これまでにも何度もこちら側の世界に来たことのあるサムスにとって、今回の状況も全て想定の範囲内であり対応しうるものであった。
唯一予想外だったのは、今回彼女に指示を出すプレイヤーが、全くの初心者だったことだ。いきなり実戦に赴くのは無謀だという彼の提案により、サムスは一度自由に動きや技を確かめることのできる空間、トレーニング場に降り立った。
そこで彼女は、彼女を操作する人間がその操縦桿の握り方も知らない素人だった場合に陥る前代未聞の現象の被害者となってしまう。
(あ、あれ…か、身体が…動かない…?)
プレイヤーの不慣れな操作にいくつかの不格好な行動を取った後、サムスはその場で立ち尽くしていた。数分も、数十分間が経過しても彼女は身動き一つ取らなかった。しかし、その行為は彼女自身の意思で行われたものではない。この世界では、プレイヤーが操作を放棄すれば、たとえ永久の時が経ったもしても、体を動かすことが出来ないのだ。
(う、嘘…なん、で…!?い、今はまだ…大丈夫だけど…あんまり、時間が経つ、と…!)
(うぅ…ま、まずい、わ…来ちゃった…、お、お腹、が…でも、これくらいの便意…安全な状況なら…!)
意識はハッキリしている。だが、身体だけはどうやってもピクリとも動かない。まるで、夢の中の自分を眺めているような恐ろしい感覚だった。もしサムスが立っている場所が安全な訓練の場ではなくいつ敵の攻撃が飛んでくるか分からない戦場であったなら、彼女はその場で恐怖のあまりに泣き出し、糞尿を垂れ流しにしていただろう。
「はぁ…!はぁ…!」
(い、いくらなんでも…こんなに長時間…身動き一つ取れずに…ウンチを我慢したことなんて…ない、わよ…!あぁ…もう…ダメぇ…!)
自分の体を操作する存在が、何故それをしないのか。別世界で食事を摂っているか、それとももしくは眠りに落ちてしまっているのではないか…。
もりりりり…モリッ!ムリリリリリリイィッ!ニュッ!ニュリリリリリッニュヂヂチヂチチチチチイイイィッ!
(嘘…噓よ…ま、まだ任務の途中でどうしてもトイレが見つからなかくてそのまま出すしかなかったり…戦いに敗れて、敵に追い詰められた時に恐ろしさでお尻が緩んで漏らしてしまった時の方が…まだ、マシだったわ…!)
(おトイレまで我慢できる十分な時間があった筈なのに…く、悔しい…!)
結局サムスは、何時間もの膠着状態にゆっくりと心が折れてしまい、脅威一つも無い平穏な場所にも関わらず、トイレにも行けずにずっと我慢していた大便をゼロスーツの中に解き放つ選択肢を取ってしまった。
強大な敵を前に恐れおののき、逃げ回る末にいつの間にか糞尿を垂らしてしまった事は幾度となくあるサムスだが、このような我慢の末の失禁脱糞、それもトイレが見つからずならまだしも、体を動かす事が出来ずにお尻がモリモリと膨らんでいく感覚をハッキリと認識しながらのお漏らしをしてしまうのは滅多に無い経験だった。
不運にも、サムスの操作者が戻ってきたのは彼女がお腹の中に溜め込んでいた大便の殆どをひり出した直後だった。中に着たゼロスーツから滲み出し、パワードスーツの関節部からも大便の臭気と湯気を漂わせながら、彼女は気丈に振る舞った。しかし、便意を解き放った後にゆっくりとやってきた尿意に屈し、二重の頑丈なスーツを着ている状態とはいえ、人前で何時間も膀胱に溜め込んでいた小便を思いっ切り漏らすという泣きっ面に蜂の失態を重ねてしまった。
「え!?ええ…人生で…い、一回か、二回くらいかしら…それも我慢できずにお漏らししたとか、怖くてチビッたとかではなくて、スーツの耐久性を確かめるためのテストで、出したのよ!他、確か…」
この世界では、衣服の交換すらもプレイヤーの手に委ねなければいけない。サムスは恥じらいながらも大小便で汚れに汚れた尻を向けながら敗戦処理をしてもらっていた。今回のような失敗は人生の中で数える程しか無いと言い訳をしていたが、余りにも手際よく垂れ流しにした糞尿を片付けるサムスの所作を見れば、彼女が今までどれだけの回数似たような事をしでかしたのかは容易に想像出来るだろう…。