――それから広大な腹を歩いて数十分後……。
「な……ぁぁ……な、なんだこれは」
女の下腹部地帯にまで辿りついた俺は、目の前に広がる光景に驚愕した声を上げた。
無論、ここに向かう最中にも見えていたが、しかし……間近で見て改めて驚かされたため。
この、数々の “黒い木々” が繁茂(はんも)した――陰毛の森の景色に。
「茂さん、今からこの中に入って行きますが、絶対にはぐれないよう気を付けてください。 何度も歩き慣れた私は大丈夫ですが、下手したらこのご婦人様の陰毛地帯から出られなくなってしまいますので」
「で、出られなくなる⁉ ――あ、おい!」
話の途中で森の中に入っていく広斗の後を急いで追いかける。
「う……うぶっ…………」
まず女の陰毛地帯に入ってすぐに俺を襲ったのは、濃密な湿気。
じっと佇んでいても、勝手に汗が噴き出してしまいそうな、むせ返る暑さだった。
この陰毛地帯を森だと比喩していたが、全然違う。
――まるで密林だ。
また次に、女の濃い体臭の匂いが俺の鼻孔を襲った。
それは息苦しくなる重たい臭気。
ゆえに満足に呼吸がし辛く、頭が朦朧としてしまう。
はっきり言ってここは、とても長くいられるような場所ではない。
「……な、なるほど……広斗が出られなくなるって言ってたのは、この事だったんだな。 た、確かに意識を持っていかれそうだ」
「は、はい……そういった理由もありますが、出られないと言った意味はそれだけじゃないんです」
「それだけじゃ……ない?」
「ええ、この陰毛を御覧になってください。 地面から生えていますでしょう?」
言われる通り、近くにある一本の陰毛に目を向ける。
それは、肌の地面から根を生やし、信じられないほどの長さまで力強く伸びている。
枝や葉が一切存在しない大木のような陰毛が、天に向けて。
「見たけどこれがなんだと言うんだ? 至って普通……というのもおかしいが、ただの女の陰毛だろう?」
「はい……ですが、ご婦人様のこの地帯には、こういった陰毛が抜け落ちた穴が “稀” に存在しているんです。 一見肌の脂肪で塞がっていて分かり辛いですが、小さな穴が」
キョロキョロと穴を探してみるが、俺にはそれらしき穴が見つけられない。
「……どこだ? まったく分からん」
「ですから稀にですよ。 でも、どのご婦人様の陰毛地帯にも必ず存在していますので注意してください。 もし誤って穴に足を踏み入れた場合、沼のように沈んでしまい、自力での脱出は難しいので」
「ま、まじかよ……」
どれだけ人間の身体というのは恐ろしく……悍ましいのだろうか。
あの頂上で見た乳首の穴であり――胃袋、そして陰毛が抜けた後の穴。
どれにしても、今の俺の身体の大きさからすれば危険だらけだ。
この身体の持ち主である女が、何をするにしなくても……。
「ですので茂さん、絶対にはぐれないよう気を付けてください。 先を歩くあの方達の後に着いて行けば、無事に陰毛地帯を抜けられますから。 あんな風になっても、無意識に安全な道を選び、歩かれていますので」
「あ、ああ……」
俺の前を歩く男達に心底驚かされる。
自我が無くとも無意識に安全な道を選び、歩く彼らに。
いったい、これまでどれだけの人間に使われてきたのか。
多分、馬鹿らしく思えるほどの……幾人もの女に使われてきたはずだ。
でないと、こうはならないだろう……。
クリームを塗る行為や今回の事――これら全て、この男達は意思なくやり退けているのだから。
「すごいよ……お前らは本当に…………」
素直に尊敬の念を抱く。
それからも俺は、そんな男達の後ろに続き、広斗と一緒に女の密林の中を歩いていった。
汗をびっしょり掻き朦朧としながらも、一歩一歩着実に。
――そして、
「あ、茂さん! 出口が見えてきましたよ! もう少しです」
「あ……ああ!」
俺達は陰毛地帯を抜け、ようやく女の股間部の先にまで辿り着けたのであった。
「つ、着いた……やっと…………! やった……外に出れたんだぁ!」
視界に飛び込む外の景色や、また新鮮な空気。
当たり前に享受していたのを一身に浴び、俺は現状を忘れて大いに喜ぶ。
そう、思わせられるほどに、女の陰毛の中は酷い環境だったがゆえに……。
しかし、喜ぶのも束の間、俺はすぐに現実へと引き戻されてしまうのだった。
地面が激しく揺れ動いた事によって。
「――ウワァァァッ!」
突如襲い掛かる激しい地震。
見ると、ずっと遠くの方まで伸びていた太い二本の柱が可動橋のように持ち上がり、地響きを上げて左右に別れていっていた。
~これはただ、弥生が両の膝を曲げて両脚を開いた現象。
いうなればM字開脚。 または、男女の性行為時にする正常位の体勢である。
そんな体勢を取ったからこそ、弥生の蜜壺にあるヒダは緩やかに花開いてゆく。
ミチ……ミチチと卑猥な粘着質のある水音を出して、下品に……茂や広斗達男を歓迎するかのように。
ああ、いや……まさしく歓迎しているのだろう。
下腹部に感じた男達の歩くこそばゆさ――それを感じて、弥生は男を迎えるために開脚したのだから。
――たくさんの男達に、蜜壺の周りにもクリームを塗らせるため。
「どうやら私達のために股を広げられた揺れだったようですね。 おかげで仕事をしやすくなったはずです」
「仕事をしやすく……? な、なんだよそれ」
「そうですね……とりあえず確認しに行きましょうか。 付いてきてください」
