メイク・ジョブ【第1話】「メイク・ジョブ」
Added 2023-05-12 16:51:39 +0000 UTC「……なんだこりゃ?」 体内時計が完全に昼夜逆転していた俺は、朝っぱらからネットサーフィンをしていた。午前9時頃、そろそろ眠ろうかなと思った矢先に、突然、見覚えもないサイトを開いていた。 いや、正確には飛ばされていた。まるでアダルトサイトでよくあるやつだ。 ホームページ名は“メイク・ジョブ”と表記されている。そんなサイトにクリックした覚えはない。ましてや、なにもクリックすらしていない。あまりにもの突然に数秒前のことが思い出せないくらいだ。 待てよ、俺はさっき、就職先を探していたんだ。すでに俺は今年で27。就職先なんですぐに見つかるだろうと都内のボロアパートでフリーター生活。いい加減この状況に甘んじているにもいかんと就寝前に軽く近くの求人を検索していたんだ。 するとでてきたのはこのメイク・ジョブというサイト。 仕事をつくる?いや、俺は仕事を探しているんだが……とは思ったものの、この時俺は眠気の中にいたので変なテンションにもなっていた。 このサイトにはおかしなことに名前と創りたい職業の概要の記入欄しかなかった。俺は悪ふざけのサイトだろうと思い、自分も悪ふざけをしてやろうと思った。 名前のところに(珍 歩子太郎)と記入した。 創りたい職業のところに、こう記入した 【女をオナホ扱いにする仕事。通称、肉オナホマエストロ。肉オナホマエストロの証明書を好きな女性に提示すると、女性は嬉々としてオナホになることを志願する。肉オナホマエストロに指名された女性は理想の男性と結婚する以上の名誉である】 自分でも笑ってしまう。最後にページの下にある登録ボタンを押した。すると、“登録が完了しました”と画面に表示された。一瞬ギョッとしたが、自分は個人情報を一切記入していないのを思い出し、安堵する。 「さて、コンビニバイトの夜勤明けで疲れたし、今日はもう寝るか」 パソコンを閉じ、ベッドに眠った。 夕方の四時ごろに目が覚める。目覚ましなしでもだいたいこの時間帯に起床する。でも今回は違った。目が覚めた理由は、ドアのポストに何かが入れられた音がしたからだ。 「……新聞もなにもとってねぇけどな」 このボロアパートに暮らして四年経つが、三年間ポストは空っぽが続いている。そういえば寝る前なにも食べてなかったので二度寝は中断し、ついで感覚でドアのポストを漁った。 「あ?」 携帯でも梱包されてるのかと思うくらいにしっかりとした真っ白な箱が入っていた。一瞬脳裏に誰かのイタズラかと思ったが、それは小さな好奇心で消えてしまうほどの疑心だった。 俺は箱を開け、驚愕した。 それはポイントカードのようなカード……ではない。その予想は即座に消し飛んだ。 目にまず飛び込んだのは俺の顔だ。パッとしない表情。まるで運転免許証のような無表情な俺が、右上にプリントされている。 いや、それ以上に俺の心臓を最も鼓動させた文字が、記入されていた。 「なんの冗談だ……これ………」 【肉オナホマエストロ証明書】 メイク・ジョブ。俺はこのサイトに出会い、日常が一変することになる。いや、一変ではない。何度も変化し、俺の中にある人間の欲を黒く助長させる恐ろしいサイト。 欲にまみれた日常が今日から始まる。