小説 【入れ替わり・日常2】⑥
Added 2025-09-06 14:47:39 +0000 UTC-目次- ・16. 豹柄 ・17.袋 ・18.カロリー 16. 豹柄 唯(精神は義文)は、嬉しそうにニヤつき店内をぐるりと見回しながら考え込んでいた。 ――千夏のオムツ替えって、そんなに時間かからないよな……。 そう思うと、さすがに試着までは難しい。だが、せっかく女の体でランジェリーショップまで来たのだ。何かひとつは手に入れておきたい。 視線は自然と、一際派手なコーナーに引き寄せられていた。そこに並んでいたのは、艶やかな豹柄のブラジャーとパンティのセット。 ――うお……♡これ、めちゃくちゃエロいな♡ 思わず唾を飲む。女の体だからこそ、堂々と手に取れる。その事実にゾクゾクと優越感が込み上げた。 「こちら、新作の人気柄なんです」 若い女性店員が微笑んで声をかけてくる。明るい茶髪に愛想の良い笑顔。唯(精神は義文)は一瞬ドキリとしたが、すぐに平静を装った。 「そうなんですね……♡すごくかわいいですね♡これにしようかな…♡」 女性として自然に言えた自分に、内心ニヤリとする。変に思われることもなく、その後サイズを簡単に伝えて店員さんがお勧めしてくれたサイズを購入する。袋に包まれる豹柄の下着。それを受け取った瞬間、胸の奥に熱い優越感が広がった。 店を出ると、すぐにスマホを取り出し、義文(精神は唯)へメッセージを送る。 《オムツ替え終わった?フードコートの前で集合しようか》 送信を終えると、袋を抱えながらニヤつきながら下卑た笑みを浮かべる。 ――男だった頃の自分には、一生できなかった買い物だな♡ 17.袋 フードコートの一角。人々のざわめきと揚げ物や食べ物の匂いが漂う中、義文(精神は唯)は千夏を抱きかかえながら席についていた。ほどなくして、唯(精神は義文)が軽やかな足取りで現れる。 「おまたせ♡」 まるで買い物を楽しんできた女子大生のように、紙袋を小脇に抱え、上機嫌な表情だ。 義文(精神は唯)は不機嫌そうに顔をしかめる。 「……オムツ替えのときさ、めっちゃ変な顔されたんだけど…。男の体でベビー休憩室に入ったら、当然そうなるわよね…。恥ずかしかったんだから…」 唯(精神は義文)は、にやりと笑う。 「へぇ……そうだったんだ?♡やっぱ女の体じゃないと、少し不審に見られるわよね…♡」 言葉には出さないが、心の奥底で優越感がじわじわと膨らむ。――俺は今、女として自然に扱われてる。対して唯は男の体で肩身の狭い思いをしてる。たまらない感覚だった。 義文(精神は唯)は、ふと相手が抱えている袋に目を止める。 「……それ、なに買ったの?」 「え?♡あ、これ?♡」 唯(精神は義文)は袋を軽く持ち上げ、わざとニヤついた表情を見せる。 「まあ、ちょっと欲しかったもの♡」 「欲しかったものって……なによ、それ」 問い詰めるように視線を送る義文(精神は唯)だったが、唯(精神は義文)は余裕の笑みを崩さない。 「それより、お昼どうする?適当に食べて帰る?♡」 話題を強引にそらされ、結局袋の中身は分からないまま。 ――あの顔、絶対なんか企んでる……。 義文(精神は唯)は胸の中でモヤモヤを抱えつつも、それ以上問いただすことができなかった。 その一方で、唯(精神は義文)は心の中で優越感を反芻していた。袋の中にある豹柄の下着。その秘密が暴かれない限り、この小さな優越は自分だけの宝物だ♡ 18.カロリー フードコートで席を確保した二人は、簡単に食事を済ませることにした。 唯(精神は義文)が選んだのは、中華のチェーン店でからあげ丼にラーメンのセット。脂が表面に浮かび、湯気の向こうに食欲をそそる香りが漂っている。 「んー、やっぱガッツリ系が一番だよな!」 そう言って、唯(精神は義文)はためらいもなくレンゲを口に運んだ。唇に油が光り、頬張るたびに満足げに目を細める。 一方、義文(精神は唯)は和食のチェーン店で買った温かいうどんだけ。目の前で繰り広げられる大食いの様子に、思わず眉をひそめた。 「ちょっと……私の体なんだから、カロリー気にしてよ」… 声には苛立ちが滲んでいた。 唯(精神は義文)は、ラーメンの麺をすすりながら振り向く。 「え?♡別に唯も好きなの食べればいいじゃん♡お互い様だろ…?♡」 口元にスープの雫をつけたまま、ニヤリと笑う。 「……私、今ダイエット中だったのに…体重だってちゃんと管理してるんだから…、別に私はうどんだけでいい…」 義文(精神は唯)は本気で嫌そうな顔をする。だが唯(精神は義文)は、まるでその言葉すら耳に入っていなそうだった…。 「へぇ、そうなんだ?♡じゃあ今日くらい休憩日ってことで♡俺が代わりに美味しいもの食べてやるよ♡」 軽く流され、義文(精神は唯)の顔に浮かんだのは呆れと怒りの入り混じった表情だった。 ――なんでこんなに無神経なの。私が苦労して維持してるのに。 胸の中で小さく嘆きながらも、周囲の視線を気にして強く言い返せない自分に、余計もどかしさが募るのだった。 -続く-