グツグツグツ……
「うわ……あ……」「ああ……」「うぅぁ……」
透明な容器に閉じ込められた俺達三人のすぐ傍、三つ並んだスキレットの中で、謎の液体が沸騰している。
物凄い火力のあるガスコンロの火で温められて。
おかげでコンロの赫灼(かくしゃく)からなる熱風が、俺達の元にまでさっきから容赦なくふりかかっている。
「熱ッ! アツイッッ!」
苦痛なる大声。 漂う高温の熱風に耐えられなくなったがために、自然と出た俺の叫び。
それは自分だけではない。 同じように容器の中に閉じ込められている、今さっき出会ったばかりの三十代らしきおっさんの二人も、あまりの熱さに叫びに叫んでいた。
「良い感じに沸騰してきましたねぇ。 これならすぐに溶かせそう」
辺りに轟々たる女の声が響き渡る。 まるで拡声器を介して喋っているみたいに大音声だ。
されど、決してこの女は拡声器で喋っている訳でも、ましてや大声で喋っている訳でもない。
なんら普段と変わらぬ声量で独り言を喋っているだけ。
スーツを着た、自分よりも年上らしきお姉さんが……。
「さてさて、まずはどの子から溶かそうかなぁ」
ズイッと顔を俺達に近づける。
「うわぁッ!」「うぅおッ!」
そうした行為で、俺達が閉じ込められている透明な容器の外側は、お姉さんの巨大な顔でいっぱいだ。
「ヒ、ヒィッ!」
容器の外側ではギョロギョロと大きな目玉が動いている。
俺達を見回し、眺めているがために。
「ぅぁ……ぁぁ」
同じ人間であるはずの目に萎縮してしまって上手く声が出せない。
全身が粟立ち動けやしない。
――この吸い込まれてしまいそうな巨大な目玉に、心から恐怖してしまっているせいで……。
そんな自分が恐怖に駆られて声すらも出せない中、隣にいる一人のおっさんの叫ぶ癇声(かんごえ)が響き渡った。
「……は? 溶かすだって? な、何をするつもりなんだ……。 ――俺達をどうするつもりなんだよ!」
「んぅ~?」
ギョロギョロと動いていた目玉は、ピタリと静止した。 声を上げたおっさんをジッと見つめる形で。
「ぅ……ああ……」
そんな目玉に見つめられたおっさんの体は、次第にガクガク震えだしはじめる。
綺麗な茶色みのある巨大な瞳が、おっさんの姿を鏡みたいに映しているものだからその様子が分かるのだ。
また、俺やもう一人の恐怖に引きつった顔までをもありありと。
「ん~どうするつもりって、何となく予想がついているんじゃないんですかぁ?」
きょとんとした様子で大きく見開けた目は、バチンッ! バチンッ! と瞬きを繰り返す。
それによって、上瞼の皮膚から盛り上がり生えた長いまつ毛が、扇みたく仰ぐ形で何度も上下している。
もしかすれば、俺やお姉さんの間に容器という隔たりが無ければ、瞬きの風圧を感じられたかもしれない。
そう、思わされてしまうほど、重々しく瞼は上下している。
「あれれ、本当に分かっていないみたいですね、今から君たちが何になるのかを。 じゃあ優しいお姉さんが教えてあげましょうか」
そう言ってプチプチとスーツの上着のボタンを外していくお姉さん。
「な、何でこの女は服を脱いで……」
いきなりの奇行に困惑している俺達をよそに、完全におっぱいを覆ったブラジャーを外に曝けだす。
「んふふ~❤」
そんなお姉さんは、次にスカートの裾を指で摘んで、緩やかな動作で捲り上げていく。
見せつけるかのように、勿体ぶりながらゆっくりと……パンツを露わにして。
「じゃ~ん、どうですかぁ~? 可愛い下着でしょう~」
「……は?」「え?」「……あえ?」
山よりも大きなお姉さんの、下着を曝した姿。
上下の下着はピンクで統一されており、確かにお姉さんの言う通り両方ともちょっとした装飾――レースが施されていて可愛いとは思う。
だけど子供っぽくは断じて見えない。
それは、お姉さんの大人の色香が合わさっているがために。
この膨らんだおっぱいをみっちり包み込んだブラジャー。
そして、見ただけで上質で柔らかそうだと思うパンツには、くっきりとマンコの形が浮き出るほど喰い込んでいるから。
「うわ~すっごい見てますね~。 がん見じゃないですかぁ~アハハ♪」
自分から見せつけているというのに、ケラケラ笑っているお姉さん。
ずっと見ていたのは確かだが、だけど俺には欲情といった感情をもはや一切抱けなかった。
これまでさんざんと、女子達の下着の中身にある性感帯に使われ、恐怖心しか抱けなくなってしまったからだ。
それは二人のおっさんも同じなのかもしれない。
あきらかに欲情といった表情をしていなく、引きつった顔をして固まっているから。
「ふふ~♪ でも良かったですよ、どうやら気に入ってくれたみたいで。 今から君たちはこのような下着にされちゃうんですからね」
「は……はあ? 下着にされる?」
思わずおっさんが口にした疑問の言葉。
俺も訳が分からず戸惑っている。
「そう、あそこにある沸騰している液体の中に君たちを入れ溶かして、そして液状となった君たちの体を、私が制作した既存の下着に染み込ませるんです。 全部染み込むまで一週間ほどじっくり時間をかけて」
