小説 【入れ替わり・上司】②
Added 2025-08-02 15:23:50 +0000 UTC-目次- ・4.身体のままならなさ ・5.女の肌、湯気の中 ・6.鏡の奥にいた、知らない女 4.身体のままならなさ バスルームのドアが、「ギィ……」と音を立てて開いた。 出てきたのは、濡れた髪にバスタオルを肩にかけた――翔也(精神は紗英)だった。 少し火照った肌に、水滴が散っている。 本来なら自分のもののはずの身体が、今は彼女の自由に動いている。 「ふう……いいお湯だったわ。汗も流せてスッキリ」 そう言ってタオルで頭を拭きながら、翔也(精神は紗英)はソファに座る紗英(精神は翔也)の目の前に立った。 無防備に胸を張り、腹筋のあたりを撫でながら、にっこりと笑う。 「……村田くんの体、意外と鍛えてるのね。腹筋、うっすら割れてるし。腕も固いわ。ちょっと意外♡」 「ま、まぁ……」 紗英(精神は翔也)は、ソファの端に座ったまま、視線を落とした。 バスタオル一枚の自分の姿――自分の体なのに、他人が動かしている――を見ていると、妙な不快感と羞恥が混ざってくる。 「あとね……あれ。股間に異物感があるって、こういうことなのね♡」 「っ……!?」 翔也(精神は紗英)はおどけるように笑いながら、片膝を軽く上げてタオルの下をちらりと押さえた。 「うふふ、なんか挟まってるみたいな感じ♡歩くとちょっとゴソゴソするし……男の子って、これずっと気にしながら生活してるの?♡」 「ちょ、ちょっとやめてください!?僕の体で、変なことしないでくださいっ!?」 紗英(精神は翔也)は顔を真っ赤にして言った。 少し怒りながら、目を背ける。 それでも、目の端に映る自分の体が、まるで別人のように振る舞っているのが奇妙だった。 「ふふ、ごめんごめん♡でも貴重な体験よ♡私、初めて“ぶら下げてる側”になったわけだし♡」 そう言って笑う彼女の視線が、ふと紗英(精神は翔也)の姿に止まった。 「……あ、そうだ。下着とパジャマ、貸してくれない?」 「えっ……?」 咄嗟に意味が分からず聞き返す。 「だって今、私が村田くんの体に入ってるんだから、村田くんの下着とパジャマ、私が着ないとでしょ?」 「あ……っ」 そこでようやく紗英(精神は翔也)は理解した。 身体が入れ替わっている――ということは、衣類も互いに貸し合わなければならないということだ。 (……てことは、僕が……係長の下着、着るのか……!?♡) 少し遅れて、自分の未来が見えてしまって、口をつぐんだ。 「ほら、動いて。濡れたままだと風邪ひくし。貸して」 「……は、はい……わかりました」 渋々立ち上がり、キャリーバッグのジッパーを開ける。 そこから、まだ袋に包まれた新品のトランクスと、綿のTシャツと短パンのパジャマを取り出す。 「……じゃあ、これ、使ってください」 「ありがと。……ふふ、なんかちょっと、ドキドキするわね♡」 翔也(精神は紗英)はそれを受け取り、再び脱衣所へと戻っていった。 タオルの端がひらりと揺れ、引き締まった自分のヒップラインがちらりと見えた。 紗英(精神は翔也)はベッドの端に腰を下ろしながら、手がわずかに震えていることに気づいた。 (……明日、僕、この体で……女の下着、着て……仕事行くのか……?) そこには、“現実”の匂いがじわじわと染み込んできていた。 5.女の肌、湯気の中 「ねぇ、村田くんもそろそろお風呂入ってきたら? さっきからずっと、汗かいてるでしょ」 翔也(精神は紗英)が、ソファに足を組んで座りながら、グラスを揺らして言った。 その口調はどこか軽やかで、この状態を楽しんでいるようだった。 「……あ、はい……」 紗英(精神は翔也)は、視線を泳がせながら頷いた。 足元にまとわりつくスカートの生地が気になって、そわそわと太ももを擦る。 「ふふ……」 低く笑った翔也(精神は紗英)は、にやりと紗英(精神は翔也)を見つめた。 「でも、私の体で変なことしないでよ?♡」 「っ、し、しませんよ……!!」 思わず声を張り上げた紗英(精神は翔也)だったが、言い終わった瞬間に、内心でその言葉がぐらついた。 (……しません、って言ったけど……♡……いや、だめだ。