オスケモレビュアーズ3話後編エンディング
Added 2020-07-29 14:41:29 +0000 UTC「いやー、愉しませてもらったぜ!良いケツしてたぜー兄ちゃんたち!」
全てが終わる頃には星空が蔑んだ目で見下ろしていた。
眩い星々や冷厳な月の光など意に介さずに、インキュバス店の街灯や精霊灯が男どもの緩んだ顔を照らす。きつい汗臭さと雌の香りが混ざり合う、夜の街に相応しい時間だ。
四人を纏めて辱めやって、時には二人一緒に楽しんで、最後には一人一人ベッドの上で可愛がった。目の前でエロ装備によるストリップショーをさせ、上手に踊れればちんぽをくれてやって下手くそなら踊り方を教えてやると可愛がってやった。セットは途中から何発出してやったか覚えていない。元々性豪と呼べる男であるが、今日は殊更ちんぽがみなぎっていた。
「クソッ……腰とケツがまだ痛ぇ。治らなかったら治療費請求してやっからな」
ぎろり、と睨みつける虎の肉体があまりにも豊満で金玉が昂ったのか。はたまた、気の抜けた顔で道端に座り込んでいる獅子のせいか。真っ赤になって顔を伏せる尻デカの熊が悪いのか。機嫌良さげに尻を振っている鷹の責任か。
どれも違うだろう、と彼らが纏う装備に視線を這わせた。肌を隠すなど考えてはいない布切れを筋肉に絡ませて、毛皮を下品に飾り立てる装飾で輝かせて。どれもこれも、セットが冒険者として生きてきた中で集めた装備たちだ。
「うぅ……やっぱ見られてる。早く家に帰って着替えないと」
「何故だ?街中とはいえ防御は意識しておくべきだと思うが」
熊の茶色い毛皮に映える白いレオタードも、鷹の全身を包むけばけばしい色をした網もセットのお気に入りだ。インキュバスボーイに着せてプレイをしたこともあるし、金が無い時は理想の雄に着せる妄想をしておかずにしたものだ。
さすがに街中ということで腰回りに布を巻いてはいるが、でかすぎる尻のせいで下品さを抑えきれていない。
「さすがに、街中でこれは憲兵に捕まってもおかしくないからね。冒険の時だけにしよう……絶対」
「チクショウ股がスースーする。こんなん、本当に防具に使えんだろうな」
「お前らとのセックスで証明してみせただろ?おれの理想のコレクションなんだ。装備には一生困らねえぞ」
セットの言葉に筋肉の鎧を纏った二匹も押し黙る。獅子の履いたビキニアーマーも、虎の身体を締め付ける黒い皮帯も防御効果のみならず付与されたスキルも一級品だ。二人はセックスによってそれを身体に教え込まれた。
自分たちの装備していた粗末な革鎧や盾なんて、この薄布に比べればごみ同然なのだと肌で感じ取れる。
「これ貰うけど、本当に良いんだよな?」
虎が警戒心を露わにして睨みつけた。下品で猥褻で、到底服とは呼べない代物だが装備としては秘宝や伝説と呼ばれるランクの代物なのは確かだった。これを売れば冒険者なんてしなくとも遊んで暮らせる。気に入らないといっても不相応な施しに思え、素直に受け取ることができない。
そのために身体まで差し出して、処女まで奪われたというのに生来の意地っぱりな気質が邪魔をしていた。
「そーいう契約だろ?おれぁ大事にしてくれる奴に貰ってくれるならそれでいいんだ」
「こんな装備を大事にするって言われるの、なんだか馬鹿にされてるような」
「いやいや、エロい身体をした冒険者なら末永く着こなしてくれそうだろ?それに、良い奴らだしな」
売り払えばまともで質よ良い装備が手に入るだろうに、そんなことを考えもつかなさそうな顔を見て微笑んだ。身体の代わりに装備を渡す。それだけの関係とはいえ、やはり良い雄に渡したい。
自分好みの身体をしていて、気の良さそうな奴らで、そして――
「な、お前らは元々着てた装備はどうするんだ?」
「どうするって、処分してしまうつもりです。お店の人が代金無しで引き取ってくれるらしいので。もうボロボロだし」
「そりゃもったいないだろ。まだ使える奴もあるし持ってけ。このブーツとか、おれの渡した装備の邪魔になんねえぞ」
そう言ってセットが取り出したのは安っぽい皮のブーツだった。
何の魔力も込められてはおらず、そこらの職人が質の悪い皮を適当になめして作り上げただけのものだ。まだほとんど使っていないせいでピカピカな点だけが唯一の取り柄と言える。
「ん、じゃあ貰っておくけどよ。どうせすぐにもっと良いブーツを買っちまうぞ」
「それでいいんだ。冒険者ってそんなモンだからな。食ってくためには死ぬ気で金を稼いで、剣や鎧を揃えるのが当たり前なんだ」
ただ、と呟いてセットは卸したてのブーツを撫でた。駆け出しの冒険者が買ったばかりのブーツは傷一つなく、街灯の灯りを反射して輝いていた。
煌びやかな宝石や金も飾られていないくせに、セットには眩く感じられた。どの迷宮を探しても決して手に入らない輝き。
「それまでは大事にしてやってくれ。コイツはお前らが初めて買った装備で、捨てちまったら同じモンは二度と手に入らないからな」
「……言われなくても粗末には扱ったりしませんけど。おれたちにあんな事をしておいて『物を大事にしろ』なんて言われても素直に聞く気が失せますね」
「まあ、それはそれってこった。もしおれの渡したエロ装備も変えたくなったらまたこいよ。新しいのを見繕ってやる」
下卑た笑いで歯を剥き出しにすると、四人の年若い冒険者たちは逃げるように去って行った。真夜中のインキュバス街は人混みで埋まっていて、あっという間に姿が見えなくなってしまう。
「大事にしてくれよ、捨てたらもう手に入らないからな」
ぽつり、と雑踏のざわめきで消えてしまいそうな呟きを漏らした。
冒険者とインキュバスボーイで満ちたこの一角は、魔物の血に香水に汗臭さまで混じった匂いがした。
腐りかけて、かびの生えたような匂い。
風が翔ける草原の匂いとも船旅で嗅いだ潮風とも違う。冒険者として駆けだした青年たちには相応しくない場所だ。
この匂いが嫌いなわけではない。
今の自分を恥じているわけでもない。
今までの人生を悔やんでいるわけではない。
金が溜まればインキュバスボーイを抱いて、無くなれば冒険に出て、仲間たちと酒と美味い料理を楽しんで。装備だって、上等なものを揃えている。今の自分はきっと幸せだ。
「でも、おれは無くしちゃったんだよな」
今履いているブーツはくたびれて、傷だらけだった。
手入れをしたって戻らない。磨いたってあの輝きは取り戻せない。生まれて初めて買った卸したてでピカピカのブーツはもう手に入らない。
あの時買ったブーツはどうしたのだろうか。どこで捨ててしまったのだろう。どうして忘れてしまったのだろう。どうやればもう一度手に入るのだろう。
「おれは、どうして」
駆け出しの冒険者たちは、人混みに紛れてどこにいるのかもう見えなかった。きっと、もう会うことはないだろう。
自分は何故、ぴかぴかのブーツを買ったのだろう。何も分からないまま冒険者として駆けだしたのだろう。
考えても思い出せずに、セットは立ち尽くしていた。
仲間たちがその名前を呼ぶまで、夜の匂いを嗅ぎながら。