呟く茂。
それもそのはず。 はみ出したブラジャーのカップは野球ドーム以上に広く巨大であったからだ。
何十万人とも人が入れるぐらい、あまりにも大きく……。
もし、もしも――こんな巨大なカップに内包せしめるおっぱいの下乳に、茂みたく小さな人間が挟まれようでもしたら、間違いなく潰されてしまうだろう。
女性のおっぱいだけの重みで、あっけなく下乳の染みとされるだろう。
かような幻想を抱かされるほど、籠からはみ出した片方だけのブラジャーは、圧倒的な物量であった。
茂と比べて、酷く……酷く……。
「ふぅ~」
また巨体が動き出した。
今度は全身が動き、茂に背を向けだしはじめる。
たわわに実ったおっぱいをブルンッ! ブルンッ! と、ゆらゆら揺らして。
それからすぐさま弥生は左右のパンツの端に指を差し入れ、まったくと言って羞恥心のかけらを見せる事なく、一気にパンツをズリ下ろしてしまった。
「んぅ~しょっ」
「おわわ……ぁぁ……」
と外気に飛び出てきた肉の塊。
どこまでも続く、深い肉の谷間を作ったお尻が、自慢気に打ち震える。
……脂肪という肉を波立たせて。
「ウアアァァァァッ!」
そんな女性特有の丸みを帯びた巨尻が、いきなり大気を切り裂きながら茂の傍まで近づいてきた。
先に語った深い尻肉の谷間が、茂のいるガラスの器にまで……。
「うあぁぁぁッ! ――つ、潰されるッ!」
茂は悲痛な叫びを上げ、頭を抱えてしゃがみ込んで身構える。
だがどういう訳か、暴力じみた女のお尻はいつまで経っても降り落ちてくることはなかった。
「ぅぅ……ぁ……あ?」
変に思い、震えながら頭を上げる茂。
見ると、女は今しがた脱いだ下着を手に持ち、籠の中に入れようとしている。
そして気付く。
この女はずり下ろしたパンツを拾うために、ただ前傾姿勢になり、お尻をこちらに向けていたのだと。
たったそれだけの行動で、自分は死の恐怖を味わわされたのだと。
「は……ハハ……」
茂は笑う。 笑うしかなかった。
――女の尻に心底恐怖心を抱かされた、今の自分の惨めさに。
「茂さん、共に頑張ってお仕えしましょうね。 このご婦人様の女体に」
「ハハ……ハハハッ…………え?」
惨めさを痛感している茂の隣で、広斗はまた何かを言っているが、相も変わらず理解できないでいた。
仕えるといった言葉の意味を。 そして――何故、女が下着すらも脱いで裸になったのかも。
「仕えるってなんだよ……訳わかんねぇよ……」
ぼんやりと、眼前に聳え佇む人間の女の巨体を眺める茂。
正面から見る成人した女の裸体は、どこをとっても肉々しく、そして僅かに動くたびに肉という脂肪を波立たせている。
ぷるぷると、ぽっこり膨らんだお腹の脂肪も揺れに揺らして。
茂はただただ眺めているしかなかった。
胸や股間すらも隠さぬ女の裸体を呆然と。
広斗が言った “女体に仕える” という言葉の意味。
それを深く深く考え込みながら。
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読んでいただき、ありがとうございます!
次回は後編で、女体に仕えるお仕事の始まりとなります。
正確には、女性の体の黒ずみ予防という悲しいお仕事ですが('ω')
広域はんい
2023-03-21 04:14:56 +0000 UTCzexcy15
2023-03-20 16:18:43 +0000 UTC