◇
カチ……コチと、時計の秒針が刻む音が木霊する室内。
弥生の穏やかな呼吸音も混じっている室内。
それ以外は “人間の耳” には何も聞こえない。
場は静寂に包まれている。 とても……とても……。
だが、そんな心地良さを生む静かな室内の中へと香が入って来た事により、一気に静寂は破られるのであった。
「失礼します花園様」
「はい」
香が室内に入ってきた事により、弥生はすかさず股開いていた両脚を閉じて起き上がろうとする。
それは同性であっても今の姿を見られるのは恥ずかしく思っての行動。
だが、そんな行動を起こす弥生を慌てて香は呼び止めた。
「――花園様! 姿勢はそのままで。 お身体に使っているモルちゃん達が落ちたり、潰れちゃったりする恐れがありますので」
「あ、ごめんなさい!」
起き上がろうとした身体を、再度なるべく揺らさないよう緩やかにベッドへ戻す。
「申し訳ございませんが、モルちゃんを回収するまで今しばらくそのまま寝た姿勢でいてくださいね。 すぐにモルちゃんを回収させていただきますので」
「よ、よろしくお願いします」
「所でモルちゃん達には、いつもお尻にクリームを塗り終わったらその場で待機をさせるよう言いつけていますが、今も感触などは伝わっていますでしょうか?」
「えっと、そういえば先ほどまでお尻の辺りが少しムズムズしていました。 多分まだそこにいるかと……」
茂達は今、弥生の肛門の穴周辺にへばりついたまま留まっていた。
僅かに動く穴の収縮運動に巻き込まれながら必死に。
香の言葉通り、人間の女の肛門の穴がマイクロモルモットとされた者達の待機場。
穴周辺にクリームを塗り終わった者達が、回収されるまで待つ場所である。
ひとえに、肛門の穴付近である一ヶ所に待機させていた方が見つけやすく、そして回収しやすいからという理由で。
「では、この子を使って回収させていただきますね」
香は自分の胸元から人差し指サイズの男を取り出し、弥生の肛門の前に置いた。
またその傍には茂達を入れていた器も一緒に。
弥生は恥部の前に男が置かれたというのに、何も反応を示していない。
同性である香に対しては恥ずかしさを感じ、隠そうとしたのにも関わらず。
だが、これは仕方がないのである。
弥生にとってはこの男もまた、人間として見てはいないから。
これは普段自分の身体を慰める時に使っている――ただの性具用品であるため。
かような性具とされている男は手を伸ばし、弥生の肛門の穴にへばりついている男達をひとりひとり丁寧に指で摘み、優しく器の中に入れていっていた。
香達、“普通の人間” ではマイクロモルモットは小さすぎて視認し辛く、手では掴めないため。
だから性具とされている体の大きさの男を使って、回収させていたのである。
丁度良い彼の大きさなら、肛門に集まったモル達を回収しやすいから。
そんな男は、そう時間もかからず全てのモルを器の中へ入れ終えたようだ。
今は、大人しくその場で正座をして香の方を見上げている。
ガクガク震えながら、ただただ……。
これは、香に向けての無言の合図である。
役目を果たしましたという、態度で上位の者に礼を尽くし見せた。
「あ、回収が終わったんですね~」
香は自分に向けて礼を尽くしている男の頭を、粗雑に指先で摘み上げて胸元の谷間の中へ入れてしまう。
まるで物を仕舞うが如く……。
そして同じようにモル達の入った器を、ベッド横にある机の上に戻すのであった。
ここが――お前達の置き場所だと言わんとするがみたく。
「はい、花園様。 モルちゃんの回収は終わりましたので、もう動かれても大丈夫ですよ。 あ、お身体に塗ったクリームもお肌にしっかり浸透されていますので、衣服をそのまま着ていただいても大丈夫です」
「あ、はい」
グゴォォォォ……。
ベッドに寝そべっていた巨体が動き出す。
風を切り、上半身が轟音をあげて持ち上がっていく。
「う……わ……ぁ」
茂は器の中から戦々恐々と見ていた。
自分が今までいた肉の脂肪の世界が、波立たせて動く様を。