落ち着け俺) そんな内心を隠しながら、「行ってきます」とだけ呟いて、紗英(精神は翔也)はバスルームへと向かった。 浴室のドアを閉めると、外の音が遠くなった。 明るい照明に照らされ、鏡には――紗英の体が映っていた。 シャツのボタンに指をかけ、そっと一つひとつ外していく。 「……っ♡」 ボタンが下まで外れた瞬間、白いブラが現れた。 柔らかな胸が、布の中でしっかりと主張している。 (僕、今……本当に女なんだな……♡) ワイシャツを肩から滑らせ、スカートのファスナーを下ろす。 するりと太ももをなでる布の感触に、喉がひとつ鳴った。 ブラウスとスカートを脱ぎ終わると、下着姿――紗英の身体があらわになる。 白いレースのブラと、同じデザインのパンティ。 派手ではないが、仕事用としては十分に女性らしい下着だった。 胸を覆っているだけなのに、なぜか守られているような感覚があった。 胸元にそっと手を当てると、柔らかな膨らみが手のひらにぴったり収まる。 重さがあり、感触があり、何より――その奥にある微かな鼓動が伝わってくる。 紗英(精神は翔也)は、ゆっくりとブラのホックに手をかけた。 6.鏡の奥にいた、知らない女 ブラのホックを外すと、重みから解放された胸がふわりと揺れた。 (……っ) 紗英(精神は翔也)は、思わず目をそらしそうになった。 だが、目の前の鏡には高垣係長の――女性の裸の上半身が、はっきりと映っている。 乳首は、軽く立っていた。 シャワー室の冷気か、それとも自分の緊張のせいかはわからない。 だがその小さな突起が、妙に生々しく、“女”であることを突きつけてくる。 (……触ってないのに、立つんだな……♡) 紗英(精神は翔也)は言い訳のようにそう考えながら、そっとパンティにも手をかけた。 布が太ももをなでて降りていく。パンティの中の自分の女性器が、少しずつ露わになる。 そこには、黒いちぢれたリアルな女性の陰毛が自然に茂っていた。 手入れされた形跡はなく、生活感のあるリアルな女性の下半身だった。 見ないように、できるだけ視線を落とさずに、パンティを脱ぎ切った。 が、次の瞬間―― (……でも、風呂入るってことは……体、洗わなきゃいけないよな♡……) そう気づいた時には、もうシャワー室のドアを開けていた。 自分の裸の体を見ずに済まそうとしても、洗うという行為そのものが視線を避けられないということに、ようやく気づいた。 シャワーの温かい湯を肩に受けながら、紗英(精神は翔也)は壁に設置されたボディソープを手に取った。 泡を掌いっぱいに乗せて、ゆっくりと――だがどこかぎこちなく、自分ではない女の体を洗い始めた。 腕。 脇の下。 お腹。 そして、胸――乳首♡ (……やわらか♡……) 指先が乳房や乳首をなぞるたびに、ぷにぷにとした弾力が掌に返ってくる。 普段、何気なく見ていた高垣係長のスーツの下に、これほどの存在感があったとは思っていなかった。 乳首は、さっきよりもさらにいやらしく尖っているように見えた。 紗英(精神は翔也)はそれを見ないようにしながらも、指先で軽く泡を広げた。 (……本当に、女の人の体って……男とぜんぜん違うんだな♡) 次に、脚へ。 太ももの内側をなでると、足を閉じたくなるようなむずがゆさが走った。 そして、躊躇いながらも股の間――女性器のまわりに泡をつけて、指の腹でそっと洗う。 (見ない、見ない……洗ってるだけ♡) 心の中でそう念じながらも、肌の滑りと微かな熱さに、紗英(精神は翔也)は呼吸を少しだけ早めた。 その後敏感な秘部を手早く洗った♡ その後、髪の毛にシャンプーを乗せた瞬間―― その柔らかさに驚いた。 普段、男性だった時にはゴシゴシと雑に洗って済ませていた。 「とりあえず…簡単に洗うか…」 翔也はつい独り言を漏らしながら、男の感覚のまま力を込めて洗い続けた。 シャンプーが髪を流れていく頃には、軽く肩が凝っていた。 ようやくシャワーを終え、バスタオルを手にした紗英(精神は翔也)は、湯気で曇った鏡の中の自分――いや、高垣係長の体を見つめた。 体を拭きながら、まだ実感の湧かないこの“柔らかな熟れた女の肉体”に、 明日スーツを着て仕事に行くんだという現実が、ひしひしと押し寄せていた。 -続く-