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雪降らないかな
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[デラックス特典]擬音を英訳するときのあれこれ

 昨今はDeepLや対話AIのおかげで、台詞はちょちょいと打ち込んで調整すればすぐに翻訳できるようになった。

 が、まだオノマトペ――擬音語や擬態語はそうはいかない。これらの言葉は根本的に言語間でシステムが違うことが多く、また文脈によって全く意味が変わるので、ほぼ人力で該当する言葉を探さなくてはならない。

 この記事では漫画のオノマトペを英語に訳すときに具体的にどうやっているかを軽く紹介してみる。


①辞書を調べるor辞書サイトで検索する

 オノマトペをテーマとして出版されている本では情報が古い場合が多い(喩えて言うなら、『ガーン』を『頭の上にたらいが落ちる音』として説明しているとか、そんな感じの古さだ)ので、ネットの辞書を主に使用している。

私が主に使っているのは

embed: thejadednetwork.com

の"SFX Translations"だ。このサイトももう更新日時がだいぶ怪しいが、とりあえず2010年あたりまでの日本の漫画の擬音はだいたい載っているので検索性が高い。

 まずはここで目星をつける。ぴったり該当しそうなのがあれば良し、用法が怪しければ類似の単語でググるなどする。

 たとえば、このシーン。

ゴゴゴゴというのはジョジョを筆頭に日本漫画特有の効果音だ。だいたいの漫画で明確な意味があるわけではないので、特に無くてもいいし、アメコミにドンピシャの表現は見当たらない。

 しかし、日本の商業漫画を英語に翻訳する過程ですでに誰かが"RUMBLE(RMBL)"という表現を考えてくれていたので、ゴゴゴゴで検索するとすぐにこれが出てくる。ありがたく採用する。



②[(調べたいオノマトペ) 英語]で検索する

 要するに、「ガーン 英語」とか「ドカッ 英語」とかでググる。メジャーなオノマトペならだいたい出てくるし、英語辞典サイトが引っかかることもあるのでその中でも検索する。

 たとえば、「ドサッ」は

  英語にそのまま「人や大きなものがドサッと倒れた音」という意味の"thud"があるので、そのまま採用する。


 頻出単語だ。

③似たようなニュアンスの言葉を探す

①~②で出てこなかった場合、頑張って検索しても使えそうなサイトがヒットすることは少ないので、適切な言い換えを探す作業に移る。

 たとえば、「ドラゴンの足に口づけを」のこのコマを例に取ろう

 先程のサイトで検索しても、「トオオン」「トオン」ではヒットしない。

 「トン」なら、"tap"や"knock"、"smack"が出てくるが、これらは基本的に硬質なものを軽く叩く言葉で、このコマのような「柔らかい魂に干渉した音」にはふさわしくないような気がする。

 なので、「同じような印象を伝えられる別の音」を探すことにする。

 たとえば、このコマでは指で水面を突いたようなエフェクトが描かれている。

 そこで、水面に関する音――「ぽちゃん」や「とぷ」「ちゃぽん」などで改めて調べてみる。

 するとヒット。"pour"、"splash"、"drip"、"plunk"などが出てくる。

 複数候補ですぐに絞りきれない場合、一つ一つ語句の意味を検討して決める。

 たとえば"drip"はドリップコーヒーのように「水滴が水面に落ちる」ことについての言葉なので、少し違う気がする。除外。

 "splash"はもっと多くの飛沫が飛ぶ、「ばしゃん」に近い言葉なので除外。

 "pour"は「注ぐ」で洗脳するシチュエーションには不自然ではないが、このシーンはまず「触った」だけで、その次に竜の下僕としての言葉を流し込むシーンが続く。続くシーンのニュアンスを先取りしてしまうのは演出的に不自然なので除外。

 "plunk"を調べると、「ドスンと落ちる音」「弦楽器をポロンと鳴らす音」「正確に、どんぴしゃりと」などの意味が出てくる。一見元の音からかけ離れてるように見えるが、巨大な竜の指で頭に触られるのは人間側からしてみたら「ドスン」と衝撃的だ。しかし一方で竜からしてみれば「ポロン」と弦を指で弾くような戯れであり、軽い所作である。そしてたったの一突きで人間の魂の弱点を探り当てたので、「正確」であると言える。一番該当してる意味合いが多いので、"plunk"を採用した。

 こんな感じだ。

 ④自分で考える

 探してもピンとくる擬音が見つからない場合は多い。そういうときはもう自分で考えたほうが早いこともままある。

 英語の擬音は場面に対応する動詞や形容詞を直に使う場合が多いので、それにならうのだ。

 たとえば、このコマだ。

 「ぐにぐに」自体は調べたら先程のサイトでは出てくる。

 しかし出てくる"bendy"(曲げる)も"soft"(柔らかい)も、この場面ではちょっと違う気がする。ここではまだ曲げてないし、どっちかと言うと硬そうな感じがするからだ。

 そんなときは、コマの状況を言語化し、該当してかつ擬音化しやすそうな言葉を探す。


・ハーフキリングがドッグマンを押さえつけ、捏ね、無力化して、小さくしている。ドッグマンはよろめいてバランスを崩している。

↓【動詞、形容詞を抜き出す】

・押さえつける、捏ねる、無力化する、小さくする、よろめく、崩している、バランスが(悪い)

↓【対応する英語を調べる】

・overbear, pinion, knead, mold, geld, reduce, stagger, break, unbalance...などなど。

↓【意味、語感の良さ、描きやすさなどを基準に選別する】

kneadに決定


⑤なかったことにする

 「なんか全体的に無くてもいいな…」と思ったときは思い切ってなかったことにすることも多い。

 たとえばこのページは、日本語版だと怪獣映画の雄叫びのシーンをイメージして音をつけたが、あれはなんていうか…結構日本的だ。歌舞伎の「イヨ~ッ」にノリとして近い。日本漫画は結構「大見得を切る」という文法を拝借しているので、「すごいのが現れたぞ!」というときにはよくそんな効果音を入れてしまう。

 しかし、英語のモンスターものにはそういう文法はあまりない。基本的に、大きな生き物が現れたときのシーンは静かで、「巨大なものに対して観客が息を呑む」という感情の共有がなされるようにデザインされている。

 なので、このシーンも英語版では効果音を全て取っ払った。

 雪の怪物なので、無音でもシチュエーションとしてはおかしくない。無音にしたことで、最後のシステムメッセージもより際立っている。

 こんなふうに、演出の方向性を考えて取っ払うこともよくある。面倒くさいからではない。誤解しないように。


 まあ、いまはメジャーな商業出版漫画では海賊版でやられる前に自発的に英語版を出そうという動きが強いので、ぶっちゃけジャンプの漫画とかなら「この擬音どう訳してるんだろう…」と思ったらすぐに参照できたりする(商業でも諦めて訳してないか注釈にしてる場合はままある)。

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