ああ、巨体が身を起こす事によって、ドプゥンと力強く二つの山が垂れ揺れている。
重力をそのままに受けた、二つの山みたく大きなおっぱいが、弾み……弾んで……。
ドゴォォンッ! ドオォォンッ‼
またベッドから降り、そしてこちらに向けて歩く事によって、おっぱいだけではなく身体の脂肪のあらゆる箇所が波打っている。
二の腕や腹、太ももといった様々な肉が……。
「ん……よっと」
そんな肉の持ち主である弥生は、籠から取り出した下着を女性らしい所作で優艶(ゆうえん)に身に着けていっている。
大変な思いをして登っていたおっぱいを寄せ上げブラジャーで包み、そして朦朧としながら歩いていた陰毛地帯や、悪臭で満たされた陰部を覆うように純白のパンツで包んで。
さらには籠から衣服を取り出し、尚も厳重に覆い隠してもいる。
かような肌を同類である人間に……ましてや異性には絶対見られないようにするため。
茂達異性の前では、平気に裸体を曝していたというのに。
「では花園様、こちらにてお会計の方を……」
「はい」
ドオォォンッ! ドシィィィンッ!
あれほど身体に尽くしていた茂達には一切目もくれず、カーテンを開けて部屋から退室していく二人。
礼なんてない。
彼らに向ける言葉一つすらなかった。
されどこれが普通なのである。
人は……道具に感謝の言葉をかけるなんてありはしないのだから。
「松林様、どうぞこちらへ」
「ええ」
ドシィィィンッ! ドシィィィンッ!
間を置かず、また次のお客様が室内に入ってきた。
茂達、マイクロモルモットを使用しに……。
「松林様は、黒ずみ治療のコースですので、こちらの黒色のチューブを使用させていただきますね」
「白いチューブもあるみたいですが、何か違いがありますの?」
「ええ、黒い方は小人を五匹分溶かして作った……」
ああ、次のお客様はどうやら年齢的に、茂よりも年上のようだ。
見た目は気品を感じさせる女性。
誰が見ても、金持ちのマダムといった感じの上品な女性である。
「では、マッサージと治療を始めさせていただきますので、衣服を全てお脱ぎになってください。 あ、脱がれた衣服はこちらの籠の中へどうぞ」
「わかりましたわ」
スルスルと着ている服を脱いでいく。
茂達の目の前で、当たり前に裸になろうと。
「ま、また女の身体にクリームを塗らなくちゃならないのかよ!」
すっかり裸になったマダムの前で、茂は嘆き声をあげてしまう。
今度の女は先ほどの若い女とは違い、あきらかにだらしのない身体をしていた。
胸は少し垂れ、腹は贅肉の脂肪で膨らみ、そして股間部からはより強い悪臭を放っている。
そんな身体に、茂はまた使われてしまう。
この女だけではない。
これから先、様々な女性の身体に使われていくのだ。
……ああ、いつかそう遠くない未来――茂は必ず他の者達のように名前を忘れ、人間である事も忘れてしまうであろう。
何故なら死ぬまでずっと、この女だけではなく様々な女性に使われていくのだから。
毎日毎日――何人もの女の身体に……。
これが、マイクロモルモットとされた者の運命であるため。
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読んでいただき、ありがとうございます!
自慰用性具と違い、さらに小さいマイクロモルモット。
彼らこそが感じる、女性の何気ない身体の一部分の変化や怖さなどを表現できたら! と書かせてもらいました。
ですが結果、くどく思われてしまいましたら本当に申し訳ございません('ω')
あらためまして、ここまで長いお話をお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございます!
Hirit
2024-06-26 14:00:51 +0000 UTCzexcy15
2023-05-21 15:18:13 +0000 UTC広域はんい
2023-05-21 08:41:01 +0000 UTCzexcy15
2023-05-21 01:36:17 +0000 UTC