捲ったスカートを下げ、上着のボタンを一つ一つ留めながら、さも当然のように話すお姉さん。
「溶かす……だって?」
「はい、そうですよ~。 そうして出来上がるのが、今私が身に着けていた下着――エロステのランジェリーなんです」
「な、なんの為に俺達をそんな下着にするんだよ……」
「ん~? それはですね、君たちを材料に作った下着は便利だからですよぉ」
(あれ? 確か二人も同じような事を――)
俺もおっさんと同じように疑問を抱いていたが、ふと……お姉さんの便利だからという言葉を聞いて、あの時の桜と白鳥が下着について喋っていた内容を思い出した。
「そ、そうだ! なんか汚れがつかないとかって……」
「あー良く知ってますね♪ そうです、君たちで作った下着って汗とか汚れの吸収性が凄いんです。 お肌にくっついてちゅーちゅーって吸い取るんですよぉ♪ ですからもしかすると、溶けちゃっても死なないかもしれませんよ? まあ実際の所、溶けた君たちの細胞だけが生きて、女の子の体液を求めて動いているだけだと私達は考えていますが」
「細胞だけが生きてるって……な、なんだよそれ……」
「体を小さくするために使った薬の効果ですよぉ。 女の子がオナニーに使っても潰れて死なないように、君たちには強い再生能力が備わっていますので」
「強い再生能力? あっ! だ、だから俺は――」
クラスメイトの女子達の膣内で、首の骨が折れ曲がった時の事。
そして桜に踏まれて潰されても、すぐに元の正常な身体に戻っていた事を思い出した。
(そ、そうか……元に戻っていたのは、このお姉さんの言う再生力のおかげだったんだ……)
そうに違いないと一人納得する。 俺には他に潰れた身体が元に戻る理由が分からないのだから……。
「――と、言うことでそろそろ作業に入らせてもらいますね。 君たち二人はそれぞれブラジャーの左右のカップに。 そして若くてレアな君は可愛いショーツにしてあげます♪」
「は? お、おいっ! やめろ……やめてくれぇぇッ!」
お姉さんは叫んでいたおっさんを菜箸で器用に挟んで摘み上げる。
「そんなに叫んじゃって。 嬉しくないんですかぁ? これから下着として生まれ変われるのに。 それも、女子高校生の下着になれるんですよぉ? ふふふっ♪」
(え? 女子高校生って……まさか桜の事じゃ――)
きっと俺の考えはあっていると思う。
確かに桜は言っていたからだ。
俺を……パンツにするって…………。
桜が話していた事を考えている最中、お姉さんはおっさんを掴み上げた菜箸を、無遠慮に液体が沸騰したスキレットの中へ入れてしまった。
「やめ――ギャアアアアッ‼」
「さて、じゃあ次は……」
「ひ、ヒィィッ‼ うそ――嘘でしょう⁉ ギャアアアアッ!」
容赦なく、もう一人のおっさんまで……。
「ぁぁ……まじ……かよ…………」
あんなに叫んでいたおっさん達の叫び声はもはや聞こえやしない。
ゴオォッ! ゴオォッ! とコンロから火が噴き出す音。
そして、グツグツ液体が煮えたぎっている音だけが室内を満たしている。
きっと、もう……死んでしまったんだ。
「今度は君の番ですよぉ♪」
「ぃやだ……そんな。 ――ヒィィッ!」
箸で挟まれた瞬間、物凄いスピードで上昇していく。
フリーフォールという遊園地にある乗り物みたく。
「ぁぁ……ああ…………」
持ち上げられたお姉さんの胸元から見える下方には、二つのスキレットの中でおっさんがそれぞれ浮いている。
皮膚は赤く焼け爛れた見るも無残な姿で。
もし液体の中に麺などが入っていれば、ラーメンの具材にも見えてしまう。
チャーシューといった、肉の具材に……。
「ああッ! 嫌だッ! まだ死にたくない。 お、お願いします、助けて……助け――」
泣きながらの生きたいという願い。 お姉さんに向けての必死の叫び。
このままでは俺も確実に溶かされ、殺されてしまうから。
……だけど、急激にグンッ! と箸で挟まれたまま下へと落とされていく。
お姉さんは俺の叫びなんてまったく意に返す事なく、三つ並んだスキレットの内の一つに入れようとしているんだ。
――そして、
「うぶぅ‼」
俺もとうとう液体の中へ入れられてしまった。
「あがあぁぁあッ!」
全身が熱によって焼け爛れる、我慢なんて出来ようもない激痛が襲う。
頭から足のつま先に至るまでの。
「うぶぁ……ごぶぅ…………」
息が出来なくて苦しい……。
箸で身体を押さえつけられているために。
痛い……痛すぎる……。
箸によって自分の体の至る部位を刺され、分離されていってるから。
「ぅぶぁ……ぁぁ……」
――何で俺はこんなに苦しい思いをしているのだろうか。
――何でこんなに痛い思いをしなくちゃならないのだろうか。
意識が遠のいていく中、彼――速人は理不尽な思いでいっぱいだった。
ただただ……どうして自分がこんな目に合わされているのかと…………。
………………
…………
……