言われるまま広斗の後に付いて行き、俺達は下腹部の端にまで歩いていく。
付いて早々目に飛び込んできたのは、霧がかった崖。
――いや、崖なんてもんじゃない。
そこにあるのは、熱気に包まれた女の……マンコの光景だった。
「うあ……ぁ……」
「はは……言葉が出ないでしょう。 ほんとう圧巻ですよね。 私達から見るご婦人様の女性器の景色というのは」
「あ、ああ……まったくだ」
下着を脱いで俺達の前に露わにしていた時とは違い、今や女のマンコは姿や形――そのものの造形がまったく違っていた。
一本の縦筋を作っていた肉は大きく裂けてパックリと広がり、その中身を悠然と外気に曝け出していたからだ。
何というか……グロイ。 それしか言葉が出てこなかった。
この臓器を外に剥き出しにしたような色の……女のマンコというのは……。
「ああ、良かった。 ほら、茂さん御覧になってください、女性器のヒダが左右に別れていますでしょう?」
「そうだな……別れているが、それがどうしたと言うんだ?」
「私達が今からクリームを塗りに行く場所は、あのヒダである小陰唇なんですよ。 ですので、ああやってご婦人様が股を開脚して小陰唇を広げて下さる事に、私達は大変助かっているのです」
「……助かっている?」
「そうです。 もしあの小陰唇が閉じられていた場合、無理やり体を捻じ込ませてヒダの裏部分……隙間の中にまで入って行かなければならないですからね。 相当苦労しますが、そうするしかないんですよ。 私達の力では、どうやっても手でヒダを広げたりはできませんので」
「……なんだよそれ、そこまでしなくちゃならないのかよ」
「ええ、そこまでいなければならないのです。 伝えたでしょう? 生きたければクリームを塗る仕事をしっかりこなさなければならないと」
「そうか……そうだったな……」
虚しい……。
生きるためにこんな事をやらされてるなんて、本当に惨めな気持ちになる。
「行きましょう、茂さん」
「……ああ」
他の男達共々、俺と広斗は女のビラビラ……ヒダを目指して崖のようなマンコを下っていく。
俺と広斗や他数人は向かって左。 その他の者達は右の裂けたヒダに別れて。
「広斗、とりあえずヒダにまで来たが、このままクリームを隙間の中に入れたりして塗っていけばいいんだよな?」
「ええ乳首と同様、今度は逆に下っていく形になりますが、する事は一緒です」
「そうか、わかった」
ヒダの上部に一列に並んでいる俺達。
そこから、クリームを手で塗り広げながら下方を目指して下りていく。
女のマンコはかなりの傾斜があるが、だが、下りる事にそこまで苦労はしなかった。
なぜならヒダの深い溝……つまりシワが足場となり、それに手でも掴みやすかったからだ。
また予めベッタリ塗られていた粘着性のあるクリームで、体が張り付いているおかげで。
まあ、クリームを引き離す際には少し力が必要になってしまうが……それでも誤って落下してしまうという恐れがないのが救いだ。
「……しかし、なんという光景なんだよ……」
クリームを塗りながら下りている途中、ヒダの中腹あたりからの景色を呆然と眺める。
女の性器である、マンコの景色を……。
上方には陰部から盛り上がり突出した、赤黒い半球状の大きな物体が蠢いている。
クリトリスという物が、ヒクヒクと……。
そんなクリトリスから下へと視線を向けると、小さな穴があった。
小さいと言っても、俺なんて簡単に入っていけるほどの穴だが……。
「小便の穴なんだよな……これは」
そうこの穴は、毎日と酷使しているであろう女の尿を排出する穴。
とても信じられない気持ちになるが――間違いなく……。
そしてさらに下方にある口開いた洞窟みたく大きな穴。
これは……膣口なんだろう。
「ハハッ……アハハハ…………」
俺は見るもの全てがあまりに雄大すぎて、もはや笑ってしまっていた。
だってそうだ。
眺めているこれは――女ひとりの人間の、女性器の景色だというのだから。
そんな女性器のヒダに、俺や……複数人の男達がへばりついている。
普段は下着やズボン、またはスカートなどで厳重に隠している女の秘する――その中身に。
それなのに、この女性器の持ち主である本人はまったく気にしてなんかいない。
あいつもこいつもここにいる者全員が、異性である男だというのに。
ましてや、秘する場所の蜜穴まで平気で見せつけられている始末だ。
――ああ、虚しい。
同じ人間であるはずの女から、異性として見られていないっていうのは。
――ああ、なんて惨めなんだ。
異性としてだけではなく、それ以上に女から同じ人間として見られず……こんな陰部に使う美容道具の如く扱われるというのは。
「うあ……ぁ……」
かような陰部から、卑しい粘液の音がなっている。
女の膣穴が、俺達男を煽るかのように開いたり、閉じたりしているために鳴っている。
あたかも異性として見てほしいのなら、どうぞ好きにしろと挑発しているみたく。
だと言うのに、俺は何も出来ない。
――絶対に無理だ。
今の俺は、女の膣から滴る蜜の一滴であっても、流され……溺れてしまうぐらい小さな体なのだから……。
「うぅ……くそう……」
とてつもなくやるせない気持ち。 そんな気持ちを抱きつつも、俺は道具と成り果てて働くしかなかった。
女のマンコのヒダにクリームを塗りながら下へ下へと。
俺が人間の身体で最も行きたく――そして触りたくもない尻の穴を目指して……。
………………
…………
……