第二話『怪盗マリオネット参上! 今日は栄作さんの○○をいただいてき… ちょっ! 栄作さん何するんですか!』
Added 2022-01-18 11:26:42 +0000 UTC探偵というのは、そんなに儲かるような仕事じゃない。 テレビで良く見るような殺人事件に巻き込まれるようなことはほぼ無い。警察も余程なことがない限りは話を持ってくることはない。いや9割以上無い。 では、探偵と言う生き物は普段何をしているのか。 探偵に依頼が来るのは、人探しだったり、浮気の調査がもっぱらだ。大きな探偵事務所だと市場調査だったり、交通量調査なんてのもやったりすると聞いたが、ウチはそんな人手がいないから、前者の仕事がもっぱらだ。 それでもウチの親父は名を馳せた探偵だったらしく、9割以上来ることの無い警察からの未解決事件にもアドバイザーとして呼ばれたことがあるらしい。 俺の場合は怪盗マリオネット事件に参加させてもらったくらい。しかも、それはウチの助手1号の天王寺かなたのコネによるもの。 一応その怪盗マリオネット張本人は、足を洗ってウチの助手2号として働いているから、事件解決といえば解決だけど、犯人が捕まっていない警察からすれば迷宮入りの未解決事件扱い。 事件解決もできない無能探偵扱いだから、警察からもアレ以来は依頼の一つもこない。 まあ、探偵って言うのはそんなもんですよ。 「うがぁぁぁ! 分からん! 分からん!」 俺は事務所の机に突っ伏していた。目の前にある書物を目の前に苦悩していた。 「なんだ! このクロスワード! 最近のニュースネタばかりで、俺の家にテレビがないことを知っての狼藉か!」 そう。今の俺には仕事が無さすぎて、助手のかなたが買ってきた懸賞付きのクロスワードパズルを解いていた。 こんなポンコツに見える俺だけど、学力には自信がある。学問系のクロスワードならお茶の子さいさい・・・と思っていたら、問題のほぼ全部が、若者の流行ネタばかり。 ウチは新聞はとっているが、テレビは事務所にないから若者の流行ネタなんてほぼ分からない。 「クソ・・・ 懸賞で多少はメシ代に繋げると思ったのに・・・」 懸賞の賞品はカップラーメン100食分。これは貧乏の俺にとっては美味しいネタだ。どうしても欲しくてたまらない。でも、分からん! こんな問題出した奴、貧乏人の気持ちにもなれよ。 そう思いながら、静かな事務所で一人もがき苦しむ。 今日は、かなたは大学の友達と遊びに行くと言って留守。遙はお休みの日だ。あの真面目な遙が急に 「私、この日お休みしたいです・・・」 と言ってくるから・・・ まあ、内容は聞かなかったけど。メンテナンスはこないだやったし・・・ 友達と遊びに行くのだろう。 それは良いとして・・・ 問題は今月の借金の支払いだ。 事務所は自前だから良いとして、水道光熱費に加えて、かなたと遙のアルバイト代もバカにならない。 今月も赤字で凪穂さんにまたお金を借りるのか・・・ 彼女の母親にお金を借り続けるというのは、彼氏として情けないんだよな・・・ 最近、凪穂さんの大型物件も少ないし・・・ なんだか、忙しそうだからかな・・・ 「うがぁぁぁぁぁ!!」 そして、俺は机に再度頭を叩きつけ唸る。 西九条栄作。まだ三十路も迎えていないのに、こんな苦難に立たされるとは・・・ 神はいるのか? いたら、思いっきり助走付けてぶん殴ってやりたい。 何故、俺はここまでひどい仕打ちを受けなきゃいけないんだ(泣) もっと、大きなお仕事をくれよ! 「栄作さん。今良いですか?」 そんな事務所で苦悩している中、ドアの向こうから遙の声とノック音が聞こえる。 「遙か? 今日は休みとったのに、なんだ?」 今日は遙からお休みを申し出てきたのに、何で遙がいるんだ? 不思議に思い、俺はドアを開ける。 「あの・・・ 栄作さん・・・」 ドアの向こうには遙がいた。いや、声がしたんだからいるのは当たり前だ。 しかし、問題は彼女の格好だ。 「あのぅ・・・ 遙?」 「はい」 「どうして、サイボーグボディで来たんだ?」 そう。ドアの向こうにいたのは、怪盗マリオネット時代に使っていた黒色の外骨格のサイボーグボディの遙。 いつもは、人工皮膚に覆われた義体を使っているから、怪盗マリオネットとも気付かないし、ましてや服を着ていたらサイボーグとは気付かない。でも、何故か真ん前にいるのは、その怪盗マリオネットご本人。 しかも、何故か、恥ずかしそうにモジモジして俺の顔を見ようとしない。 「あのぅ・・・ えっと・・・」 遙は恥ずかしそうに小声で話しだす。 「えっと・・・ かい・・・っと、栄作さんの・・・もらいに・・・きました」 声も小さいから聞き取れない。いつものはっきりと物を言う彼女とは全然違う。 「どうした? 遙?」 俺は彼女が何か隠しているのか気になる。 ははん。さては、前の仕事で失敗したのか? しかーし! この西九条栄作はそんなことで怒るような器の小さい人間ではごじゃいません! 「仕事の失敗か? 遙? それなら別に・・・」 「怪盗マリオネット! 今日は栄作さんの童貞をいただきにきました!」 ・・・え? 「あの・・・遙さんや・・・ 俺も年をとったのか、もういちd」 「栄作さんの童貞をいただきます!」 遙は思いっきり事務所中に聞こえる声で恥ずかしさを振り払うような声で宣言する。 そして、その声の大きさと内容に俺の頭はフリーズする。 「今日は栄作さんの童貞をいただきにきました!」 恥ずかしさを取っ払ったのか、ビシっと人差し指で俺の顔を指し、再度宣言する。 「って、俺、童貞ちゃうわ!」 漸く素に戻った俺は遙かに突っ込みを返す。 俺だって童貞ちゃうわ! 一応遙ではないけど、学生時代に経験しとるわ! 「童貞じゃないんですか?」 首をかしげて可愛らしく尋ねる遙。チクショウ 俺の彼女、サイボーグカッコいいけど、顔と仕草がカワイイ。 ってそんなんじゃなくて! 「では、栄作さんの貞操をいただきにきました!」 またもビシっと指を俺に指す遙。貞操って・・・ たぶん使い方間違っている。 「貞操って・・・」 そう言って、突っ込もうとした時だった。 遙の指差している右腕がガシャコンと展開される。 中から現れたのは、催涙スプレーでも出てきそうな噴射砲・・・ この展開・・・ 怪盗時代の遙のギミックかよ! 「それでは本日のお宝いただいちゃいますね」 そして噴射口から思いっきり煙を吹きかけられ、俺は意識を失った。